「総合目次」にもどる | 「演奏会報告の目次」にもどる | 最終修正:2004-10-27(水)

2004年10月17日(日) 渋谷 O-West 【新生人間椅子平成拾六年巡業〜三悪道中膝 栗毛〜】
17:00開場 18:00開演

【レポート】

 人間椅子ライヴの日らしからぬ好天に恵まれましたが、二度の電車遅延のため、開演5分前くらいに入場。一階フロアはすでに満員に近く、開放された二階席もぎっしりと観客が詰まっています。ドリンクチケットの通し番号から判断すると、350人以上入っていたのでは?
 物販は前回と同じく、フロア右手に出店しています。新たに今回のツアーTシャツ2種(1枚3,000円)と4枚組ブロマイド(1セット500円)が仲間入り。その他CD、ビデオ、ステッカー、ロゴ入りライターもありました。

 場内にほどよくスモークが充満したころ、客電が消え暗転。高まる興奮の中、本日のオープニング・テーマ<TOMORROW NEVER KNOWS(The Beatles) 和嶋慎治remix(たぶん)>が流れ、メンバーが入場してきます。"TOMORROW〜"は『リボルバー』でなくて『アンソロジー2』に入っていたデモバージョンの方で、これにお経(声明?)がミックスされているようです。
 和嶋氏のギターのピックスクラッチ音から始まる開幕曲は、なんと1枚目のアルバム『人間失格』から「針の山」。序盤からスピーディーな展開で、新譜ツアーとしても大変めずらしい選曲、ギターソロもゆったり聴けます。
 次も旧譜の『羅生門』から「人間椅子倶楽部」。バンドの自己紹介ソングでもあるこの曲、3番の歌詞を唄うのは、もちろん新メンバーのナカジマ氏。デビュー戦でこの曲は人間椅子倶楽部への加入儀礼か。

 本日のメンバーのいでたちでまず目に付くのは、なんといっても鈴木氏。黒い法衣に身をつつんでいますが、頭髪がこれまでの長髪から白塗りの坊主頭へと衝撃のイメチェン。一瞬、ベーシストも交替し、体格のいい武闘派修業僧が加入したかと思いました。楽器はいつものイーグルで爆音を出しています。背後のベース・アンプの2段目にAMPEGのヘッドが積まれていましたが、今回のツアーから追加されたものでしょうか?
 和嶋氏は新譜ジャケット通り股旅者の服装。今回は被りモノ無し。ギターも使い慣れたバット2です。
 新加入で注目のナカジマノブ氏ですが、上半身はTシャツの上に和風模様のチョッキと、非常に活動的なスタイル。ドラミングもワイルドで気合いが乗っています。ドラムセットのメーカーは見えませんでしたが、色はホワイトパール、バスドラムのヘッドには、アルバムと同じデザインの赤い「人間椅子」ロゴが入っています。前任者の後藤氏と比べ、タムの数は非常に少ない。ハイタムの横にシンバルを置くのは、ジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)風のセッティングなのでしょうか。スネアなどの音程は比較的高めでした。

 開幕2曲を終え、バンドを代表して鈴木氏からの挨拶。
 新ドラマー、ナカジマノブ氏が紹介されます。本日のお披露目のため、今日は勝負パンツをはいてきたというナカジマ氏は「無地なのでみんなの色に染めてくれ〜」と、快気炎。 また各方面で活躍する氏は、パフィーのバックで叩いたとき「パフィーより目立ってる」「演奏後にハーハーいって気持ち悪い」と不評だったなど、どこでも全開の仕事ぶりが披露されました。

 次の2曲は新譜『三悪道中膝栗毛』から「夜間飛行」。高三の時、UFOが部屋に入ってくるという神秘体験をしたという和嶋氏が「宇宙人に与えられたヴィジョン」に想を得た詞。ライヴではテルミンの神秘的なサウンドとあいまって、強迫的なリズム感が強調されています。
 続いて「のれそれ」。ある意味、新生人間椅子らしい楽曲ですが、前曲のノリを引きずったのか、CDバージョンよりテンポが早く、タテのりな感じです。♪ゆらゆら〜ええじゃない のくだりでは会場から唱和も聞こえ、なごんだ雰囲気でした。

 MCの話題は、ナカジマ氏加入のいきさつから始まり、和嶋氏と鈴木氏の出会いへ。中学校時代、和嶋氏が鈴木氏に借りたアルバムはキッス『アライヴ2』とのこと。
 ライヴ序盤から「腕が折れるまでがんばる」と200%で演奏するエネルギッシュなナカジマ氏に対し、和嶋氏、鈴木氏はすでに息切れ気味。いつもの序盤は30〜50%のところ、ナカジマ氏の影響でかなりとばしてきた模様。しかし「こっちも指が千切れるまで、頑張ってついていく」とのこと。

 次の曲は、和嶋氏が新しい人間椅子のために、ぜひ作りたかったという「新生」
 つづいて『見知らぬ世界』より「侵略者 インベーダー。演奏中のメンバーには、インベーダーの皮膚の色を思わせるグリーンの照明が当たります。しかし和嶋氏の姿が髪型とあいまって“インベーダー”というより“河童”に見えてしまいました。
 この曲も宇宙シリーズでは?というナカジマ氏の素朴な疑問に対して、鈴木氏の回答は、この曲は宇宙シリーズでない、「ホークウィンドに影響された曲が宇宙シリーズ」ということが判りました。
 ナカジマ氏と鈴木氏のやりとりを受けて、「ナカジマ氏の間違いはカワイイ」と和嶋氏。「踊る一寸法師」→「踊るこぼうず」、対バンしたらいいんじゃない?のバンド名「陰陽座」→「おんりょう座」など、ナカジマ氏とのリハーサルの話題です。

 フロント二人は一音半下げの楽器にチェンジし、重暗曲のコーナーへ。ギターはいつもの善光寺ステッカーの貼られたグレコ、ベースは前回ライヴから登場したイーグル(茶)。
 鈴木氏の「プロモーションビデオができました」という紹介から、新譜の1曲目でもある「洗礼」を演奏。ぜひ映像を見てみたいです。
 和嶋氏の入念なフィードバックから『修羅囃子』より「相剋の家」〜『見知らぬ世界』より「死神の饗宴」とヘヴィな楽曲が続きます。逆光の中で演奏。
 「年をとると、夜の街もなにか“むなしさ”を感じるようになる」と和嶋氏。その“むなしさのなかに見える何か”を表現したという「痴人の愛」。次も新曲、鈴木氏の歪ませたボーカルの「悪霊」を演奏。
 そして日曜日のライヴには欠かせない「暗い日曜日」。この曲に限りませんが、随所で聞こえるナカジマ氏のコーラスも見逃せないポイントです。

 ここで重暗コーナーを完了し、通常チューニングへの楽器換え。MCではナカジマ氏目当てに来場したファンに向けて、鈴木氏は「さっきのヘヴィーコーナーの曲が好きになれれば人間椅子ファンになれます」と、配慮に指導も忘れません。

 さて終盤の盛り上がりへなだれこむ最初の曲は、鈴木氏が作曲、和嶋氏が作詞、ナカジマ氏がヴォーカルをとる「道程」。新生バンドを象徴するような役割分担の楽曲です。CDバージョンよりもはるかに気合いの入ったヴォーカルとドラムスのナカジマ氏、それでもまだ足りないのか、各所で合いの手の叫びを入れていました。ギターはレッド・ツェッペリン「ロックン・ロール」のライヴ盤(『永遠の詩』)のような演奏であることに気がつきました。
 鈴木氏の「会場で目が合った人との、愛のカウントダウン〜! 10、(中略)、0、発射〜!!」というMCで始まる「発射」。カウント部分はもちろん場内が渾然一体となって連呼。
 続いて、和嶋氏が「もう一度“愛の歌”をやります!」という導入で「愛の言葉を数えよう」を演奏。イントロでは鈴木氏も頭上の手拍子で客席を誘います。ブレイク部では、和嶋氏がステージを右に左に駆け回り「イエー!」「(客)おぉ〜」、「イエー!」「(客)おぉ〜」と観客を煽ります。
 最後は「エキサイト」で締め。エンディングでは、ローディー川端さんもステージに登場しエキサイト!! 三人が退場したあとも、客席からはもちろんアンコールを求める拍手が続きます。

 満場のアンコールに応えてメンバーが再登場。三人とも着替えて、和嶋氏とナカジマ氏は青のツアーTシャツ、鈴木氏は白装束に。和嶋氏は「大道具A、Bと死人です」と自己紹介。アンコール曲は、ねじふせるような演奏の「幸福のねじ」「地獄」

 再度のアンコールでは、ナカジマ氏は『怪人二十面相』ツアーTシャツに。和嶋氏はTシャツの上からチョッキ(たぶんナカジマ氏が着ていたもの)を着ています。
 この時、和嶋氏は見慣れないグレコのレスポールを手にします。GT-550TBのメタリック・ブルー・サンバーストでしょうか。グレコのサイトで紹介されているGZモデルとは違います。鈴木氏は以前ローチューニング曲で使用していたミラージュ。
 本当に最後の曲は「ダイナマイト」。ボーカルの鈴木氏はじめ、余力ぎりぎりの演奏でしたが、気力で完奏。

 最後はナカジマ氏を中心に三人で手をつないで客席に礼。「鈴木氏の頭をさわると功徳がある」とのことで、ステージをめぐる鈴木氏。和嶋氏、ナカジマ氏もしばし握手に応え、やがてメンバー退場。

 総評です。
 新生・人間椅子サウンドがライヴでどう変わったのか、というところが最大の注目ポイントでしたが、違和感を覚えるような変化はなく、個人的にはすぐに馴染めました。ナカジマ氏のドラムスはやや単調、とくに曲調に起伏のある重暗曲での表現力にはまだ課題を感じます。とはいえ、こういった点やバンドのコンビネーションには、前任者の後藤氏らも苦労のうえ克服してきたと思いますし、ナカジマ氏の場合もライヴを重ねるごとに良くなっていくと楽観しています。なにより今後も激しく面白いライヴが見られる楽しみがあります。
 ナカジマ氏加入で大きく変わったのは、サウンドよりMCなどバンド全体の雰囲気でしょうか。ナカジマ氏の威勢のいいMCは、まるで普通のバンドみたいでした(笑)。これまでは寡黙なドラマーばかりだった人間椅子ですが、ノリの異なるナカジマ氏が加入し、新鮮な雰囲気を作り出していました。全体的に、攻めの新生が感じられました。

 会場の音響は、ON AIR WEST時代からの良いバランスで、照明も申し分なかったです。ただし今回は、これまでより音量が大きくなったように思います。総じてリズム楽器の音がデカく、つられたのかギター音も太く感じました。耳栓を装着して聴いていたものの、当日の体調がよくなかったこともあり、ライヴ後はやや疲労感が残りました。この音の大きさが直に耳に入ると、私は翌日いっぱいまで難聴状態が続くことは必定なのですが、皆さんの耳は大丈夫だったでしょうか?

 15周年を迎えた人間椅子ですが、よりパワーアップしたライヴを聴かせてくれるようです。私のような中年世代にはツラいですが、ライヴ最後まで途切れないパワーを日頃から維持しておくのがファンのたしなみなのかも。来年2月のライヴにも足を運ぶ予定です。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<TOMORROW NEVER KNOWS(The Beatles)+声明? 和嶋慎治?remix>
針の山 バット2 イーグル
人間椅子倶楽部
<MC>
夜間飛行
のれそれ
<MC>
新生
侵略者 インベーダー
<MC> グレコ イーグル
(茶)
洗礼
相剋の家
死神の饗宴
<MC>
10 痴人の愛
11 悪霊
12 暗い日曜日
<MC> バット2 イーグル
13 道程
14 発射
15 愛の言葉を数えよう
16 エキサイト
<アンコール1>
17 幸福のねじ
18 地獄
<アンコール2> レスポール
(青)
ミラージュ
(木目)
19 ダイナマイト
<備考>
 アルバム『三悪道中膝栗毛』収録曲(新曲)


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