「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:2000-05-21(日)

2000年5月14日(日) 渋谷 ON AIR WEST 【人間椅子】
17:30開場 18:30開演

【レポート】

昨年7月の10周年記念ライヴ以来の久方ぶりのライヴということで、緊張気味に当日を迎えました。午後からは晴れたり時折雷雨が降ったりと、まことに人間椅子らしいライヴ日和です。

会場に着いたのは開演10分ほど前。場内はすでに8割以上の入りです。最近の人間椅子ライヴは2階席で見ることが多かったので、今回はフロアの和嶋氏側のちょっと後に位置してみました。客層は男子率が上がったように思うのですが、以前から?

物販はCD、ビデオ、新譜『怪人二十面相』の予約販売でした。予約特典として、「お香」が付くとのことです。また、6月9日のイベントの会場分チケット、7月の首都圏ツアーチケットも先行販売していました。Tシャツの販売などは無し。 7月の『怪人二十面相』ツアーTシャツを待ちましょう。 また、入場時に配られたパンフの中に、『怪人二十面相』の曲目(12曲入り)とツアーの告知が書かれたチラシが入っていました。

パンク/ニューウェーブ風のBGMが終了して場内暗転、緊張の一瞬。スモークがゆらゆらと漂う中、オープニング・テーマとしてディープ・パープルの「スペース・トラッキン」が流れ、メンバーが所定の位置につきます。 開幕曲は最近作『二十世紀葬送曲』から「蟲」。衣装は、和嶋氏:甚平、鈴木氏:白い和服(龍の刺繍入り)、後藤氏:黒ランニングというおなじみのスタイル。楽器も和嶋氏:バット2、鈴木氏:お札イーグルと通常通り。ただ、後藤氏のドラム・セットに胴の無いロート・タムが使われており、後方には巨大な銅鑼が控えているのが目新しいところです。その後藤氏が観客を煽るかのようにドコドコとスピーディーなリズムを刻んでいきます。
続いてアルバムの曲順通りに「恋は三角木馬の上で」。中心はパンク風のギターリフですが、3拍子のスローな中間部では、和嶋氏が歌詞にあわせて揺り籃をゆらすようなアクション。
3曲目は最近作から一気に原点回帰か「りんごの泪」。いささか唐突な感もありましたが、10ヵ月ぶりのブランクを全く感じさせない演奏で、メンバーも観客も楽しそうです。

首のタオルが妙に板についている和嶋氏による、故池田貴族氏の墓参、墓碑銘談義などを交えながら、みうらじゅん氏のアルバム『青春ノイローゼ -1974〜1999-』に提供した「とんまつりジャパン」を演奏。和嶋氏が唄いましたが、みうら氏と声質が近いせいか違和感なく聴けます。もちろんCDで聴ける、♪吉例行事に麻痺してる〜 ギター音も忠実に再現されています。
続いて祭りシリーズ第2弾、ということで「血塗られたひな祭り」へ。この曲での鈴木氏のボーカルは、CDで聴くよりも鋭さを感じました。

次のMCでは、何を措いても6月発売の新譜『怪人二十面相』の話題。タイトル曲をテーマにした、初のトータル・アルバムということです。 その新譜からは「蛭田博士の発明」を演奏。ボーカルは鈴木氏です。蛭田博士とは、少年探偵団シリーズの第3巻『妖怪博士』の登場人物とのこと。前作『二十世紀〜』の路線を引き継いだ比較的ポップな曲調ですが、そこは人間椅子のこと、一筋縄ではいかない構成の曲に仕上がっている様子です。
「新譜からは小出しに」ということで、新曲「屋根裏のねぷた祭り」を、イントロのみを演奏。「もうこれで次の展開が判ったでしょう(笑)」と鈴木氏。しかし、「踊る一寸法師」「春の海」などに通底する人間椅子らしい重厚な曲調に、イントロを聴いただけでも、場内の観客は完全にノックアウトされた模様でした。みんな新譜を買おうねっ! 曲名について、鈴木氏、和嶋氏は地元ということもあり、弘前では“ねぶた”ではなく“ねぷた”!と強調していましたが、当日配布されていたチラシの曲名は“ねぶた”になってました〜

続いてこれも新曲、犯罪者の増加についての唄「刑務所はいっぱい」を和嶋氏が熱唱。「爆弾行進曲」あるいは「ギリギリ・ハイウェイ」風な曲調に加え、アナーキーな世界観の歌詞。20世紀最後の監獄ロックが期待できそうです。
新曲コーナーから突如「狂気山脈」へ移行。東京では久しぶりですが、完成された構成のこの曲をがっちりと演奏してくれます。 ラヴクラフトの宇宙的恐怖から「天体嗜好症」に。鈴木氏の唄にあわせ、観客もリズムに乗って手拍子。中間部、鈴木氏の抑揚を効かせたベース、後藤氏の小気味よいドラムスの中、和嶋氏のスペイシーなギターがよく鳴っていました。

MCの間にギターとベースを持ち替え、ローチューニング曲の準備となります。和嶋氏のギターはいつものグレコSGですが、鈴木氏の方は新しいミラージュ・ベースに変わっています。型はこれまでのミラージュと同一ながら、「色はナチュラル、ネックも太めに作ってもらいました」と鈴木氏は新しいベースにご満悦の様子。このベースは5月3日のジェラルドのライヴ時のチラシの写真に写っていたものと思われます。
さあ後半戦、曲は「黒い太陽」から。いつものことながら、この曲のリフと歌詞には圧倒されてしまいます。重く揺さぶりをかけるリズムから立ちのぼるギターソロ。鬱々とした人生にふっと浮上する破戒的な想念、というべきか…。
息つく間もなく本日のハイライト「踊る一寸法師」へ。中間部のフリーな部分での、鈴木氏の哄笑、和嶋氏のギター、後藤氏のパーカッションが絡み合う3人のインタープレイは、ライヴならではの迫力です。
そしてライヴが日曜ならこれしかない、の人気曲「暗い日曜日」を演奏。ノリやすいリズムで観客の反応も良好です。 しかしこれで重暗コーナー終了。再び通常チューニングの楽器へ転換。今回は重暗曲はちょっと少な目でしたね。

今度は、和嶋氏の新しいギターが登場します。 グレコGP3、ワッシュバーン・モデルです。フォルムはレス・ポール風、色はSGに近い赤色です。これも5月3日のジェラルドのライヴ時のチラシの写真に写っていたギターでしょう。
ここで鈴木氏がインフォメーションの告知。まず7月のツアーの他、9月と年末にもライヴを予定しているとのこと。これに加え、7月27日に神戸のイベントにも出演するとのこと。新譜関連では、収録曲「怪人二十面相」のプロモーション・ビデオ(鈴木氏=二十面相、和嶋氏=明智探偵、後藤氏=小林少年という配役)が製作され、15〜30秒のスポットCMも5月末から6月いっぱいまでテレビ東京で放映されるということです。フルバージョンもぜひ見たいですね。

新譜への期待が高まる中、「天国に結ぶ恋」から終盤戦へなだれこみます。和嶋氏の新しいGP3のサウンドはSGと近似しているようで、全く違和感はありません。 ただブレイク部分のフィードバック音の制御はSGと同様にはいかないようで、ちょっと中途半端だったかな? 
次は天国から一気に「地獄」へドライブという、ジェットコースターのような選曲で観客を振り回します。 最後は「エキサイト」。ハイスピードの演奏に合わせ、観客の動きも最高速にスピードアップ! 和嶋氏も最後のギターソロでいつもの背中弾きを敢行!

盛大な拍手と歓声の中、メンバーは退場。しかしすぐにアンコールの拍手と掛け声がはじまります。 その呼び声に応えてアンコール。ご機嫌な和嶋氏、ドラムセットへ向かおうとする「奇矯な行動!」(本人談)のあと、いつものバット2に持ち替えて、印象的なアルペジオの「人面瘡」を弾き始めると、観客も思わず耳をそばだてます。 続いて「ダイナマイト」! ♪2連チャン、3連チャン… の部分では観客も腕を振りあげて連呼、連呼。

これで満足するわけもなく2度目のアンコールがかかります。今度は「針の山」を演奏。この日の和嶋氏は調子が良かったのか、軽々とソロを弾きこなしていました。 演奏後の締めくくりとして後藤氏が何度も銅鑼を叩き、これがライヴ終了のゴングとなりました。

全体的な感想ですが、久し振りに「動く人間椅子」が見られてよかった〜! というのが素直な感想です。MCの時間もゆったりめで、雰囲気としては「気負いのない自然体のライヴ」という感じ。10周年を越えて、新たな境地に入ったのでしょうか?  どちらかというと、お客さんの方が興奮状態でしたね。10ヶ月分の熱気がこもった会場でした。

サウンド面では特に大きな問題はなかったように思います。ただ、和嶋氏のボーカルがちょっと聴き難かったかも? あと、鈴木氏のベース音はかなり大きかったです。 ステージは、後藤氏のドラムスが高い位置に据えられ、これまでより目立つようになりました。テクニックと気迫漲るドラミングは必見ですよ。後藤氏ファンも増えてきたようだし、「3人目のメンバー」から「フロントの一員」として認知されたということでしょうか。胴のないロートタムに変更したのも、後藤氏のアクションを見やすくするためなのかもしれません。音的には、以前より軽めの夏っぽい音になったように感じましたが。

選曲は最近作『二十世紀葬送曲』からの曲が多かったので、古くからのファンにとっては、もの足りない曲目だったかもしれません。しかし新譜の予告編的なライヴ、という位置付けとすれば満足のいくものだったと思います。既発のアルバムも8枚を数え、すべてのアルバムの代表曲を演奏しきれない、という現状もありますし。MCで発表していた通り、今年はライヴ予定が多いので、その中でいろいろな曲を聴かせてくれるでしょう。 とりあえず7月のツアーでは当然新譜の曲が中心となると思いますが、その中でどんな旧曲をどのタイミングで演奏していくか、というお楽しみもありますね。

総じて、人間椅子の安泰を確認したライヴでした。新譜とツアーも期待が持てます。どんな大団円が待っているのかな? オーディエンス諸君もがんばろ〜。

以上

【チケット】

チケット

【セットリスト】

SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング DEEP PURPLE「SPACE TRACKIN'」>
バット2 イーグル
恋は三角木馬の上で
りんごの泪
<MC>
とんまつりジャパン
血塗られたひな祭り
<MC>
蛭田博士の発明
<MC>
屋根裏のねぷた祭り(イントロのみ)
<MC>
刑務所はいっぱい
狂気山脈
10 天体嗜好症
<MC> グレコ 新ミラージュ
11 黒い太陽
12 踊る一寸法師
13 暗い日曜日
<MC> グレコ
ワッシュバーン
イーグル
14 天国に結ぶ恋
15 地獄
16 エキサイト
<アンコール1> バット2
17 人面瘡
18 ダイナマイト
<アンコール2>
19 針の山
<備考>
 人間椅子が曲を提供。みうらじゅん『青春ノイローゼ』収録。
 アルバム『怪人二十面相』新曲お披露目コーナー。


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