川村渇真の「知性の泉」

適切な評価は、きちんとした手順で実現する


評価結果の不一致での対処が大きな課題

 仕事でも趣味でも、何かを評価する機会は多い。評価するのは、その結果をもとに行動を起こすためである。購入する機器を決めるとか、改善案を導くとか、いろいろな活動が後に続く。その後の活動を出来るだけ良くしたいのなら、より適切な評価を下す必要がある。
 複数の人による評価で問題となるのは、各人の評価結果が大きく食い違ったときだ。評価に関する意見の対立はケンカへと発展しやすく、それがマトモな評価をさらに難しくする。しだいに泥沼へ入り込み、理想の状況からはどんどんと遠ざかる。そこまでひどくなくても、似たような状況はときどき見かける。
 こんな状況の発生には、いろいろな理由が考えられる。もっとも多いのが、評価する人の立場の違いだ。ほとんどの人は、自分にとって都合の良い結論を導き出したい。そのため、好みの結論を導き出せるように、評価結果を偏向させる。自分や所属グループにとって、一番良い方向にだ。当然、適切な評価とは違った結果になりやすい。
 もっとひどい場合には、マトモな評価を意識的に妨害する人が現れる。プロジェクトの中心人物が嫌いなので、成功しないように悪く評価するとか、出世レースの競争相手の提案だから、ダメな評価を与えるとかだ。このような人がいると、評価結果の対立が起こって、適切な評価は難しい。マトモな評価を邪魔する行動であり、どうやって防止するかが重要な課題となる。

きちんとした評価手順が適切な評価に役立つ

 評価結果が大きく違う場合、どちらが適切なのか判断しなければならない。そのためには、それぞれの評価結果の中身を整理して見せ、どれが一番良いのか、みんなが適切な判断を下せるようにすればよい。
 1つの解決案として、評価の手順を数段階の工程に分割し、工程ごとに検討結果を明示する方法がある。数段階に分けて途中結果を見せることで、考えた内容や思考の流れを明らかできる。目的を何に決め、どのような点を考慮し、どのような方法で評価したのか、評価結果までの道筋を全員に見せるのだ。このようなルールで公開すれば、邪魔しようとして無理矢理に偏向させた部分が、他人から見付けやすくなる。そうなると、適切でない評価をする人が減り、だんだんと適切な評価に向かう。理想的な対処方法が不可能なだけに、完璧な方法とはいえないが、現実的に役立つ方法である。
 世の中で実際に行われている評価では、特別な手法や手順を用いていない。自由な形式で意見を出し合い、各人が思い思いの評価方法で評価を下す。おまけに、評価結果を得るまでの課程は表面に出さないことが多い。結果として、邪魔しようとする力に対処しづらく、評価が異なる原因を明確化するのも難しい。評価結果が対立したとき、お手上げになりやすい。
 きちんとした評価手順は、この点を改善するためのものである。評価の中身を論理的に整理して見せ、評価を適切な方向へと導く。評価の手順自体は、評価という作業の中身を十分に分析して得たものだ。可能な限り論理的に構成し、途中の段階で得られた内容が見えるように工夫してある。このような考えで作ってあるからこそ、邪魔が入りにくくできる。ここで紹介する手順で評価作業を進め、適切な評価結果が得られれば、建設的な改善案を求めるために役立てられる。

(1997年12月11日)


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