「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2003-05-18(日)

2003年5月16日(金) 渋谷 ON AIR WEST 【終わらない演奏会】
18:00開場 19:00開演

【レポート】

 2月の新譜『修羅囃子』ツアーから約2ヵ月半後の東京のライヴですが、この日の天気は雨のち曇り、まずまずの人間椅子ライヴ日和です。

 平日のため仕事場から渋谷に直行し、10分ほど前に会場に入場。前回に引き続き、今日もフロア内に物販ブースが設けられており、入退場がしやすくなっています。物販ブースでの販売物は前回とほぼ同じですが、ツアーTシャツが安くなったのと、ポストカードの種類がやや増えた(『二十世紀葬送曲』の写真ものなど)のが主な相違点でした。
 平日金曜日ということでサラリーマンには集合しにくい条件ながら、開演までには相当数が入り、さすがに前回の新譜ツアー時にはおよばないものの、2階席も含めれば客数は300人くらい?になっていたようです。ただ客層はやっぱり若くなっているかな?
 客待ち音楽は、唄声とギターの弾き方から判断してたぶんジミ・ヘンドリクスだと思います。未発表曲、あるいは後期のバンド・オブ・ジプシー時代の演奏でしょうか?

 やがて7時になり、会場が暗転。ほぼ定刻通りに開演します。オープニングのBGMは、前回ツアーと同じく和太鼓と笛の曲<修羅囃子>(仮名)、その中をメンバーが入場、楽器を手にします。
 オープニング曲はツアータイトルとなった「終わらない演奏会」。最新作『修羅囃子』のなかでもストレートな乗りの楽曲、いきなり観客のジャンプでフロアの床が揺れています。
 今宵の3人のいでたちは、基本的には前回のツアーと同様。鈴木氏は赤い鬼火が描かれた黒い和服の“剣豪”、後藤氏は“黒人”、和嶋氏は赤の振り袖に黄色い帯の“花魁”姿。ただし和嶋氏は白塗りと丸髷かつらの装着がより本格化した模様です。
 2曲目も『修羅囃子』から「愛の言葉を数えよう」。イントロを客席が手拍子で盛り上げます。終盤の観客との掛け合い部分は1回増サビ、歌詞を「日本で… 東京で… 渋谷で… ON AIRで…」と変えて唄っていました。
 続いてファーストアルバム『人間失格』から「りんごの泪」。後ろで見ていると、初期の曲にするどく反応する観客もかなり多いです。

 ここで最初のMC。「りんごの泪」の歌詞にある“急行津軽”が、新幹線開通にともないこのたび“特急つがる”として復活、これで弘前に帰るのに盛岡からバス「ヨーデル号」に乗らずにすむとのこと。鈴木氏は、人間椅子ファンならこれを機に一度は弘前に来て、ねぷたを見に来てほしいと力説していました。
 ここから唐突にプロ野球の話題へ移行し、演奏は「野球野郎」。これも『修羅囃子』から、後藤氏ボーカル曲です。和嶋氏はピート・タウンゼントのように腕を回してギターをカッティング。ソロのアドリブは「刑務所はいっぱい」風でした。最後のコーラスはもちろんローディーの川端氏も参加、和嶋氏と一つマイクで「バッターアウト!」。
 次は一転して『二十世紀葬送曲』から「蟲」。こちらのギターソロのアドリブは長めに延ばして「無言電話」風に。

 MCでは、和嶋氏が流行する通り魔事件の話題から、漫画『金田一少年の事件簿』での金田一少年や金田一耕助の犯罪を呼ぶ性質について「彼さえいなければ事件は起きないのでは…」と疑問をなげかけていました。
 和嶋氏の「金田一耕助のライバルを唄った唄です」という導入で「名探偵登場」。江戸川乱歩創作の明智小五郎探偵を唄った唄ですが、私は「名探偵のライバル=犯罪者」という連想から「怪人二十面相」かと思ってしまいました…。ソリッドなギターから軽妙なリズムでノンビリ聴けました。
 アルバム『怪人二十面相』曲順と同じく、次は「屋根裏のねぷた祭り」。イントロでの鈴木氏の低くかがんだ動きと形相が印象的。赤とオレンジの禍まがしい照明の下、じっくりと演奏。中間の展開部では、ベースの細かいリズムの上にドラムスとバイオリン奏法のギターがフリーに絡み合う、ピンク・フロイドを思わせるものでした。個人的には、当時のツアーで唯一ライヴで聴けなかった曲(イントロ除く)だったので大満足。

 MCの前に、いきなり「痩せた!」という声がかかり、鈴木氏苦笑。たしかに顔はちょっと痩せたような感じです。和嶋氏によれば、青森県知事の女性問題がいま青森県民の興味の中心であり、知事辞職により政治の空白が生まれる今、「青森ロック大臣」のクーデターのチャンスと力説。
 次は『見知らぬ世界』から「涅槃桜」を演奏。サビがCDバージョンにくらべやや平板なアレンジでしたか?
 続いて桜シリーズ、『人間失格』から「桜の森の満開の下」。展開部の歌詞が一部、アルバム・バージョンと違っていました。デビュー以前の旧歌詞でしょうか。バンドの初期から折々ライヴで演奏された曲ですが、今回も年輪を感じました。バンドとともに樹齢を重ねている名曲、その時点のバンドのサウンドがよく反映される演奏だと思いました。

 MCで楽器をローチューニングのものに変えます。「桜の〜」が初期ライヴのエンディング曲だったこともありここで第1部・完、ここから第2部を始めるとのこと。
 3月のキッス来日公演を見てすっかり影響を受けた鈴木氏の提唱により、次はキッスのカバー曲コーナー。このために和嶋氏のギターをポール・スタンレーのミラージュに変えたんですね…。
 1曲目はキッスの名作ライヴ・アルバム『アライヴ!〜地獄の狂獣』の前振りセリフもそのままに「DEUCE」を演奏。ヴォーカルは鈴木氏。終盤では鈴木氏と和嶋氏がリズムに合わせてポーズを決めるなどサービス満点。
 続いてギターの静かなアルペジオと和嶋氏のヴォーカルから、ハードかつ叙情性のある「BLACK DIAMOND」。メインの唄はオリジナルに合わせてドラムスの後藤氏でした。ステージ上部では、きらきらミラーボールが回ります。これもアレンジは『アライヴ!』版で、私にキッスを啓蒙した大和泉さんなら狂喜の展開だなぁ…と感無量でした。

 次のMCで和嶋氏はダブルネックに持ち替え。1音半下げのため、12弦の方には4フレットにカポタストがつけられています。しかし会場の熱気でくるってしまった、合計18本の弦のチューニングに手間取る和嶋氏。鈴木氏の問いかけにも返答がとだえがち。ローチューニングで張力がゆるいということもありチューニングが安定せず、待ちくたびれて後藤氏がドラムセットを離れ、和嶋氏の前で座り込みチューニングを待つという、往年の「8時だヨ!全員集合」を思わせるパフォーマンスを見せます。
 ようやくチューニングが終わり、「天国への階段」「ホテル・カリフォルニア」などを試し弾き、メンバーが定位置に戻ったところで『桜の森の満開の下』より久しぶりに「夜叉ヶ池」を。アルバム・バージョンよりゆったりと重厚な演奏でした。しかし私を含め、ダブルネックを弾く花魁にもなんの違和感も感じなくなっている観客って一体…(笑)。

 和嶋氏はようやくいつもの1音半下げコーナー用のグレコに持ち替えます。
 続く和嶋氏のMCは、今テレビ報道で話題の白い服の集団「パナウェーブ研究所」について。研究所代表の発言“痴漢攻撃”“リビドー妄想”などに「フロイトから京浜東北線まで、という発想が秀逸」とのこと。こういった犯罪・オカルト系の話題では、心なしか和嶋氏の目が生き生きするのが気になります(笑)。
 テレビの話題から、曲は『羅生門』の「ブラウン管の花嫁」。東京では2年ぶりの演奏となりますが、重さと気だるさが混とんとした佳曲です。
次は『修羅囃子』から「東洋の魔女」「相剋の家」と続きます。

 いつもより1曲少ないのですが、今回はここで重暗曲コーナーは終わり。楽器を持ち替えるとともに、和嶋氏は頭部の蒸れを防ぐためかつらを取り、「ここから第3部です」と宣言。
 今後のライヴ予定は、5月31日(土)千葉LOOKのRa:INにゲスト出演、8月末に大阪、名古屋のあと、9月3日(水)渋谷QUATTROのイベントに出演するとのこと。また9月あたりにツアーも予定しているようでした。
 第3部の開幕は、「人間椅子・愛のテーマ」という紹介で、ドラムとベース、『羅生門』から「人間椅子倶楽部」。この3人のメンバーならではの楽曲であると、いつも思っています。
 ここからフィナーレに向け、『人間失格』の「天国に結ぶ恋」「針の山」と人気曲を連続し、観客も熱狂興奮。後者では、後藤氏のドラムスが2バスでがんばるアレンジに変わっていました。満場の拍手の中、メンバーは退場していきます。

 アンコールの拍手から、メンバーが再登場。鈴木氏と後藤氏はそのままですが、和嶋氏と川端氏は全身を白い服に着替えています。そして川端氏のシャツの胸には「ニンゲンイス研究所」の文字が。和嶋氏は口にマスク、頭に三角巾を着用していましたが、研究所員というよりは給食当番といったほうがぴったりくるいでたちでした。
 5月31日のゲスト出演後は人間椅子はひと足早く夏休みに突入、ということで、『見知らぬ世界』から「楽しい夏休み」。子どもシリーズか、『修羅囃子』から「鬼」が続きます。前回ツアー時よりも良い演奏になったように思いました。鈴木氏のボーカルも、この時点でもこの気合いか!と思わずうれしくなります。

 再びメンバーが退場し、暗転の中、ローディーが楽器チェックを行い、2度目のアンコールに備えます。
 今度は学ランに着替えた“ロック番長”、鈴木氏は黒いリッケンバッカーを持ち、来場者の“金運”を祈願し、「地獄風景」を演奏。三三七拍子にあわせて拍手する観客も大満足の最終曲でした。

 エンディングのBGMは1969年のヒット、「西暦2525年」(ゼーガーとエバンス)でしたが、唄い方の小節回しが、なんとなく鈴木氏風に聞こえました。

 総評ですが、全体的な構成は、メンバーも言うように「3部構成」、最初から最後まで緊張感を保った一体感のあるライヴを求める向きも多いと思いますが、平日夜ということもあり、またキッス来日公演に影響されたのか、良い意味で力の入っていない感じで緩急をつける今回の手法もなかなか楽しめたと思います。
 選曲については、新譜や最近のアルバムからの曲が多めかな?という感じで、重暗曲も少なめ、統一感という意味でもいま一つでしたが、そこは3部構成・全23曲、キッスのカヴァー曲コーナーもあり、ダブルネックも登場し、新譜ツアーではできないような楽しいライヴだったと思います。バンド自体も楽しんでいたようですし。
 会場の音響、照明とも、すでに何度も演奏した場所ですので、こちらも安定したものでした。

 5月31日(土)のゲスト出演以降はねぷた休み(笑)に入る人間椅子ですが、リフレッシュし、また秋のライヴに向けてがんばってほしいです。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<修羅囃子(仮名)>
終わらない演奏会 バット2 イーグル
愛の言葉を数えよう
りんごの泪
<MC>
野球野郎
<MC>
名探偵登場
屋根裏のねぷた祭り
<MC>
涅槃桜
桜の森の満開の下
<MC> ミラージュ
(サンバースト)
ミラージュ(木目)
10 DEUCE (KISS)
11 BLACK DIAMOND (KISS)
<MC> ダブルネック
12 夜叉ヶ池
<MC> グレコ
13 ブラウン管の花嫁
14 東洋の魔女
15 相剋の家
<MC> バット2 イーグル
16 人間椅子倶楽部
17 天国に結ぶ恋
18 針の山
<アンコール1> バット2 イーグル
19 楽しい夏休み
20
<アンコール2> リッケンバッカー
21 地獄風景
<エンディング In The Year 2525 (ZAGER & EVANS)>


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