「総合目次」にもどる | 「演奏会報告の目次」にもどる | 最終修正:2006-07-22(土)

2006年7月1日(土) 渋谷 O-West 【電気仕掛けの怪】
18:00開場 19:00開演

【レポート】


 前回の反省を生かし、今回は仕事をきっちり終えて、開演20分ほど前に入場。今回のBGMのテーマは'60〜'70年代ロック? ドアーズ「水晶の船」「ハートに火をつけて」、ジェフ・ベック「レッドブーツ」、ビートルズ「トゥモロー・ネバー・ノウズ」、ディープ・パープル「レイジー」など。
 今回は土曜日ながら開演は19:00とやや遅めなので、集客はまずまずの様子。2階席は開放されていませんでした。
 物販は、前回は遅れて着いたので詳細はわかりませんが、前ツアー【2006年の瘋痴狂】の時とアイテムは一緒と思われます。CDに加えDVDも積んであったのがなんとなく新鮮でした。

 約5分押しで場内が暗転し、オープニングテーマが流れ出します。今回のオープニングは初めて聴く曲。ミディアムテンポのツインリードっぽい曲です。ツェッペリンじゃないよね?
 メンバーが入場、定位置についたところで開幕曲はデビューCDのタイトル曲「人間失格」。毎回何を持ってくるのか楽しみな1曲目ですが、今回はちょっと意表を突かれました。
 本日のメンバーのいでたちは、和嶋氏がアマガエルのような黄緑の着物に、上はダークグリーンの羽織。噺家をイメージしたものでしょう。ギターはいつものバット2。鈴木氏はこのところの定番、僧侶の黒い法衣(略装?)を着用、頭もツルツルに剃っています。ベースはイーグル。ナカジマ氏は龍の文様のダボシャツの上に、黒または紺の腹掛け。下衣はよく見えませんでしたが、アルバムジャケット通りなら黒っぽい長股引きでしょうか。曲中にドラムスの後方左右に、たいまつorかがり火?を模したランプが点り、バトルっぽい雰囲気が漂っています。
 へヴィな楽曲の演奏を終え、2曲目は最新アルバムから「二十一世紀の瘋痴狂」。ハードながら軽妙さも伺えるこの曲が、真の開幕曲でしょうか。
 3曲目は『二十世紀葬送曲』から「蟲」。ドラムスがナカジマ氏での演奏はCDとは若干違うノリ。開幕3曲に共通して、和嶋氏のギターソロが目立っているような気がします。

 ここでMC。「1曲目はいつもと変えてみたが緊張しました」と鈴木氏。7月になったばかりなのに、すでに心は8月の弘前ねぷた祭りに飛んでいる鈴木氏、「ねぷたとパチンコだけが楽しみ」ということで、曲は『怪人二十面相』から「屋根裏のねぷた祭り」。ギターソロのソロのボリューム奏法がこの曲のハイライトか。
 続いて『二十世紀葬送曲』より「恋は三角木馬の上で」。ブリブリした下品なベース音が迫ってきて心地よい。ピンク色の照明は恋の色?

 MCをはさんで、新譜から「山椒魚」。イントロやリフでは小指のスライドバーを使いながら、他の指でソロもこなす和嶋氏に思わず注目。特にSGのフロントピックアップを使ったサウンドは素晴らしく、クリーム時代のエリック・クラプトンの音を出しています。MCによれば今回のライヴのテーマは“夏らしくさっぱり”のはずだったのが、「ギターソロは長くてこってり。『家系』ラーメンのよう」と返した和嶋氏、その発言通りの演奏を見せてくれます。
 次の「芋虫」イントロでもスライドバー。エフェクトのかかったベースをギターが追っていく楽曲。イントロが終わるとビブラートしながら何気なくスライドバーを置く和嶋氏に、職人芸を見ました。ピンクフロイド風の間奏部では、それを暗示するかのように再びピンク色の照明が点灯します。鬱屈と閉塞の文芸シリーズ二曲ですが、詞の結末は対照的、曲はブルースとプログレで、序盤からこってりと聞かせます。

 ここで楽器交換し、ローチューニング曲の準備。この間、鈴木氏はMCで「『山椒魚』の“見ろよ 小蝦たちの舞踏(ダンス)”の部分ではパチンコ『海物語』の魚群の画面が目の前に浮かんでくる」、「『芋虫』は難易度が高いので緊張する。今日で封印されます」などと前2曲を解説。和嶋氏もイントロで「胃が痛くなった」とのこと。次に演奏する曲についても解説があり、「2番の歌詞は現在のハードロック業界を活写した」という「不惑の路」を演奏。中間のユーライアヒープ風ノリのパートでは、人間いたる処ミック・ボックスありの感を強くしました。
 そして久しぶりの演奏となる「サバス・スラッシュ・サバス」。お楽しみのブラック・サバスのカバー曲、今回は『BLACK SABBATH Vol.4』より「Under the Sun」。「この曲も難しいので今日だけの演奏です」という鈴木氏、残念なことです。
 これも久しぶり『頽廃芸術展』より和嶋氏がボーカルを取る「阿片窟の男」
 次は和嶋氏のMC。「楽しそうな他人を見ると不愉快になる。犯罪者の気持ちがわかる」という発言や、周囲の人々の間でささやかれる〈友人、和嶋に気をつけろ〉的な話題で、観客はじめメンバーまでも引かせます。次の曲はそんな犯罪者の心理を表現した「黒い太陽」を演奏。そしてベースソロから「相剋の家」へと、アルバムエンディング楽曲の2連発。

 これで重暗曲コーナーは終了し、ナカジマ氏いわく“ノリノリタイム”の始まり!
 最初は、歴史ある人間椅子に溶けこんでいきたいというナカジマ氏が唄う「孤立無援の思想」。続いて前作『三悪道中膝栗毛』より「のれそれ」、観客もちょっと変わった重いノリでダンシング!
 MCのあとは鈴木氏と客席に煽られナカジマ氏のドラムソロ、かがり火スイッチもon! 石原裕次郎の「嵐を呼ぶ男」“おいらはドラマー、やくざなドラマー”と唄も披露したあと「恐怖!!ふじつぼ人間」へ。O-Westの立地にちなみ、鈴木氏は“道玄坂のラブホテルの出口から、フナムシだらけの人間が!”と歌詞を変えて唄っていました。
 最後の曲は、やっぱり「針の山」。最後の歯弾きギターも決まって演奏終了。

 満場の拍手に迎えられて始まったアンコールは、「本日の目玉商品」という「品川心中」。演奏が途中で中断されると、舞台中央に座布団が敷かれ、和嶋氏扮する「二笑亭濁酒(にしょうてい・どぶろく)」さんによる落語コーナーへ。落語の「品川心中」を語り終えると、和嶋氏はそのままギターを持って立ち上がり、演奏を再開。2曲目も〈売られる〉曲「りんごの泪」を演奏し、再び舞台を去ります。
 2度目のアンコールでは、メンバー全員が着替え、鈴木氏が白い死装束、ナカジマ氏が水色のTシャツ、和嶋氏が黒のツアーTシャツへ。和嶋氏はアンコール用のゼマイティスに持ち替えています。ギターのストラップがカービングされた革製だったのがちょっと珍しい。曲は、これも久しぶりの「ダイナマイト」。観客を十分に満足させ、本日の演奏は終了となりました。

 総評です。
 選曲はいつもながら良かったと思います。今回は新譜と『二十世紀葬送曲』からの選曲が多かったようですが、あまり聴けない曲が目立ったように思います。今後の傾向としてはメンバーの場数、年齢や体力に対応した(?)演奏して飽きのこない変化のある曲順、終盤まで持久力を保てるような構成になるのでしょうか。1曲目から「人間失格」という意外性はファンにとっては嬉しい誤算、“へヴィ人間椅子”で始まるライヴも悪くない、という感じだったのですが、初見の方々にはちょっと厳しい開幕だったかも。
 演奏はギターソロが長い曲が多かったので、スライドギターをはじめとした和嶋氏のギターテクニックとサウンドを十二分に堪能できました。鈴木氏のベースも心地よく、全体としてのバランスも良し。ナカジマ氏のドラムスも十分に馴染んできたと思います。人間椅子とナカジマ氏のメジャーデビューは同じ頃。氏のドラマーとしてのキャリアと幅の広さを感じさせる演奏でした。
 会場のサウンド、照明なども申し分ありませんでした。特に人間椅子らしからぬピンク色の照明が印象に残りました。
 今後はワンマンこそないものの、9月18日に「ナカジマノブ博`06 ビバ!40歳!」で初日に出演する予定とのこと。本田恭章氏との対バンに心が揺れ動いています。ナカジマ氏から“和嶋氏と鈴木氏と同い年の〜”と紹介されたとき、場内の反応が薄かったのが残念。ここは笑う所だよね?

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング「?」>
人間失格 バット2 イーグル
二十一世紀の瘋痴狂
<MC>
<MC>
屋根裏のねぷた祭り
恋は三角木馬の上で
<MC>
山椒魚
芋虫
<MC> グレコ イーグル
(茶)
不惑の路
<MC>
サバス・スラッシュ・サバス
 〜Under the Sun (BLACK SABBATH)
10 阿片窟の男
<MC>
11 黒い太陽
12 相剋の家
<MC> バット2 イーグル
13 孤立無援の思想
14 のれそれ
<MC>
15 ドラムソロ
 〜恐怖!!ふじつぼ人間
16 針の山
<アンコール1>
17 品川心中
18 りんごの泪
<アンコール2> ゼマイティス
19 ダイナマイト
<エンディング「?」>
<備考>
 アルバム『瘋痴狂』収録曲


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