「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2000-07-12(水)

2000年7月9日(日) 横浜 Club 24 【ツアー2000『怪人二十面相』】
17:30開場 18:30開演

【レポート】

ついに始まった2000年の新譜ツアー。台風3号の直撃も心配されていましたが、7月8日の千葉LOOKからツアーも無事開幕した様子でなによりです。
到着したのは開演15分ほど前でした。ツアーTシャツを買ったりウーロン茶を飲んだりしながら開演を待ちます。

物販ブースは、会場内の観客席後部に設置されていました。ブツは、まずメルダックから出ているCDとビデオ。もちろんシングルビデオ『怪人二十面相』もあり、このビデオの購入者にはポスターの特典が付いているようでした。前日にすでに某有名CD店で購入済みの私には辛い仕打ちでした(笑)。
Tシャツは2種類、アルバム『怪人二十面相』のジャケットの絵柄のものと、広告用写真(鈴木氏が建物の上に覆い被さっている)のものとありました。色はどちらも黒です。この他、ピック2枚入りセット、お札ステッカーが販売されていました。

会場は中学校の近くのビル地階にあります。しかし通常のライヴハウスのように天井は低くなく、2階分はありそうな容積です。また、観客席とステージの奥行きが浅く、ステージが大変近く見えます。

機材チェックなどの都合か、開演時間18:30から15分ほど遅れて暗転。オープニング音楽はこれまでと違い、映画音楽(?)風のものです。大声援の中、舞台左手の鈴木氏が木目のイーグル、右手の和嶋氏がバット2を手にし、期待通り「怪人二十面相」で開幕! 開幕にはやはりこの曲のイントロが似合います。観客も最初からノリノリ。

今日のステージ衣装は、鈴木氏が黒いサテン地の和服に赤の帯。後藤氏は白シャツにサスペンダー、首からは赤い紐でサンバホイッスル(?)を下げています。和嶋氏は、薄青のシャツに灰色のチョッキ、ピンク地にドット模様のネクタイです。全体としては新譜の配役を踏襲したものでしょう。

続いて新譜と同じ曲順で「みなしごのシャッフル」。和嶋氏のボーカルはCDで聴くよりも数倍力強い唄声でした。バッキングもガッチリと破綻ない演奏で盛り上げてくれます。
“みなしご”の余韻から望郷の唄「りんごの泪」へ。この曲はセットリストの前半にくることが多いですね。急行津軽の汽笛をイメージした(?)フィードバック音は今日も健在です。

「神奈川県民のみなさん、こんばんは!」という鈴木氏の挨拶から最初のMCが始まります。横浜市民でもある大越孝太郎氏の描いたジャケットの『怪人二十面相』。このジャケット画像を配したTシャツが会場で販売されているわけですが、鈴木氏曰く「CDのジャケットとは細かいところが違っていますので、探してみてください」とのこと。

「この曲の紹介はいつも『〜の大発明』と言いそうになってしまう…」という鈴木氏の紹介から、「蛭田博士の発明」。ステージ上の鈴木氏と和嶋氏のリズムに合わせて、観客も右に左に首を振ってます。後藤氏の動きは上を下への〜を担当。そういえばこの曲も新譜の曲順に倣っていますね。 鈴木氏の白目をむいたボーカルは、まさに蛭田博士の狂気を体現。CDよりもワイルドなギターリフも印象的でした。

前曲からオルタナ系連発か?「九相図のスキャット」。観客のみなさんも良く予習しているようで、最初から手拍子を打ってきます。これにつられて和嶋氏もリフを弾く手をギターから離して手拍子。個人的には久しぶりに聴けて新鮮な曲でした。

ここで再びMC。鈴木氏のベースに使用しているトレモロ・エフェクターは、和嶋氏が製作してくれたものとのこと。温かい友情、いいお話です。が、和嶋氏はこの代償として借金の棒引きを要求、というウラも。

次はベース音にそのトレモロを使用した曲の「芋虫」。情念的な唄と演奏をじっくりと聴かせます。アルバムで聴くのとはまた違って、目の前ステージでの再現は、より物狂おしく圧倒的な魔力があります。
個人的な興味は、ライヴ時にはギターソロの後のテルミン音をどう表現するか?でしたが、ステージを見た限りでは、手もとにはテルミンらしき機材はなく、足元で何やら操作してあの音を出している様子でした(翌日購入したヤングギター誌8月号によれば、やはりエフェクターでテルミン的な音を出した、とのことでした)。

前2曲の凄惨な雰囲気からガラリと変えて「不眠症ブルース」へ。これは正直言って意外な選曲でした。後藤氏ボーカルの曲は当然あるとしても、「亜麻色のスカーフ」だと思っていたので。あるいはライヴ会場によって変更するのかもしれません。
間奏の効果音的ギターなど、演奏自体は申し分ないものでしたが、コーラスが入らなかったのが、ちと不満でした。

ここで1音半下げ曲のために楽器替え。鈴木氏は2000年5月のツアーから使用している木目のミラージュ、和嶋氏はグレコへ。
曲は和嶋氏の「次はネガティブな呪いの唄…」という導入から、「菊人形の呪い」を演奏。他の曲もさることながら、この曲のギター音はずば抜けて良く、季節外れな選曲であることを全く感じさせない好演でした。

続いて「ダンウィッチの怪」。展開部における、後藤氏の銅鑼のスタンドフレームまで使った、キング・クリムゾンのジェイミー・ミューアを思わせるプレイは聴きどころ、見どころでした。が、曲としてはそれほどの盛り上がりはなかったように思います。
そして今日は何曜?「暗い日曜日」。人気曲ということもあり、最初から乗る観客を見て、和嶋氏も心から嬉しそうな表情。ギターソロではステージ中央に出て観客をますます煽ります。

重暗曲は少なめと言える3曲で終了し、通常チューニングの楽器に転換します。
MCでは、現在の鈴木氏のマイブームである「ポケモン」と「遊戯王」の話題。「『遊戯王3』は弘前で予約しました」と言う鈴木氏に対し、リハーサル前に鈴木氏がスタッフのお子さんとポケモン/遊戯王の話題で盛り上がっており、アットホームな雰囲気で「朗らかな笑い声が響いていた」と和嶋氏。しかしメンバー間では鈴木氏以外はゲームにはあまり熱心でないようで、鈴木氏は「ツアー中に対戦しましょう!」と啓蒙していました。

終盤戦スタート。横浜が舞台かもしれないという紹介で、ようやく「名探偵登場」。今日の和嶋氏は明智小五郎風のいでたちですが、これがわざわいしたか、暑くてだんだんと疲れが増してきた模様。しかしこの曲はリフ、ソロとも要所を締め、ボーカルも力強い「なのだ〜!」でがんばってくれました。

続いて1stアルバムから「あやかしの鼓」。前曲が軽めの小品であったせいか、予測以上の重厚な印象を受け、土着的なパワーに圧倒されます。
次は、横浜の波止場はぬばたまの〜「人面瘡」。この唄、実はご当地ソングだったんですね… 横浜は3番の歌詞ですが。
後半戦の定番になった観のある「地獄」で観客の熱狂も最高潮へ。

ここで楽器を1音半下げのものに転換、盛り上がりを寸断。
和嶋氏の「本日はご来場ありがとうございました…」というアナウンスに導かれた最後の曲は、かくて「大団円」。出囃子リズムに始まる、ドラマチックかつ力技的な展開を丹念に聴かせます。
通常のライヴ後半での、一直線な盛り上がりとは異質な終わり方ながら、不思議と充足感のある締めくくりでした。

しかし満場の拍手のあとは当然のごとく「アンコール」!!
再び登場する3人。後藤氏はいつもの黒ランニングに着替えています。和嶋氏が「タオルと間違えて、マスヒロのシャツで顔を拭いてしまいました…」と告白すると、後藤氏は首に下げた笛で警告! 和嶋氏もさすがに暑かったか、チョッキを脱いでネクタイを弛めています。そんな和嶋氏の風体を評して、鈴木氏は「明智探偵というより、ただのサラリーマンだな」と失笑。

一息ついたところで、アンコール1曲目は「戦慄する木霊」。ストレートな曲調はアンコールにふさわしいものでしょう。
2発目はアンコール必須曲、「ダイナマイト」。後藤氏の2バス、和嶋氏の高速ギター、そして鈴木氏の連チャン連呼が、場内を興奮の頂点へ一気に押し上げます。

バンドは再び退場し、再度アンコールの呼び声が高まります。
3度目の入場では、和嶋氏は「ソラミミストの安西さん」デザインというグレー地のTシャツに着替え、場内からは「カワイイ〜」との声がかかります。

本当に最後の曲は、団長・鈴木氏の仕切りで始まった「地獄風景」で、演奏もライヴのゴールへまっしぐら〜 和嶋氏はステージ中央でパンクっぽくジャンプ!
演奏後、鈴木氏によるメンバー紹介のあとに退場となり、終演しました。

私はすぐに帰宅の途につきましたが、すでに足腰が痛んでる状態。寄る年波を感じざるを得ません。近所に止めたバイクで帰っている人がいて、ライヴ会場から近くていいなあ…としみじみ思いました。

総評ですが、まず何といっても音がよかったです。初めての横浜 Club 24でしたが、音質的には文句のつけようのない出来ではなかったかと思います。また、私はだいたい7、8列目くらいから見ていましたが、それでも観客席からステージが近く、メンバーの表情まで伺えるのが良かったです。

ライヴの全体的な印象は、わりと平坦な印象を受けました。演奏する側も、いい意味で力の抜けた、ゆったりしたライヴであったと思いました。
従来のハイライト的な位置にあった「ダンウィッチ〜」には、それほど力点を置いておらず、むしろ6曲目の「芋虫」が本日の目玉曲と思われます。(個人的には「菊人形〜」がとても良かったのですが。)
これは新譜がコンセプト・アルバムであることを意識したライヴ構成であったためではないでしょうか? 新譜からの選曲は7曲。決して多いとはいえない曲数ですが、ライヴ全体として見ると、不思議と統一感があることに気付かされます。これは最後の曲「大団円」で全てを収斂させるという意図を持っていたという気がしています。

鈴木氏はツアー前にバイクで事故に遭ったとのことでしたが、何度もギター側に移動して盛んにアピールするなど、いつも通りの怪パフォーマンスを見せており、ひとまず安心です。とは言え、まだまだツアーは長いので、メンバー御一行様、健康にお気をつけて。
このごろ自作ファズに凝っているらしい和嶋氏は、今日のライヴでも数々の音色を披露、今後の楽しみが増えました。しかし、夏のライヴにワイシャツ、ネクタイというステージ衣装は暑くて辛そう。明智探偵も苦しいところだと思いますが、ライヴでも、省エネスーツって効果あるかな?
後藤氏のドラムはツアー用のセッティングでしたが、アルバムで聴いていた音と特に違和感はありませんでした。今日もライヴモード全開の音数を叩き出していました。しかしセットの位置がステージ奥で、私の立ち位置からはプレイの様子や新しい髪形がほとんど見えなかったのが残念。 服装は普段はランニングのところ、長袖シャツを着ているので、ライヴ後半は汗びっしょりで動きづらいかもしれません。和嶋氏も同様で、ステージングという意味では、これらの衣装は大変良い効果を上げているのですが、演奏に支障の出ないことを祈っています。

多少の懸念はあったものの、音、会場、お客さんの反応などライヴ環境の良さ、そしてバンドの演奏力は全く一流のものであると感じました。この演奏がツアーでさらに磨かれていくかと思うと、最終日の7月30日 渋谷 ON AIR EASTへの期待が高まってきます。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング ?(映画音楽?)>
怪人二十面相 バット2 イーグル
みなしごのシャッフル
りんごの泪
<MC>
蛭田博士の発明
九相図のスキャット
<MC>
芋虫
不眠症ブルース
<MC> グレコ 新ミラージュ
菊人形の呪い
ダンウィッチの怪
10 暗い日曜日
<MC> バット2 イーグル
11 名探偵登場
12 あやかしの鼓
13 人面瘡
14 地獄
<MC> グレコ 新ミラージュ
15 大団円
<アンコール1> バット2 イーグル
16 戦慄する木霊
17 ダイナマイト
<アンコール2>
18 地獄風景
<備考>
 アルバム『怪人二十面相』収録曲


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