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MASTERMIND
97年1月23日(木) 19:00 開演 渋谷 ON AIR WEST
(OPENING ACT: GERARD)

「アメリカ東海岸出身のプログレバンド、編成はG, B, Drのトリオ編成」という程度の予備知識しかなく、人間椅子が前座に出るから見に行ったマスターマインドでしたが、「大変なものを見てしまった」という気持でいまこの文章を書いています。(→追記)

ジェラルドの好演

開場時間の18:30にON AIR WEST前に到着したにもかかわらず、まだ人影はまばら。外タレのライヴとは思えない寂しさです。これも人間椅子公演中止の影響なんでしょうか。あまりの人の少なさに、いつもなら整理番号順に10人くらいずつ入場するところを、「前売券を持ってる人から入場してくださーい」というアバウトな形態でした。

開演時間の19:00になると、まず主催者であるジェラルドのジャーマネ氏が挨拶。「後藤マスヒロくんが一人で人間椅子公演中止の責任をとります」とのことでした(笑)。続いてジェラルドの演奏が始まりましたが、まさに責任を取るがごとく、後藤氏が他のメンバーを引っ張っているような感じで、力のこもった熱演です。8月か9月に発表予定のニューアルバムからの新曲も披露され、充実した内容でした。1時間ほどでジェラルドの演奏は終了。

マスターマインド登場

これだけ中身の濃い演奏だと、次のマスターマインドはどうなるのかなーとステージ上の機材替えの作業を見ながら考えていました。ジェラルドはVo, Key, Dr, Bの4人編成のバンドなのですが、永川氏のキーボード5台とハモンド・オルガン用スピーカーなどは片付けられてしまったものの、後藤氏がS.K.I.のサポートのギャラで買ったという緑色のドラムスはそのまま。シンバルや椅子などの細かいセッティングは変更されていましたが。ベース・アンプもそのまま。キーボードの影に隠れていたギター用のマーシャル・アンプが表に出され、ラック式エフェクターの入ったアルミケースがセットされます。機材運送費を浮かすためか、マスターマインドのメンバーは自分の楽器以外はほとんど持ってきていないと思われます。ON AIR WEST側のスタッフによる大体のセットが済んだところで、典型的アメリカ人体型のオヤジ外人3人が出てきて、各々が楽器の細かいセッティング、音出しを始めます。もしかしてこれがメンバーなの?それともローディーの人かな?と思っていると、この3人が突然演奏を開始します。やはりこの人たちがマスターマインドのメンバーだったのです。

疾風怒涛の演奏

音量・音圧ともにそれほどではないのですが、バンド全体としての勢いがものすごい。といっても、単純に力で押しているわけはなく、テクニックも相当なものをもっています。第一印象は、アラン・ホールズワース・バンドがスラッシュ・メタルを演奏したような感じでしょうか? 編成は人間椅子と同じ3人組、ギターも同じSG、ドラム・セットも後藤氏と同じドラムスなのですが、出してくる音は全然違っています。

ギターの人は和嶋氏のヨッちゃんモデルと同型のSGを使っていました。かなり小汚く、年季が入ってる感じ。ブリッジ付近に謎の配線が付いてましたが、もしかしたらギターシンセのピックアップがついていたのかも知れません。演奏性を重視しているのか、ギターをかなり高い位置にしています。難しそうなフレーズや速弾きソロも自由に弾きこなしていました。ピッキングも丁寧で、その結果、和嶋氏のSGのようなハードな音色ではなく、クリーム時代のエリック・クラプトンに近い上品な音がします。演奏形態や音色から察するに、ヴァイオリンなどの伝統的な楽器の教育を受けた人なのではないかと思います。ラック式エフェクターケースの上にあるスイッチやフットペダルなどを駆使し、時折S.E.的なサウンドも出します。ヴォーカル曲ではこのギターの人が歌いますが、残念ながら歌はギターほどはうまくないです。(→追記)

ドラムスの人もなかなか異様です。背筋を伸ばした正しい姿勢のまま、パワー・スピード・テクニックの三拍子そろったすさまじいリズムを叩き出します。「ダイナマイト」ばりのツーバスをドコドコ打ちまくる曲を、さながら機械人形のように休む間もなく演奏し続ける姿は、感嘆を通り越して恐怖すら覚えます。この人もクラシックの教育を受けた人かもしれません。スティックはつねにブラスバンド風の正式な持ち方をしていました。それにしても叩く力が違う。後藤氏はドラムスを貸したことを後悔しているのでは?と思わせるほどの激しいドラミング、でも姿勢はつねに一定、という不思議なドラマーです。眼鏡をかけているドラマーも珍しいと思います。(→追記)

ベースの人は外観は普通のロックの人風です。他のメンバーより多少若いように見えました。前2者と比べるとインパクトは少し落ちるのですが、このギターとドラムスについていけるのですから、テクニック的には標準以上のものを持っているはずです。(→追記)

サウンド面の考察

演奏された大半の曲は、ハイスピードでありながら、プログレ的なテクニカルな内容です。ギターのフレーズがいちいち小難しく、ドラムスがそれに追従していたりして、フランク・ザッパを彷彿とさせます。曲の構成は凝ってるんだか凝ってないんだかよくわからない(なんだそりゃ)。人間椅子のようなドラマティックな展開とかテンポチェンジとかはほとんどないです。エンディングも唐突にビタッと終わります。1曲くらい、スペース・ロックみたいなのもありました。また、ワーグナーの「ワルキューレ」とロッシーニの「ウィリアム・テル」もカバーしていました。このへんもクラシックのバックボーンを感じさせます。

バンド全体としては、一歩間違うとスラッシュ・メタルになりかねない曲調を、メンバーの持つテクニックと知性で上品にまとめあげている、という感じ。ギターソロもハードロックやプログレというよりは、アラン・ホールズワースやフランク・ザッパなどに見られるジャズ/クラシックな雰囲気。系統的には、やはりアメリカ東海岸のバンドであるブルー・オイスター・カルトに近いものを感じます。

アンコールは1回で、10:00ちょっと前に終了しました。計3時間半ほど立ちっぱなしの私の腰は崩壊状態でした。

総合診断

全体的な感想ですが、アメリカン・プログレ・パワーに大きな衝撃を受けた公演でした。聞くほうも体力いります。ライヴでこれだけの力量を持つバンドですが、アルバムではどのような音作りをしているのか興味津々です。ライヴをそのまま一発録りしたような感じなのか、それとも多重録音を駆使し構築美を目指しているのか? あと、開演前の準備に見られる「Do It Yourself」的な姿勢には好感を覚えました。ツアー慣れしてる感じ。

人間椅子との「日米SG対決」が実現していれば、より楽しめる公演になったこと思います。次回来日時にぜひ対バンしてもらいたいものです。それまでには私も肉食って体力つけるぜ!

(97-01-25記)


追記(最終修正:97-10-04)

■ 97年1月25日(土) 渋谷 Egg-man

東京では1月25日に渋谷 Egg-manで2回目の公演がありました。Progressive Rock Japan siteのiwasaさんによるレポートがProgressive Rock latest reviewsで読めます。
私の素人丸出しレビューに呆れたプログレ・ファンの方は必読です。

■ オフィシャル・サイト

マスターマインドは、メンバー自身によるオフィシャルなホームページを持っています。バンドの詳細はここに行けば全部わかります。Do It Yourselfな姿勢がここにも見られます。

http://www.k2nesoft.com/~bberends/mastermind/index.html URL変わりました(98-10-04)
■ ギターの人

ギターの人はBill Berends氏です。件のSGは、両親に買ってもらった1968年製のGibson SG Standardだそうです。前記オフィシャルページの「Guitars & Equipment」なる機材紹介で、ギターのことはここでわかり過ぎるくらいわかります。

■ ドラムスの人

ドラムスの人はRich Berends氏です。ギターのBill氏と兄弟です。普段はラディックを使っているようです。ドラムスのことも「Drums & Equipment」でわかります。

■ ベースの人

ベースの人はPhil Antolino氏です。ライヴのみのサポートメンバーです。


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