「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2003-03-02(日)

2003年2月27日(木) 渋谷 ON AIR WEST 【ツアー2003「修羅囃子」】
18:00開場 19:00開演

【レポート】

 1年ぶりの新譜ツアー最終日、予想されていた雨は降らなかったものの冷たい風が吹き、体感温度は低い天候でした。当日は運良く、あるいはなかば意図的に近所で仕事をしていた私は、開演30分ほど前に会場に到着することができました。
 ON AIR WESTの入り口階段を登り入場すると、いつもの場所に狭い販売ブースが無い…。もしかして全国ツアーですべて売り切れたのか?と思っていたところ、ホール内右側にちゃんと出店していました。ツアー関係の商品はTシャツ(S, M, L)、ポストカード(4枚組)、ピック(2枚組)。その横では新譜を含むCD類の販売。CDは『踊る一寸法師』『無限の住人』を除いて全部あり、ビデオももちろん揃っていました。
 客待ちのBGMは'60年代のローリング・ストーンズ。曲順から判断してたぶん最近のベスト盤『フォーティー・リックス』をかけているのでしょう。「悪魔を憐れむ歌」の執拗に繰り返される「フーッフ〜ッ」という裏声コーラスを楽しみつつ開演を待ちます。

 BGMがフェイドアウトして静かになると、かすかに地鳴りのような音が聞こえます。しだいに音が大きくなるにつれ、和太鼓の連打であることがわかります。同時に客電も落ち、音楽も囃子になると、すぐに一人ずつメンバーが入場。和嶋氏が登場すると、そのいでたちに観客席から驚きとも笑いともつかぬどよめきが起きます。動揺に追い討ちをかけるように赤い照明が目まぐるしく明滅し、開幕曲「鬼」の演奏が始まります。
 今日の鈴木氏は黒い和服、袖には赤い炎(人魂)?の模様が描かれています。和嶋氏と後藤氏はアルバムジャケットと同じいでたち。後藤氏はアメリカの象徴「アンクル・サム」の衣装で、ズボンも光モノというハデさ。しかし顔は黒塗りなので、いつもの般若の形相がわかりにくいです。和嶋氏は振り袖(と言うには袖が短いので留め袖?)に丸髷(もちろんヅラ)の町娘姿で、前回ツアーでの宇宙服をはるかにしのぐインパクトです。
 曲は続いて前々作より「みなしごのシャッフル」。しばらく聴いていなかったせいか、新鮮な印象。しみじみといい曲であることを確認しました。演奏もメンバー3人の息が合ってきた感じです。
 次は「侵略者 インベーダー。アルバムのアレンジよりもタイトなリズムでの演奏。そしてもちろんギターソロでは、出た!テルミン音! 最近この音を聴かないとライヴを見た気がしなくなっています(笑)。

 ここで鈴木氏の挨拶とともに最初のMC。この間、マスヒロ氏は青い上着を脱ぎ、シャツを腕まくり。ラメのチョッキを着込んでいました。顔の黒塗りはマイルス・デイヴィスで、黒人のパワーを手に入れたかったため、ということです。
 和嶋氏はといえば、自分の服装は“花魁・菖蒲太夫”(「人面瘡」の歌詞より)をイメージしたものだとのこと。着物だと柄が派手で目立つのと、ライティングによって模様が変わって見えるので、意外とステージで映えることがわかりました。しかし尋常でなくギターの上手い、眼鏡をかけた(おまけに胸の無い)花魁というのも、かなり不気味な存在です(笑)。
 鈴木氏は、BURRN!の『修羅囃子』レビューに「後半は息切れ気味・からまわり気味」と書かれたことを気にしているようでしたが、次はその後半曲から「王様の耳はロバの耳」。MCで、周囲からあまり良い評価がない、との発言が続いていましたが、個人的には唄・歌詞・リズムのいずれもが力強く進んでいくような乗りのある、すごくいい楽曲だと思うんですが…。和嶋氏はBメロの辺りで身体を左右に揺らして楽しそうに演奏していました。最後の部分では、鈴木氏はキッス「ラヴィン・ユー・ベイビー」のコーラスを一節唄っていました。

 次はおそらく今回のツアーで人気No.1と思われる「野球野郎」。いつのまにか後藤氏のシルクハットが野球帽に変わっています。コーラス部分では観客も一緒に手を振り上げワン、ツー、スリーとアウトカウントをとり、バッター・アウト! 中間部では、鈴木氏がピッチャー交替のお知らせ。「ピッチャー和嶋に代わりまして、後藤マスヒロ、背番号510」(510=ゴトーだったのか…)。後藤氏は左手と足でリズムを刻みながら間合いをはかって、右手でボールを1球ずつ客席に投入。さらに最後のサビでは、アルバム収録時のコーラスに参加したローディーの川端氏がステージに登場し、和嶋氏にかわってカウントの振り付きコーラスを付けるなど、実に楽しい雰囲気の演奏でした。

 MCでは、気になる鈴木氏の体重の話題。最近のライヴでは、なぜか腹に触れたがる観客が増えているとのこと。触ると子宝・安産の効能がある、とのことでした。
 次の曲は鈴木氏が唄う「芋虫」。トレモロをかけたベースから、スライドギターが絡むイントロは良かったのですが、歌い出しからいきなり歌詞を忘れていた鈴木氏。しかし和嶋氏のテルミンソロのあと、テンポチェンジ以降ではしっかりと持ち直していました。この曲も久しぶりに聴きましたが、ピンク・フロイド風の中間部から終盤にかけての演奏が堪能できました。

 和嶋氏がアコースティック・ギターに持ち替え。着物のため「かしまし娘ではありません」と一言クギをさす和嶋氏。それでも芸人の血が騒ぐのか、メンバーにちなんだ辛辣な歌詞でテツ and トモの「なんでだろう」を披露、合いの手にビブラスラップで「カーッ!」という効果音を入れる後藤氏、つられて踊りだす(ホントは踊りたくなかった)鈴木氏に場内爆笑。
 アコースティック・ギターといえば、次の曲はもちろん青森県民の霊地「恐山」。ギターと唄の真摯な響きに、鈴木氏の掛け声もよくマッチしています。

 次のMCでは1音半下げの楽器に持ち替え、人間椅子恒例、お待ちかねの重暗曲コーナー。次の曲「東洋の魔女」にちなみ、日本女性の黒髪の魅力について語る鈴木氏。しかしその鈴木氏の頭はかなり白髪が目立ってきています。
 ということで、蜘蛛の縦糸黒髪の「東洋の魔女」。イントロの最初のリフから圧倒的な音圧で、ファム・ファタール的な女性像を描きだします。
 前作より「見知らぬ世界」。前の曲とは打って変わって、1音半下げでありながら眩い世界観。
 一気に過去に戻って2枚目よりベースとドラムスの重低音とワウペダルのリフが印象的な「太陽黒点」。中間部のテンポチェンジ部分では和嶋氏のかつらが脱げてしまいますが、かまわず演奏。

 ちょっと休憩のMCで鈴木氏は、この1音半下げコーナーを「初めて来た人が次のライヴに来るかどうかの分かれ目」「踏み絵のようなコーナー」と評します。重暗曲の3連発後もまだまだ続きます。
 和嶋氏のギターのフィードバック音に重なるように重くゆっくりとしたリズムで「相剋の家」を演奏。そしてエンディングの余韻の中、ギターとベースのみで「ブラック・サバス」の静かなリフ。そして「死神の饗宴」へと続いていきます。間髪を入れず特異なリズムのリフの「黒猫」。3部構成、全1曲のような構成でした。

 今回は6曲と長目の踏み絵コーナーを終え、通常チューニングの楽器に持ち替えます。ここで律義に再びかつらを着ける和嶋氏。
 地元紙の東奥日報では、木村拓哉、モーニング娘。を左右に従えて真ん中に記事が載った人間椅子。そのおかげか青森と仙台では集客もよく、特に青森では男子率98%(?!)を記録、骨っぽいライヴを展開したようです。
 突然和嶋氏が、ドラえもんがいたら何をするか、という話題を出します。鈴木氏は「暗記パンで歌詞を覚える」とかなり現実的かつ切実な願望。和嶋氏はドラえもんとタイムマシンで吉原に行き、菖蒲太夫と一夜を過ごす(ドラえもんは大門の前で待たせておく)…という前振りで、次の曲は「人面瘡」。演奏時の和嶋氏の激しいアクションで、再びかつらが落ちてしまいます。
 続いては「幸福のねじ」。ツアー疲れか、2曲つづけてのボーカル曲で脳の酸素が不足したのか、高音の唄を一部観客に託す和嶋氏でしたがなんとか完奏。
 次は鈴木氏ボーカルの「地獄」。中間部では久しぶりに鈴木氏が口から血糊を吐くパフォーマンスを見せていたようですが、照明が暗くて、気づいたのは演奏終了後の挨拶のとき。その瞬間を目撃できず残念です。
 これにて演奏を終了し、拍手の中メンバーは退場します。

 アンコールでは、鈴木氏はアンコール用のリッケンバッカーに持ち替えていましたが、和嶋氏と後藤氏はやはりツアー衣装が暑かったのか、着替えています。和嶋氏はツアーTシャツの上にオレンジ色のハッピを羽織っています。襟に「おこせ火」という謎のメッセージが。後藤氏はいつもの黒ランニング、下はラメのパンツのままです。
 MCでは、事務所がなくなりセルフ・マネージメントになるという衝撃の発表がなされていましたが、5月16日(金)にまた渋谷ON AIR WESTでライヴをやるなど、今年はライヴを増やすということで、ファンも一安心といったところです。
 アンコール1曲目は和嶋氏の異色作「愛の言葉を数えよう」。イントロで手拍子、掛け声の観客の乗りにあわせ、和嶋氏も水を得た魚のようにステージ狭しと飛び跳ねていました。終盤の“ベッドで〜”から、耳に手をあてて促す和嶋氏に続いて客席も復唱。“お風呂で〜”“宇宙で〜”というコーラスが客席から帰ってくる様はシュールでした。
 すぐさま「ダイナマイト」へ突入。いつものライヴよりしっかりした演奏でした。さらに鈴木氏の「もう一丁〜!」という掛け声で再び10連荘から大当たり。

 2度目のアンコールでは、鈴木氏は学ランに着替え。腹のあたりはボタンは閉まっているものの、かなり厳しい状態。和嶋氏は昨年1音半下げ曲で使われていたサンバーストのミラージュに持ち替えています。鈴木氏の前振りから、三三七拍子で「地獄風景」。会場もゴールへ向かってまっしぐら。全19曲、これでようやく終演となりました。

 終演後のBGMは、「王様の〜」に触発されたのか、モーリス・ギブ氏追悼なのか、これぞまさしくディスコ・ナンバーのビージーズ「恋のナイト・フィーバー」(*)がかかっていました。
(*) daiske氏より、正しくはエレクトリック・ライト・オーケストラ「Last Train to London」とのご指摘がありましたので、その通り訂正させていただきます。(2003-03-02)

 総評ですが、演奏面でややミスはあったものの楽しいライヴでした。ツアー最終日ということでいろいろ演出もあったのかもしれませんが、「楽しむ気持ちが一番大事」(「野球野郎」より)という精神が十分に発揮されていたと思います。選曲も『修羅囃子』の収録曲を軸に、整合性のとれたセレクトだったのでは。重暗曲コーナーの曲数が多かったのは個人的にはうれしかったですが、その分エンディングに向けての乗れる曲が少なくなってしまったことに不満をおぼえる人がいたかもしれません。旧曲については、新譜ツアーということで、これ以上を望むなら今年の今後のライヴでしょう。個人的には「屋根裏のねぷた祭り」を聴きたいです。
 サウンド面では、いつものON AIR WESTということもあってバランスが取れたいい音だったと思います。1音半下げの曲ではさらに迫力が増していました。
 照明はまずまずといったところ。「修羅」というテーマのせいか、赤のライトが多かったでしょうか?

 今年はライヴが多く開催されるということなので、バンド側の意欲に応えて私もできるだけ参加したいと思います。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<修羅囃子?>
バット2 イーグル
みなしごのシャッフル
侵略者 インベーダー
<MC>
王様の耳はロバの耳
野球野郎
<MC>
芋虫
<MC> アコースティックギター
恐山
<MC> グレコ ミラージュ(白)
東洋の魔女
見知らぬ世界
10 太陽黒点
<MC>
11 相剋の家
12 死神の饗宴
13 黒猫
<MC> バット2 イーグル
14 人面瘡
15 幸福のねじ
16 地獄
<アンコール1> バット2 リッケンバッカー
17 愛の言葉を数えよう
18 ダイナマイト
<アンコール2> ミラージュ
(サンバースト)
19 地獄風景
<エンディング Last Train to London>
<備考>
 アルバム『修羅囃子』収録曲(新曲)


※ 作成者注:
終演後のBGMは、daiske氏より、正しくはエレクトリック・ライト・オーケストラ「Last Train to London」とのご指摘がありましたので、その通り訂正させていただきます。(2003-03-02)

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