「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2001-06-17(日)

2001年6月14日(木) 渋谷 ON AIR WEST 【木曜スペシャル】
18:00開場 19:00開演

【レポート】

昨年10月の【“地獄巡り”ツアー】から約5ヶ月ぶりとなるライヴです。今日は久しぶりに人間椅子らしい雨模様です。
傘の洪水のような渋谷の雑踏を抜け、18時半頃会場に到着しました。平日開催、それに本格的な梅雨空ということもあり、この時点ではまだ集まりは悪いか。しかし私のように仕事帰りのスーツはかなり浮いていることがわかりました…。客層は、やや男子が増えたような気がします。
開演待ちBGMはスペース・ロック物。ホークウィンド「Kings of Speed」などがかかっていました。曲名がわかったのはこの1曲だけですが。

開演の19時も回り、会場も混雑の度合いを深めてきます。BGMの終わりとともに客電が落とされ、一瞬の静寂のあと、開幕を重々しく告げるオープニングテーマが始まります。
今回のオープニング曲は、レッド・ツェッペリンの「レヴィー・ブレイクス」…と思いきや、ちょっと違うみたい。ということで曲名は不明です(ご存知のかた教えて下さい)。
暗がりのなか、メンバー3人が入場してきますが、和嶋氏のいでたちを見た観客からはどよめきが上がっています。

開幕曲は「遺言状放送」。初期のライヴを思わせる1曲目ですが、それより今夜はなんと言っても和嶋氏の衣装が凄い。宇宙服を思わせる銀色の上下を着込み、頭も銀色のヘルメットを装着。そして背中には、アンテナの突き出た黄金色の箱を背負うという異形のスタイル。ギターだけはいつものSG、バット2です。
対して鈴木氏は、紺あるいは黒地の渋い和服ですが、正面には竹林のトラ、背中には渦を巻く龍が描かれ、まさに龍虎相打つ図柄というこれまた派手な格好です。ベースはこちらも木目のイーグル。
最後の砦、後藤氏はいつもと変わらぬ黒ランニング。また少し髪が伸びたかな?

つづいて「刑務所はいっぱい」。UFO風のリフに、暴力的なベースが重なり、凶悪な囚人たちのイメージが幻視されるかのようでした。
息つく間もなく畳みかけるように「蟲」を演奏。こういった生理的な嫌悪感を催させる楽曲の表現は、鈴木氏の土壇場という感じです。

「足元のお悪い中、ようこそいらっしゃいました…」と鈴木氏が挨拶し、最初のMCとなります。
会場が土日に取れず、やむなく木曜日に公演となったことから、ツアータイトル【木曜スペシャル】となったそうです。このタイトルに刺激され、<木曜スペシャル>→<UFO特集>→<宇宙>ということで今回の和嶋氏のいでたちが生まれた模様。また、和嶋氏は実は宇宙人(ウンモ星人)であり、背中の金色の箱(引き出物のカステラ箱を利用か? 中身はエーテル体)は、氏が10時間かけて自作したテレパシーを増幅する“無線機”で、このMCもこの“無線機”で宇宙語を翻訳しているとの説明でした(笑)。また、銀色の宇宙服は東急ハンズで購入したとのこと。「最近は渋谷で宇宙服が買えるようになって進歩しましたね」と和嶋氏。

続いて鈴木氏のMCでは、待望の新譜『見知らぬ世界』が9月21日に発売が決定したとのこと。これは、入場時にもらった緑色のチラシにも記載されていました。しかし実際はまだレコーディングしておらず、この後の土曜日のライヴ後18日から開始、という事実も判明しました。

新譜紹介とくれば当然、次の曲は新曲のお披露目ということで「インベーダー」を演奏。アイアン・メイデン、ジューダス・プリーストにも同名の曲があり、ぜひ人間椅子でもやりたかった、という鈴木氏の作曲です。曲調は宇宙物ということでホークウィンド+UFOという感じでしょうか。歌詞の内容は、これまでの宇宙シリーズが地球の外に出ていくものであったのに対し、今回は地球外から侵入して来るというテーマ。ソロ部分は和嶋氏自作テルミンも聴けます。エンディングはインベーダー・ゲームの効果音を模したフレーズを採用していました。

続いてペースを変えて、後藤氏のボーカル曲「不眠症ブルース」を演奏。ルーズな雰囲気ながら、演奏の息はぴったり。
今日の会場は湿気と温度のせいか大変暑く、宇宙服も通気性が悪そうな素材で、さすがの宇宙人・和嶋氏も兜、もといヘルメットを脱ぎます。

次の曲も新曲「さよならの向こう側」。MCでは、まず和嶋氏が「いままでは後ろ向きの唄が多かったが、今回初めて勇気の出る唄を作ってみました」と説明。しかし鈴木氏は「ある意味、問題作ですよね」。
実際に演奏を聴くと、U2(もしくはポリス)風の曲調、歌詞にも渋谷系よろしく「〜だろう」というフレーズもあり、たしかにいままでの人間椅子には無い楽曲で、やはり問題作かもしれません。観客の反応も、やや戸惑いが感じられます。アルバムに収録されて全体として聴くとどうなのか、また歌詞を読んでみてから再度評価したいところです。

新曲から一転して最初期の曲「りんごの泪」へ。問題作に戸惑っていた観客も、いつものノリを取り戻したかのように踊ります。しかし、鈴木氏は2番の歌詞“ある夜〜”から唄い出しそうになり、次のMCで「11年もやっているのについ歌詞を間違えてしまう」と謝罪していました。

このMCでは、「芋虫」をエンディングテーマに採用したアダルトゲームについての話題がとりあげられます。楽曲の印税で、鈴木氏は消費者金融の借金を返すことができたとのこと。
「最近、僕は<芋虫度>が高いのですが…」という鈴木氏の導入で「芋虫」をじっくりと演奏。中間部では、スライドギター、普通のソロ、テルミンと変幻自在の和嶋氏のギターソロを堪能しました。

次のMCで、1音半下げの楽器(グレコSG、ミラージュ(色はナチュラル))に持ち替えます。和嶋氏のギターの持ち換え時には、いちいち例の“無線機”もかけ外さねばならないことに観客から失笑が漏れます。しかし和嶋氏は日本一アンテナが似合うギタリストといえましょう。なお細かいことですが、氏のグレコはピックアップ・カバーが外されていることを確認しました。
新譜は13曲収録予定ながら、歌詞ができているのはまだ半分で、鈴木氏は「もし発売されたCDが1曲少なかったら10時間もかけて無線機を作っていた和嶋君のせいだと思って下さい」と歌詞担当の和嶋氏にプレッシャーをかけていました。

重暗曲の最初は雅子様の「ご懐妊」にちなみ、ご成婚をモチーフにしたという「ブラウン管の花嫁」を演奏。久しぶりのライヴ演奏ですが、6月の梅雨寒にふさわしい肌合いの楽曲です。
続いて最近1音半下げで演奏されることが多い「心の火事」。間奏部のドラムスが冴えてました。

MCでは、F-1のジョーダンのテスト・ドライバーになった夢を見たという和嶋氏が、鈴木氏にギャンブルの話を振ると、「パチンコの唄はやらないで欲しい、という意見があったので…」と、鈴木氏はすっかり自粛ムード。さらに、もう今後はギャンブル曲は発表できなくなるので、ボツになった曲を集めてアルバムを作りたいと希望。「夢もふくらむ人間椅子ですが、次の曲はそれとは正反対の曲です」と和嶋氏の導入で「黒い太陽」へ。いつ聴いても、聴くものの心に重苦しくのしかかってくるような曲です。
続いて、アルバム『怪人二十面相』エンディング曲の「大団円」を演奏します。どうも終結的な雰囲気が漂ってしまいますが、ここは気持ちを切り替えて複雑な楽曲構成を堪能。

4曲と少なめな重暗シリーズのあと、再び通常チューニングのバット2、イーグルに持ち替えます。
鈴木氏から、新譜『見知らぬ世界』の発売に合わせ、9月30日(日)に渋谷 ON AIR WESTでライヴが決まっており、その後全国ツアー(スケジュールは未定)を行う予定、とのインフォメーションがありました。
また、レコーディングは7月20日までの予定で、そのあと8月まで弘前のねぷた祭りに浸るのが楽しみ、と鈴木氏。翻って和嶋氏は、特にねぷたには興味なしとのこと。やはり夏休みは工作に励むのでしょうか…。

次は本日のテーマ<宇宙>に戻り、「天体嗜好症」を演奏。スペイシー度なら「宇宙遊泳」ですが、より浮遊感の強いこの曲を持ってきたのは良かったと思います。観客も手拍子で応えます。
次はバンドの自己紹介ソング、「人間椅子倶楽部」。

一息おいて、「人面瘡」のゆっくりとしたアルペジオのギターが始まり、一瞬の歓声が静まった後、ハードなリフとともに観客もリスタート。
つづいて「地獄」へ直行。本日最もハードな演奏だったでしょうか。

ここでメンバーが退場しますが、アンコールの拍手の後、再び登場します。
和嶋氏はバンド10周年記念のTシャツ(みうらじゅん氏デザイン)に着替えて登場。
ギターはバット2ですが、ベースは、前回もライヴ後半で使用していたリッケンバッカーに変わります。

最初のアンコール曲「楽しい夏休み」の導入のMCでは、鈴木氏の甥(2歳)が“楽しいな〜”の部分によく似たフレーズを口ずさむとの逸話。和嶋氏は「それじゃ僕の音感は2歳児並みですか?」と応え、場内爆笑。
ライヴも終盤ながら、スピーディーな演奏。ブレイク部分の後藤氏の笛も決まっています。今回のライヴでは、後藤氏は人間椅子でもよりテクニカルな面を強調してきたような気がしました。

2曲目は「サバス・スラッシュ・サバス」。個人的にはちょっと意外な選曲で、イントロでは何の曲か判りませんでした。
この曲の後に来る恒例のブラック・サバスのカヴァーですが、今回は「Black Sabbath」の後半部分でした。「太陽にほえろ!」を思わせる曲調を丁寧に演奏し、最後の決めもバッチリ。和嶋氏も「人の曲で終わっていいんでしょうか?!」と言いながらも非常に楽しそうでした。ここで再びメンバーは退場します。

この後、もちろん再びアンコールに登場。楽器はそのままですが、鈴木氏は学ランに着替ています。しかしこの学ランは、いまの鈴木氏の体形にはかなり苦しい様子。デビュー時から比べると20kg以上の重量増で、「デビュー時はリッケンバッカーは重いと思っていたが、いまでは紙飛行機のように軽く感じる」とのこと。
その鈴木氏の三三七拍子の掛け声から「地獄風景」を演奏します。高速ながら破綻のない演奏で、観客も大満足の様子でした。

これで本日の演奏を終了。挨拶のあと、鈴木氏はひとしきり気合いを入れ、ステージを左から右へ握手して回っていました。
私はといえば、久々の立ち見ライヴの上、当日昼間の慣れない立ち仕事がたたって、終演時は足腰が崩壊状態でした。

今回のライヴの総評です。
久しぶりのライヴで、ちょっと演奏側も聴衆側もぎくしゃくしていたような気がしました。特に前半は新曲も織り交ぜて、選曲が難しかったことがあると思います。ただ、「芋虫」あたりから徐々にペースを掴み、重暗曲を経て、「天体嗜好症」からは完全復調という感じでした。
重暗曲が4曲だけだったのは寂しい限りでした。次回は重暗曲の新曲をぜひ聴きたいですね!
今回は、最近の終盤の選曲としてはおとなしめだったでしょうか。あと1曲くらい(「戦慄する木霊」とか)演奏するかと思っていたのですが。

音の面では全般的に均衡のとれた、きれいな音という感じを受けました。
最初はギターの音がやや小さめかな?という気がしましたが、中盤からはあまり気にならなくなりました。
ベースは音量、音質ともにちょうどよかったと思います。ただ、体調が良くなかったのか、鈴木氏の唄は後半はちょっと辛そうにみえました。
ドラムスは全く問題なく、安心して聴けました。欲を言えば、アルバムのサウンドと比べてしまうと、やはりロートタムだと音が軽すぎるように思います。ライヴ用ということを考えると致し方ないですが。

照明は、観客席に向かって光るライトでステージが見づらい時があった点を除けば、おおむね良好でした。特にステージ上にスモークが焚かれた時のライティングは幻想的で良かったです。

16日のイベントの後、いよいよ新譜のレコーディングとのことで、バンドにとってはいいトレーニングになったのではないでしょうか。良い演奏で録音されることを期待しています。その前に和嶋氏の作詞は間に合うのか心配ですが…。
もちろん秋の新譜お披露目ツアーも楽しみです。これに備えて、私も夏は足腰を鍛えようと思います(笑)。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング ?>
遺言状放送 バット2 イーグル
刑務所はいっぱい
<MC>
インベーダー(*)
不眠症ブルース
<MC>
さよならの向こう側(*)
りんごの泪
<MC>
芋虫
<MC> グレコ ミラージュ
ブラウン管の花嫁
10 心の火事
<MC>
11 黒い太陽
12 大団円
<MC> バット2 イーグル
13 天体嗜好症
14 人間椅子倶楽部
15 人面瘡
16 地獄
<アンコール1> バット2 リッケンバッカー
17 楽しい夏休み
18 サバス・スラッシュ・サバス
 〜Black Sabbath(BLACK SABBATH)
<アンコール2>
19 地獄風景
<備考>
*)新曲


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