JARLは日本のアマチュア無線を代表する団体ですので、その施策は「会員のために何をするのか」の前に
「日本のアマチュア無線のために何をするのか」が在ると思います。
「何をするか」についてはアマチュア無線普及促進、法整備のための陳情、会員増強など多岐にわたります。
1:アマチュア無線普及
電波適正利用推進員としての活動で実施する「小中学生向けの電波教室」で感じることは、
対象の小中学生世代に「身の回りで電波を使っていると思うものを挙げてください」と言うと、
スマホ(携帯電話)とゲーム機のWiFiがトップで、テレビ、ラジオは出てくる順位が低い傾向があります。
「トランシーバー」という言葉の認知度は、かつてほど高く有りません。
これは、電波を使っていることを意識しないで使える電波利用機器の普及はめざましいものがあり、
個人・一般家庭で電波を使うことが特別なことではなくなったことが大きいと思います。
端的に言えば『「生まれたときから携帯電話がある世代」に、どうアピールするか』が問題です。
その背景を踏まえると【「アマチュア無線」の認知度をどうやって上げるか】については今までに無い工夫が必要です。
平成29年以降に若年層へのアマチュア無線PRとして開催した「WAKAMONO(若者)アマチュア無線イベント」は、
その効果を精査し、内容を工夫し継続開催するべきです。(JARDとの共催も行うべきです。)
このイベントは対象年齢層については、以下が重要です。
(1) 自主的に単独または友人と一緒に引率者無しで来た方の人数
(2) 自ら参加したいことを親族または友人に告げて連れてきてもらった人数
(3) 参加する意思が無い、またはアマチュア無線に興味が無いのに親族や友人に強引に連れてこられた人数
このうち(3)は「1人でもいてはいけない」のです。但し、
「来て見て気が変わって資格取得、開局、入会し、会費減免期間経過後も継続している方が何名も居る」
ならば「アマチュア無線に魅了された」わけですから話は変わってきます。
そういう方が大勢出てくるような内容で在るべきだからです。
当然ながら(1)と(2)で、資格取得、開局、入会し、会費減免期間経過後も継続している方の人数は重要です。
「来場者数200名」と言っても、「「対象年齢層だけで200名」なのか、
「200名中対象年齢層は100名以下」なのか」では、当然前者が望ましいわけです。
過去三回のイベントでは「対象年齢層は何名だったか」は非公表で、「全来場数での公表」ですが、
「「対象年齢層が何名だったかを集計していない」から「対象年齢層の来場数を公表できない」」のでは無意味です。
ここ数年 市民ラジオの新機種発売が行われています。10万円超の価格にも関わらず売れています。
140MHz帯のデジタルコミュニティ無線機も人気があり、350MHz帯のデジタル簡易無線(登録型)も人気です。
それぞれ、簡易無線の範疇ですから、通信できる内容では、仕事にも使えますが、アマチュア無線風交信が盛んです。
「その人気は何所に在るのか」は参考になるでしょう。
2:新たな技術との融合策
ここ1,2年は5,750MHz帯のFPVのみで免許を受けて開局する方が増えています。
一部の方からは「こんなのはアマチュア無線ではない」という意見も見られますが、
「アマチュアは進歩的であること」に鑑みれば
「アマチュアバンドを使った新たな楽しみ方として歓迎するべきもの」です。
ここ数年の狭帯域デジタル通信の爆発的普及も「新たな試み」が浸透していったものですから、
FPV等の新たな楽しみ方を拒む理由はありません。そういう新技術の紹介をJARLが行っても良いでしょう。
3:法整備
法整備のための陳情については、必要に応じてJARDと組んで総務省への陳情は必須です
まず、「JARLは意見を出すべき」と思われる総務省パブコメでは
「JARDは意見を出していてもJARLからは意見が無かった」は在ってはいけないことだと思います。
「アマチュア無線流包括免許」として「米国式にコールサインと有効期限だけを指定する。
操作範囲は免許人の無線従事者資格の範囲で自己責任で自由とする」
を実現するために必要な法令告示の整備については、
JARLが「総務省が納得する可能性が高い案」を陳情するべきです。
(アマチュア無線流包括免許に伴う「責任の増大」などの啓蒙もJARLの責務だと思います。
例として、第四級アマチュア無線技士の合格最低年齢は三歳児の記録があります。
この場合は、「その三歳児が無線従事者としてアマチュア局を運用する際には、法的には成人と同じ無線設備管理、
無線設備操作を単独で行えること」を要求されます。(親等が補助をするのは必要最低限を求められます。)
「本来禁止されているものを【知識技能が一定水準に在る者に『「禁止事項を免じて許す」から「免許」である。』】」
ということを踏まえれば、「アマチュア無線流包括免許」実現時には、より一層の「管理責任能力」を求められます。
参考までに、FCC規則では「免許外のことをした」ときの罰則は非常に重いものになっています。
過去の総会(会員(正員)なら誰でも質疑応答で登壇できた時代を含みます)からの経緯を見ると、
理事には、その陳情案を考えられる能力がある方が相応しいと思います。
理事だけでは陳情案を思いつかないときは、まずは社員から募るべきです。
(それゆえ、社員にも提案力は必要だと思います。)
必要に応じて正員または家族会員から、相応の知識がある方を募るべきです。
私感ですが、電波法第6条にアマチュア局の専用項として第9項に
「アマチュア局については別に告示する動作することを許される周波数帯の全てを使用すると見なす」
を追加する。(国会審議を通過する必要があるので難易度は高いです。)
電波法第17条と同第18条からたどり着く「許可を要しない工事設計」と「変更検査不要」の告示では
「アマチュア局の無線設備は免許人が有する無線従事者免許の操作範囲内であれば許可も届も不要」
とすれば足りるはずです。(告示の改正ですから電波法改正より容易です)
無線局免許手続規則を改正する必要があるとしても、電波法改正より難易度は低いです。
まずは「新品、中古問わず送受信機として市販機器が流通している範囲」として、日本の国情(地形等)を踏まえて
「1,910kHz帯から5,750MHz帯までの空中線電力50ワット以下の免許人の無線従事者免許で操作できる範囲」
を「アマチュア局流包括免許」とする。その後は情勢を見て段階的に規制緩和をするのです。
(2018年の準備書面に記載、また本年2月末にTwitterでも言及しましたので、
FPV愛好家の便宜も加味して、一部修正して再掲します)
本件については、直近では昨年11月のIoT戦略関連のパブリックコメントに在った「アマチュア無線活用」
についてJARLが出した意見と
今年1月中旬から2月中旬まで実施のアマチュア局関連のパブリックコメントでのJARLが出した意見
は重要な意味があります。
特に、今年1月中旬のもの、「無資格者によるアマチュア局運用制限の緩和」等では、
「とある理事の理事会での提案を、理事会決議を獲ずに、ほぼそのまま会長名でJARLとしての意見として提出した」
という情報がありますが、少なくとも理事会で理事の過半数(理想は全員)の承認を得た上で提出するべきです。
私は昨年11月上旬分は「賛同(付帯意見あり)」、
今回の分も「賛同(付帯意見として一括記載コード告示も改正要望で具体案提示)」
で意見を出しています。
4:会員増
会員増強については「会員で在ることの利点」は重要です。
非会員からも意見を募り、特に「なぜ入会しないのか」という声には、
会員からの声と同等に耳を傾け、施策を策定し実施することで会員増をするべきです。
入会後の会員継続を如何にするか?も重要です。
5:財政
財政健全化のために各種積立金取り崩しは早急に止めさせるべきだと思います。
入会者数に関しては予算と現実が大きく乖離しているのはだめです。
見積もった入会者数に届かない理由の精査は必須です。
6:電子QSL
電子QSLについては、既存のシステムにJARL会員団体枠で便乗するのが早道です。
日本独自仕様のガラパゴス仕様では意味がありません。
7:違法局・不法局対策
電波法第4条違反の不法局は、145MHz帯と435MHz帯で顕著です。
若年層への啓蒙で免許取得、開局者が増えても、特に大学生以下が
「学校から帰ってきて塾等も無いから夕食まで電波を出そう」と思っても
不法局(免許が無い。電波法第4条違反)による無軌道な通信が横行しているようでは
嫌気が指してしまう状況です。
また、免許を受けていながら、免許以上のパワーを出したり、免許が無い周波数帯で電波を出す
違法局(無線局の免許は有るが電波法第52条等や各規則など電波法第4条以外の違反)も少なくないの
が現状です。
7-1: JARLが取れる違法局・不法局対策に関しては制約があります。
(1) JARLの各支部には監査指導委員が居ます。
監査指導委員ができることは「アマチュア無線仲間としての助言の範囲」です。
違法局へは、かつては「監査指導注意はがき」がありましたが、今では
不法局・違法局の運用者への注意は「あまちゅあがいだんす*」を使った
「アマチュア業務の適正化のための広報」の送信でしか行えません。
しかし各総合通信局管内で2局しかないので、運用当番でなければ何もできないのが実情です。
(2) 「電波適正利用推進員」の委嘱を受けている支部役員等も居ます。
ここで重用なのは
「電波適正利用推進員の立場では、違法局・不法局の運用者への直接指導は絶対禁止」
という点です。
たとえば「貴方は不法無線局を開設していますから、直ちに止めなさい」という注意は絶対禁止です。
(3) JARL事務局職員、JARL理事であっても、不法局の運用者への直接注意は
理事自身または事務局職員自身が「がいだんす局当番」で無い限りはできません。
つまりは、
総務省本省または各総合通信局の職員が行う「行政指導」のような注意はJARLとしては、してはいけない
のです。
そのような制約の中で、どこまで対策ができるかが肝心です。
7-2: JARLができる範囲の具体策提案
(1) 不法局が多い業界、具体例ではダンプ・トラック協会や建築会社等へのJARLからの働きかけは必須でしょう。
少なくとも
「無線従事者免許と無線局免許を取り、周波数使用区分を守り「コールサインをきちんと送信して
仕事に関する連絡通信はしない」」という周知活動が必要です。
但し、これは諸刃の剣で「JARLが「これはダメだ」と言った例に該当しないから良いのだ」という論調を
起こさないようにしないとなりません。
かつて、監査指導規定には「アマチュア業務に該当しない通信の例」がありましたが、例示が削除された時は
「例示が削除されたと言うことは、その通信はアマチュア業務の範囲だ」と言い出した方がいましたが、
それの再発は絶対に起こしてはいけません。
(2) 総務省が警察署と連係して実施する不法局・違法局取り締まりの検問では、
「ターゲットが出入りする現場の関係上、必ず不法局・違法局搭載車両が通る場所で、取り締まりを察知しても
逃げ場が無い場所の選定」が肝要です。
これに関しては、JARL各支部でその地域の情報を取り纏めて取り締まりを陳情する方法があります。
すでに行われているかもしれませんが、総合通信局が取り締まり(検問)を行いやすい情報提供は肝要です。
(3) 「電波法第80条に基づく報告」の出し方を知らない方への啓蒙は、各支部の監査指導委員が行っていますが、
「自分が直接出すのはどうも」という方に代わって「支部監査指導委員委員会」として提出するルートの確立
をするのも一つの方法だと思います。
(4) 「アマチュアバンド内の不法局、違法局への対応状況の定期的なJARLへのフィードバックの確立(各総合通信
局の報道発表程度で良いと考えます)と、そのフィードバック内容のJARL-WEBでの広報」も必要でしょう。
「基本的に80条報告の「その後」は「本省も各総合通信局も個別回答はしない」」のが通例ですが、
ここは、「不法局・違法局対策の見える化」で、
「総合通信局の不法局・違法局探索と監視に支障が無い範囲での対応状況公開」をして、
「追加の80条報告を出しやすくする」のは有益だと思います。
(5) あまちゅあがいだんす局の活用
現在 各エリアには「「あまちゅあがいだんす1〜10」の25ワット機」と
「「あまちゅあがいだんす11〜20」の50ワット機」から、関東地区には1と11、東海には2と12
近畿には3と13・・ 信越には10と20というように2局ずつ配備されています。
関東では1と11の両方が稼働していますが、都道府県ごとでみると出現する不法局・違法局の状況で、
地方本部区域によっては1局で十分なところと2局では足りないところがあります。
「2局では足りないところに、1局でも大丈夫なところから借りてくることで運用機会を増やす」という
手があります。また、運用要員(平日日中運用できる第三級陸上特殊無線技士以上の資格所持者)の
さらなる確保も必要です。
以上を踏まえて、具体策を決め、実行できるJARLであるべきです。
8:まとめ
ここ数年ほどのJARLの取り組みには評価できるものがいくつか在ります。
それをブラッシュアップして継続し、アマチュア無線局増、会員増に繋げるべきです。
3期目に当選した際には、今任期に引き続き、会員で有るか否かを問わず意見要望を収集し、
40年目になるアマチュア無線活動(アマチュア無線家目線)、
30年になる東京都支部監査指導委員(JARL支部役員目線)、
23年目になる電波適正利用推進員(総務省目線)
の、それぞれの目線で多角的にJARLの施策を分析して必要な提案を行っていく所存です。
2016年の選挙で当選後の社員総会では全ての総会で準備書面を出し、当日発言も行っています。
「準備書面(事前質問書)を出さない」かつ「当日の質疑応答にも手を挙げない」で
「社員総会では座っているだけ」にはなりません。
2017年の準備書面PDFはこちら
2018年の準備書面PDFはこちら
2019年の準備書面PDFはこちら
注:社員総会で配布されたものには、JARL事務局の一方的な判断で削除されている部分があります。
よろしくおねがいいたします
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