「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:98-07-26(日)

98年7月25日(土) 渋谷 ON AIR WEST 【奇数月ライブ七月 サマーツアー'98】
17:30開場 18:30開演

【レポート】
 皆さんお気付きでしょうか? 最近の人間椅子のライヴは、雨が降らない! 人間椅子には全く似つかわしくないツアー名「サマーツアー'98」ということで、雲一つない夏の青空を予想していた今回のライヴでしたが、4時くらいに渋谷に着いた時点で、かなり雲行きがあやしく、開場前には雨が降っていました。やはりジンクスは生きていたようです。

 今回も土曜日・休日で、開場は17:30と早め。前回は2階席が開放されていたので、2階席最前列を奪取すべく時間前に到着、入場したのですが、入ってみると「関係者以外立入禁止」の貼り紙が。仕方なく、和嶋氏側の壁際に場所を取りました。しかし1時間も立って待ってるのは疲れます。壁側には5〜6人くらい座れるスペースがあったのでよかったのですが…。初期イエスのBGMが流れる中、開演まで1時間待ちます。

 イエスの頃のビル・ブラフォードってあんまり上手くないなー、などと思いながら待っていると、5分押しくらいでいつもの「火星」がかかります。
 スモークの焚かれた暗がりの中メンバーが登場し、演奏を開始。曲は2nd『桜の森の満開の下』より「爆弾行進曲」! 旧譜再発にあわせての選曲だと思いますが、久しぶりにやる曲のせいか、演奏がちょっとモタついてました!?(笑)
 本日の服装ですが、鈴木氏は、白和服、血糊跡あり、その上に温泉旅館などに備えられているような羽織を着ています。ベースはお札の貼ってある木目イーグルです。
後藤氏は、テリー・ボジオ風の黒ランニング+柄シャツ(途中で脱いだ)に革パンツといういつものいでたち。
 和嶋氏は、作務衣というより甚平そのもの。ギターは最近入手したというSG、通称「バット2」。形状は以前から使っていた「ヨッちゃん」と同じものですが、前後ピックアップの間に、煙草のゴールデン・バットのメタルステッカーが貼ってあります。前回もかなり使用していたこのSG、和嶋氏はかなり気に入っているようですね。今後はメンチSGに代わってメインギターとなりそうな感じです。
 続いて最新作『頽廃芸術展』から、ライヴ定番曲となった「戦慄する木霊」のシャープな演奏。

 ここで最初のMCです。トライクル解散後、再びインディーズになるかと思われた人間椅子ですが、無事古巣のメルダックと再契約したことを鈴木氏が報告、ファンを安心させてくれました。7月23日に1st『人間失格』から4th『羅生門』までの過去の4作品がメルダックから再発されたのに合わせて、次の曲は「羅生門」。これも本当に久しぶりに演奏された曲ですね。

 再びMC、今回は季節に合わせて「夏特集」とのことで、まず和嶋氏の好きな?ベンチャーズのカヴァー「DIAMOND HEAD」。ギターもシングルコイルのもの(名前不明)に持ち替え、アンプもマーシャルではなくローランドのJC-120にリヴァーブをかけ、それらしいサウンド作りに努めていました。
 続くMCでは、ギターをバット2SGに戻し、人間椅子流のベンチャーズ曲(ズンタタ、ズンタ、ズンタタ、ズンタ…というリズムの曲)「辻斬り小唄無宿編」を演奏。もちろんベンチャーズとは全く違う重厚なサウンドでした。
 続いて「九相図のスキャット」。この曲もよく聴くとベンチャーズ系のリズムなんですよね。

 次は、再びギターをシングルコイルのものに持ち替え、和嶋氏曰く「キャバレーのバックバンドのような雰囲気のドラムスとベース」を従え、未発表曲「夏の墓場」。この曲はタイトルは知っていたのですが聴くのは初めてです。比較的ポップな、人間椅子のイメージからはやや意外な楽曲でした。

 鈴木氏の「夏といえば太陽ですが…」という語りかけのMCで、次は「太陽黒点」か?「太陽にほえろ!」か?と思いきや、意外にもキング・クリムゾンの代表曲のカヴァー「太陽と戦慄パートII」! スタジオ・ヴァージョンの完全コピーを聴かせてくれました。個人的には、人間椅子によるクリムゾンのカヴァー曲を聴けて非常にうれしかったです。次に演奏する機会があれば、ドラムスの派手なライヴ・ヴァージョンでも聴いてみたい!
 ※ プレイヤー9月号の和嶋氏の連載に、「太陽と戦慄パートII」の譜例が載ってます。
 続いてラヴクラフト物の「狂気山脈」。「〜と戦慄」からの連想か、はたまた夏の怪奇特集か? この曲もめったに演奏しない珍しい曲です。そのせいか、最後の和嶋氏の唄のパートは歌詞を忘れている様子でしたが…(笑)

 さて、ここで待望の1音半下げの楽器にチェンジ。
 重暗曲の1番手は、大変珍しい「時間を止めた男」。この曲(それも完奏版)が聴けてラッキーでした! 調べてみたら、96年1月25日のジェラルドとの共演時以来の演奏でした。
 再び夏の怪奇特集、ラヴクラフトの「ダンウィッチの怪」
 次も怪奇特集に入るのか?「東京ボンデージ」。中間部のギターソロは、CDのバージョンより回数が多く執拗に繰り返されます。

 次のMCでは、鈴木氏のさまざまな夢(羽根物専門のパチンコ屋、弘前ねぷたに山車を出展など)から、「ハードロック喫茶ナザレス」の夢が、去る6月23日に弘前にて実現したことが報告されました(9月1日にも行われるそうです)。これにちなんで店名の由来になったナザレスの代表曲のカヴァー、「RAZAMANAZ」を演奏します。
 この曲は、以前和嶋氏のハードロックギター講座でも触れられていたのですが、一言でいうと、ディープ・パープルの代表曲「スピード・キング」に大変よく似た曲です(笑)。ロジャー・グローヴァー(ディープ・パープルのベーシスト)がプロデュースだからいいのか…?

 ここでギターやベースを通常チューニングのものに戻し、ステージ中央部に慌ただしくマイクスタンドなどがセッティングされます。
 鈴木氏の、「次は『君は…』で始まる曲です」というMCで演奏を開始、同時に今日のゲスト、みうらじゅん氏が浴衣姿で登場、もちろん曲は「君は千手観音」です! 場内は大いに盛り上がります。みうら氏はテレビ出演時によく持っているリッケンバッカー425をかき鳴らし、最後は袂から取りだしたハーモニカのソロで盛り上げます。
 みうら氏のMCの後、今度はみうら氏のイカ天バンド「大島渚」の曲「カリフォルニアの青いバカ」。この曲を聴くのは、私は10年ぶりでした。

 みうら氏はここで退場。ステージ上はメンバー3人に戻って「天体嗜好症」「天国に結ぶ恋」「地獄」を一気に演奏。宇宙→天国→地獄の三界巡りのエンディングとなりました。どの曲も丁寧な演奏で、聴き応えありました。

 アンコールでは、和嶋氏がメンチ、鈴木氏がリッケンバッカー、はいいのですが、なんと後藤氏もギターを持って登場します。この編成で「ゲゲゲの鬼太郎」を演奏。元・ねずみ男の鈴木氏がヴォーカルでした(笑)
 後藤氏がドラムスに戻って「人面瘡」。今回の演奏はイントロのギターが繊細な気がしました。
 続いて「エキサイト」。いつもは勢いで突っ走っていた感のある曲ですが、今回はエキサイトし過ぎず、余裕のある演奏でした。次回のライヴ予告とともにメンバー退場。

 アンコール2回目では、これもいつもより安心して聴ける「ダイナマイト」
鈴木氏の最後のMCでは「次回のライヴはレッド・ツェッペリン特集」とのアナウンスでした。
 それを象徴するかのように、メンバー退場後のBGMはレッド・ツェッペリン「流浪の民」がかかっていました。

 さて、総合的な感想ですが、「いいライヴ見せてもらいました」という感じです。旧譜再発にちなんだ曲や未発表曲がいろいろと聴けたこともありますが、特に今回はテーマ「夏」に沿った曲が楽しめました。焦点がぼやけがちなライヴが最近続いていたように思っていたので、今回のような選曲・構成は大変うれしかったです。4年ほど前、初夏の頃4年連続やっていた後楽園ホールでのライヴ「サマーエキサイティング」シリーズを思い出す構成でした。それの集大成、発展形といった感じ。
 カヴァーと持ち唄のバランスも良く、バラエティー豊かな高密度のライヴに、持ち唄のみ収録のアルバムからは味わえない、バンドの懐の深さを再認識しました。

 反面、終盤やアンコールでの激しいノリを求めていた方や、今回初めて人間椅子のライヴに来たような初心者の方には、ちょっと厳しいライヴだったかもしれません。特に変拍子の「太陽と戦慄パートII」では観客の動きが完全に止まっていたような気が…。

 演奏曲数ですが、今回は何と22曲も演奏! 通常は19曲であることを考えると、3曲も多いのです。しかし長いライヴだったという感じはしませんでしたが。今回はゲスト分2曲があったのが原因でしょう。曲数が多いのは結構なのですが、ツェッペリンのように3時間以上のステージなどは期待してません(まず客が立っていられません(笑))ので、無理しない程度にがんばってほしいものです。

 そして今回のライヴで一番うれしかったのは、何と言ってもメジャー復帰決定と新譜発売予定のお知らせ。チラシによれば、新譜は「1999年2月24日発売!」とのことです。『頽廃芸術展』を上回る快作を期待したいです。また、次回の10月のライヴツアー【怨念大納言】は、ZEPカヴァーはもちろん、ニューアルバム収録予定の新曲をぜひ聴きたいです!

(98-07-26記、98-08-16追記)
※ タマエ氏のサイト人間椅子讃歌にもタマエ氏によるライヴレポートが掲載されています。こちらの方も是非どうぞ。
【チケット】
チケット

【セットリスト】
SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング ホルスト「惑星」より「火星」> バット2 イーグル(木目)
爆弾行進曲
戦慄する木霊
<MC>
羅生門
<MC>
DIAMOND HEAD (VENTURES)
<MC> バット2
辻斬り小唄無宿編
九相図のスキャット
<MC>
夏の墓場
<MC> バット2
太陽と戦慄パートII (KING CRIMSON)
狂気山脈
<MC> グレコ ミラージュ
10 時間を止めた男
11 ダンウィッチの怪
12 東京ボンデージ
<MC>
13 RAZAMANAZ (NAZARETH)
<MC> バット2(和嶋)
リッケン425(みうら)
イーグル(木目)
14 君は千手観音
<MC>
15 カリフォルニアの青いバカ
<MC> バット2
16 天体嗜好症
17 天国に結ぶ恋
18 地獄
<アンコール1> メンチ(和嶋)
?(後藤)
リッケンバッカー
19 ゲゲゲの鬼太郎
20 人面瘡 メンチ
21 エキサイト
<アンコール2>
22 ダイナマイト

情報・投稿・忠告・激励・罵倒メールは:ecag@st.rim.or.jp までよろしくお願いします。

「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる