「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2002-03-26(火)

2001年11月12日(月) 渋谷 ON AIR WEST 【ツアー2001 見知らぬ世界】ファイナル
18:00開場 19:00開演

【レポート】

6月14日の【木曜スペシャル】と同じく平日開催となった【見知らぬ世界】ツアーファイナル。今回も仕事を早々に終わらせて渋谷へ。昼間に降った雨も止み、また月曜日のせいか、街の人ごみもあまり気にならず、滞りなくON AIR WESTへ到着できました。
まずは入り口の販売物をチェック。期待していた【見知らぬ世界】ツアーTシャツは今回も見当たらず、さびしい限り。その他のグッズ類も前回と変わらず。
場内を見ると、さすが平日、前回ライヴに比べ集まりがいまひとつ。2階席も今回は開放していません。しかし開演時間が近づくにつれ、場内の空きが埋まっていきました。 開演待ちのBGMは、今回も何だかわからず。ジャンルは一応ハードロックですか?
入場時にもらったチラシをチェックすると、来年1月23日にプロモーション+ライヴ映像ビデオ『見知らぬ世界』発売、それに合わせて1月末から2月にかけて発売記念東名阪ツアーがあるとのこと。とりあえず来年の活動予定が明示されたことに安心しました。
待ち時間を利用して本日の1曲目を予想します。ツアーファイナルということもあり、前回同様「見知らぬ世界」あるいは曲順を入れ替え「死神の饗宴」で無難に始めるのでは?との意見に対して、同行者は唐突に「晒し首」と予想。

開演時間となり、ステージからスモークの煙が漂い出すと、観客の期待も高まってきます。BGMがフェードアウトするとすぐに、今年のテーマ曲「矢追純一UFOスペシャル」の重々しいリズムが打ち鳴らされ、メンバーが入場、歓声の中で楽器のセッティングを行います。 ステージの照明が点灯し、開幕曲は『無限の住人』から「晒し首」です。毎回のことですが、私には1曲目が全然予想できないです…。
本日のメンバーの衣装は、和嶋氏はすでにお馴染みとなった宇宙服。もちろん無線機も背負っています。 鈴木氏は浴衣っぽい和服で、個人的にはたぶん今回初めて見た衣装だと思います。白に近いクリーム色の地に、からたちの枝のような黒い縞が入っています。 後藤氏は、ツアー用のオートバイ兵の恰好。ちなみに10月のジェラルドのライヴでも、この衣装を着用でした。
今回のトピックは、和嶋氏のギターがトレード・マークのSGでなく、エピフォンの「モダーン」であったことでしょう。ギブソン社の同名モデルのコピー版ですが、フライングV、エクスプローラーに通じるビザールな感覚が和嶋氏の心に響いたのでしょうか? サウンドはSGより低音が出てハードな印象ですが、中音域はSGの方が抜けた音が出て良いかな?
2曲目は前作『怪人二十面相』から「みなしごのシャッフル」。昨年の新譜ツアー時同様、和嶋氏の堂々とした唄いっぷりが堪能できます。
ユーライア・ヒープ風の2曲に続いて、新譜から「侵略者 インベーダーへ。新ギターの音質とドラムスの2バスのリズムの効果か、CDで聴くよりはるかに凶悪なリフを刻んでいます。和嶋氏のテルミン・ソロもワイルドで、より侵略度の高いインベーダーの来襲でした。

鈴木氏の挨拶から、最初のMCに入ります。和嶋氏は早くもヘルメットを脱いでいます。 鈴木氏が本日の観客の入りを見て、「今日はおそらくリキッドルームの『特撮』に流れたんでしょう…」とコメント。特に今夜は橘高氏がゲスト出演とのことで、筋肉少女帯系のファンはやはりそちらに行くでしょうねぇ…と納得。
「今日は曲も多いので、最初から飛ばさないでゆったり行きます」と言いつつ、次の曲は殺伐とした歌詞の「人喰い戦車」。この曲も後藤氏の2バスの音圧がすごいです。 次も新譜から「悪魔大いに笑う」を演奏します。ギターはCDではテレキャスターを使用したとのことですが、モダーンも割と軽目の音が出せるようですね。和嶋氏の唄は、好青年を装った悪魔ぶりでした。

次のMCは和嶋氏の番。気になる新ギター、エピフォン・モダーンの紹介です。MADE IN KOREAのこのギター、直線的で独特のボディはもちろん、特にヘッド(糸巻きの部分)の形状が日本的で気に入っているとのこと。三味線のバチに似ています。
「次は日本的な曲を…」という導入で、アルバム・タイトル曲「無限の住人」を演奏。以前はダブルネックでやっていた曲ですが、エフェクターの効果もあり、無理なく聴ける演奏でした。やや短縮したアレンジになってましたか?
一気に初期に遡り『人間失格』から「桜の森の満開の下」。ワウペダルを駆使したブラック・サバス的リフが、なぜか懐かしい味わいでした。最近演奏してませんでしたか。不意にこの曲が演奏されると、こちらも初心に返るような心地がします。
MCでは、「『桜の森の満開の下』を演奏していて、まだプロになる前のインディーズ時代を思い出してホロっときてしまいました」と鈴木氏。「走馬灯のようなライヴですが、まだ解散はしませんよ」との発言もありました(もちろんです!)。

鈴木氏のMCの間に、和嶋氏がサングラスをかけています。いつのまにか後藤氏も、首から下げたオートバイ用のゴーグルを装着しています。 しかし和嶋氏のサングラス、実は眼鏡に青いセロファンを貼ったもの。鈴木氏の「サングラスくらい買えば…」との突っ込みに、「サングラスだと度が入っていないから見えない…」と和嶋氏が弁明します。
このサングラスはつまり本日のゲストの前フリで、準備が整ったところで本日のゲスト、みうらじゅん氏が登場しました。ギターはワインレッドのグレコ・ワッシュバーンを下げています。これはおそらく昨年5月に見た、和嶋氏がグレコから提供を受けたというギターでしょう。
みうら氏が出てきたら、まずはこの曲「とんまつりジャパン」。しかし私は、この曲が1音半下げでないことに、この日はじめて気が付きました…。
MCでは、当然みうら氏の独壇場となります。みうら氏の現在のマイ・ブームはズバリ<リメンバー童貞>、そして人間椅子の新譜『見知らぬ世界』についても「童貞の匂いがした」とのこと。 次の曲もみうら氏の手になる唄、みうら氏提唱の<半童貞>を体現した「うたいびとは??」(曲名不詳)を演奏。途中でみうら氏が歌詞を忘れ、やり直しもありましたが、フォーク調の唄い出し部分と、途中からバンドの伴奏が入る部分で印象ががらりと変わっていました。
(※注) YEN氏の情報によれば、曲名はみうら氏のサイト(http://www.r-sliders.com/mj.html)より「エンプティ・サマー」とのことです。(2002-03-26)
みうら氏は青森通で、和嶋氏との青森談義はローカルな固有名詞が飛び交う、かなり濃い内容でした。 というわけで曲はお馴染みの「りんごの泪」。中間部の語り〜唄はみうら氏が担当し、おもむろに取りだしたカンニングペーパー片手に熱唱。 しかし慣れないステージなのか、前2曲でトチっていたみうら氏に「リハーサルと全然違う…」と鈴木氏も苦笑していました。

ここでみうら氏は退場し、ゲスト・コーナーは終了、1音半下げの楽器に持ち替えて重暗曲コーナーへ突入。
まずは鈴木氏のイメージするお嬢様の“野バラの匂い”が歌詞に織り込まれた「魅惑のお嬢様」。アルバムとは一味違った華やかな演奏でした。ステージも、バラを思わせる緑と赤のライトで照らし出されます。 次は後藤氏ボーカルの「そして素晴らしき時間旅行」。背徳的なサウンドに戦慄します。 後半は自前でエコーをかけるなど、ヴォーカルにも余裕が感じられました。
途中のMCで、和嶋氏からビデオ『見知らぬ世界』の発売が告知されます。来年1月23日発売予定とのこと。内容は、タイトル曲のプロモーションビデオ(PV)のほか、幻と化していた「幽霊列車」のPVに加え、昨年の田舎館村ライヴ演奏曲を多数収録し「お買い得です!」と宣伝にこれ努めていましたので、皆さん買いましょうね。
そして和嶋氏の自信作「見知らぬ世界」。和嶋氏の確信に満ちた唄と演奏は、前回と全く変わらず。 続いて『頽廃芸術展』から、久しぶりの「菊人形の呪い」を演奏します。個人的に大好きな曲、そしてちょうど秋の菊の季節でもあり、十分に堪能させてもらいました。ただ、2曲続けて和嶋氏の唄だったせいか、「菊人形〜」ではボーカルがやや息切れしてたかな?  次はようやく鈴木氏ボーカル曲で、前回ライヴでも演奏の「死神の饗宴」。「見知らぬ世界」と表裏一体の作品だけに、必ずペアで演奏されるのでしょうか。
以上5曲で重暗曲コーナーを負え、通常チューニングの楽器に戻ります。和嶋氏は今度はいつものSG、バット2を手にしています。

MCでは、和嶋氏が「今日入口で配られたディスクガレージのパンフレットの表紙の絵は僕が描きました!」と発表。この慶事にあわせて、和嶋氏が原稿用紙を取り出し、絵のテーマを説明した「僕のゆめ」(和嶋慎治、35歳)なる作文を朗読。ダース・ベイダーに日本の文化を教える…という変な夢です(絵と作文は、オフィシャルサイトでご覧ください)。
「日本の文化」というキーワードから、「吉原の花魁が出てくる唄です」という導入で、デビュー時の代表曲「人面瘡」を演奏。 続いてこれも初期の曲「あやかしの鼓」。お馴染みの曲のせいか、会場のノリも最高潮です。 最後に『無限の住人』からの3曲目「地獄」。中間部の時報部分では、和嶋氏がスライドバーを使ったフリーなギターソロを熱演します。 以上で本編を終え、メンバーは退場します。

アンコールの拍手と歓声の中、着替え終えたメンバーが再び登場。 和嶋氏は10周年記念Tシャツ、ギターはバット2。鈴木氏は学ランを羽織り、ベースはアンコール用と化した感のある黒いリッケンバッカーに持ち替えています。後藤氏は、袖のあるTシャツから、同色のランニングのシャツに着替えています。
アンコール1曲目は、前回と同様に新譜マイナー曲かと思いきや、超メジャー曲「天国に結ぶ恋」。この曲も人気が高く、会場は再度興奮の坩堝へ。 続いて新譜のスラッシュ曲の「棺桶ロック」を演奏。後藤氏の2バスがうなる高速の曲を終え、再びメンバー退場。

2度目のアンコールでは、鈴木氏、和嶋氏ともに宇宙服を着用して登場。和嶋氏のギターは先ほどみうら氏が弾いていたグレコ・ワッシュバーンに変わっています。
ここで来年のライヴ予定として、2月12日、ON AIR EASTでのイベント出演の告知がありました。夜叉、犬神サーカス団、特撮とともに出演とのこと。なかなか面白いカップリングのイベントで、メンバーも楽しみにしている様子でした。
和嶋氏は宇宙服のフードを頭まで被り、その姿はまるで銀色のストレッチマン。ストレッチマンもストレッチ星からやってきた宇宙人とのことなので、類似していても当然でしょうか。 鈴木氏は和嶋氏お古の宇宙服を豪快に着こなしていました。しかし体型的にかなり無理がある様子。 両人とも「今年最後の曲がこんな恰好でいいのか?!」と反省気味ながらも、鈴木氏の三三七拍子の掛け声から、「地獄風景」を演奏。 疾風怒濤の演奏、全21曲(!)を終え、メンバー紹介。「ドラムス、後藤マスヒロ!」「宇宙人1号、和嶋!」「宇宙人2号、鈴木!」。この後演奏側も観客側も今年最後となるステージのなごりを惜しむかのようにピック投げ、握手などがしばし続いたのでした。

総評ですが、良いライヴであったと思います。 前回のライヴが、選曲面も含め完成度が高かったという印象があったのに対し、今回はゲスト参加もあり、ライヴの統一感を出すのが難しいのではないか…と予想していたのですが、それを逆手にとって、ゆったりとした進行、かつ「新譜ツアー・ファイナル」という枠組みにこだわらない選曲で楽しませてくれた気がします。1曲目予想ではないですが、人間椅子のライヴには予想できない楽しさがあります。
10年以上活動を続けていれば、選曲も難しくなってくると思いますが、デビュー当初の曲がノリが良かったという事実からみて、選曲で1枚目の曲が多用される傾向があるのかもしれません。とはいえ埋もれるには惜しい曲もたくさんあるので、今後も長期的に見てまんべんなくライヴで演奏してほしいと思います。
音響や照明は、ほとんどホーム・スタジアム状態のON AIR WESTなので、今回も十分満足いくものでした。この会場なら、今後もまず当りハズレなく楽しめる環境なのではないでしょうか。 照明はいつもより抑えた感じでした。頻繁に色が切り替わるよりも演奏に集中できたように思います。
今回は観客の絶対数が少な目でしたが、その分ステージが見やすかったです。客層は、前回は男子が増加した感じでしたが、今回は率が下がり、男女比が戻ったような状況でした。 それを裏付けるかのように、MC時やアンコール時の掛け声なども少なく、おとなしい印象でした。この日はやはり元気な人はリキッドルームの階段を登って「特撮」に行かれてたのでしょうか(笑)。

というわけで、バンド・スタッフ・ファンの皆様、今年もお疲れ様でした。来年も変わらぬ活動、よろしくお願いします。
以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング 矢追純一UFOスペシャル>
晒し首 エピフォン・モダーン イーグル
みなしごのシャッフル
侵略者 インベーダー
<MC>
人喰い戦車
悪魔大いに笑う
<MC>
無限の住人
桜の森の満開の下
<MC> 〜みうらじゅん氏登場〜
とんまつりジャパン
<MC>
エンプティ・サマー
10 りんごの泪
〜みうらじゅん氏退場〜 <MC> グレコ ミラージュ
11 魅惑のお嬢様
12 そして素晴らしき時間旅行
<MC>
13 見知らぬ世界
14 菊人形の呪い
15 死神の饗宴
<MC> バット2 イーグル
16 人面瘡
17 あやかしの鼓
18 地獄
<アンコール1> リッケンバッカー
19 天国に結ぶ恋
20 棺桶ロック
<アンコール2> グレコ・ワッシュバーン
21 地獄風景
<備考>
 アルバム『見知らぬ世界』収録曲
 みうらじゅん氏とセッション


※ 作成者注
YEN氏より、みうら氏の曲名が「エンプティ・サマー」との情報をいただきました。(2002-03-26)

情報・投稿・忠告・激励・罵倒メールは:ecag@st.rim.or.jp までよろしくお願いします。


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