運の無いヤツ

 

 私には「変な場面に立ち会う能力」というのが備わっているらしい。交通事故の現場に居合わせるなんてのはザラで、目の前の人がいきなり電車に飛び込んだり… 端から見ている分には面白い様に思えるかも知れないが、はっきり言って、非常に迷惑な能力である。


 まず昼過ぎに、中年の男性から「Mさんですか?」という電話。「違いますが」と言うと、「そちらU荘とは関係無いですか?」と一言。「関係無い」というと、「失礼しました」の一言も無く電話は切れた。

 これだけだったら、良くある話。単に人に電話番号を教える時に間違っただけ。ところがこの後が問題だった。

 数十秒後に無言電話がかかってきた。「もしもし」と言っても返事無し。ただ、バックグラウンドの雑音から先ほどの電話と同じ相手と判る。そしてノイズの向こうで「な? かけても違うところにかかっちまうんだよ」の声。

 これで私ゃピンと来ましたね。あ、これは誰かが故意にウチの電話番号を連絡先として教えたな、と。それもサラ金、街金の追い込みとか、稼業の方々のキリトリ関係。多分思いつきで言ったんだろうけど、よりによってウチの番号を教えるとは、度胸があるというか、運の無いヤツもいるもんだと。

 まぁ、これだけだったら何という事も無い。実は本当の問題はこの後だったのだ。

 夕方になって、見覚えの無い番号の携帯電話から電話がかかってきた。仕事関係かと思ったら、さっきと同じバックグラウンドノイズの無言電話。まさか相手はこっちがISDNで、相手の番号が全部見えてるとは気付いてないらしい。バックでかすかに男性の話し声。「違うじゃねぇか、え?」とか聞こえる。何か言うかと思ったら、ぷっつり切れた。

 そしてその直後に同じ番号から電話。面倒だけど電話を取ると、「Mですけど」 あはは、さてはMって野郎、ガラ押さえられたな。

 「あの、Mですけど…」
 「はい?」
 「あの… Mです…」
 「どちらのMさんですか?」
 「どちらのって… Mです」
 「どう言ったご用件ですか?」
 「そちらの電話を…ゴニョゴニョ」
 「はい?」
 「そちらの電話を最近まで使っていたんですが」
 「そちらの電話って、このXXXX-XXXXの電話ですか?」
 「そうです」
 「そりゃおかしいですね。」
 「いや、使ってたんです」
 「そんな事言ったって、ウチは何年も前からこの番号ですよ」
 「……」
 「一体どういう事なんですか?」
 「いや、最近まで使って…」

 もうこの辺でいい加減、面倒臭くなってたので…

 「うるせぇんだよ、馬鹿野郎」
 「は…」
 「手前ぇ、どこの小僧だ?」
 「どこの…って」
 「あん? 黙って聞いてりゃいい気になりやがって、どういうつもりだ、手前ぇ?」
 「……」
 「おう、良く聞け、小僧! この番号は俺が何年も使ってるんだよ。それを手前ぇ、一体どういう了見だ、この野郎! あん? 黙ってねぇで何とか言ってみろよ。」

 その直後に、電話はプツリと切れた。

 Mくん(なんかクスブってるのが、ありありと伝わって来るような声だった)、元気でなぁ〜! 今度、ウソの番号を言うときは、もう少しマシな相手を選ぶんだよ〜〜〜〜〜!! そしてこれから先、君を待ってる運命がどんなものかは知らないけど、とりあえず体にだけは十分に気をつけてな〜〜〜〜(笑)

 


 ここからは後日談である。実はこの電話がかかってくる数日前に、同じMで始まる名前の知り合いが、借金を作って行方をくらませたのである。もしやその知り合いが…と思ったのであるが、かかってきた電話は私の知っているM君ではなかった。


 ここからはさらに後日談である。今度は女性の声でM君宛に電話があった。いかにもローン会社などの督促の声音(何でこんな事、知ってるんだ、俺は(^^;)だったので、以前にも同様の電話がかかってきて、迷惑している事を伝えておいた(笑)


 ここからはさらにさらに後日談である。今年に入って知らない男性から、M君宛に電話があった。結構ドスのきいた声だったので、思い切って「金融関係の方ですか?」と聞いてみたら、「まぁそんなもんです」というので、親切な私はこの事件の顛末をすべて話しておいた(笑)

 それにしてもM君、こういう事ばっかりやっていると、その内フィリピンに連れて行かれて、モツ売らされるハメになるよ。

 


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