「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる |  最終修正:98-10-11(日)

98年10月09日(金) 渋谷 ON AIR WEST 【ツアー"怨念大納言"】
18:00開場 19:00開演

【レポート】
 久しぶりの平日のライヴなので、私は仕事場からそのまま直行しました。しかし金曜日の渋谷とあって、山手線ホームやハチ公前広場などは死ぬほど混んでいました。人波をかきわけON AIR WESTに着いたのは、だいたい18:30過ぎでした。
 今日は2階席が開いていましたが、会場後30分を経過してすでに座れる余地は少なく、とりあえず全体が見渡せる場所を…ということで2階席の最後列に位置することにしました。
 開演前の客入れ音楽はもちろんレッド・ツェッペリン。選曲もメンバーがやってるんでしょうか? 開演時間近くになると、1階席には人がぎっしりと詰まってきて、2階席にもかなり人が入ってきています。次回から2日間興行になるんではないか?というようなお客の入りでした。

 なんと19:00定刻に「火星」が始まります。いつもなら10分押しくらいなのに。メンバーもすぐに入場し演奏を始めます。
 開幕曲は「黄金の夜明け」。すでに大阪、名古屋でのセットリスト情報を知った後でしたが、それでもこの曲をやってくれるのは嬉しい…。
 本日の衣装。鈴木氏は白い和服ですが、肩のあたりに黒っぽい刺繍が入っています。柄はよくわかりません。楽器はお札の貼ってあるイーグル・ベースです。後藤氏はいつものテリー・ボジオ風黒ランニングではなく、白のワイシャツに革ズボンでした。和嶋氏は4月のパワーステーションと5月のON AIR WESTで着ていたのと同じ、金のチョッキにエスニック調ズボン。今回注視してみたところ、チョッキの柄は「太陽」と「象」に見えました。ギターは最近メインのバット2。

 2曲目は、ライヴ前半にしては意外な「桜の森の満開の下」。この曲はやはり後半にやってくれた方が盛り上がるかなー、と思いましたが、逆にこの曲を前に持ってくるライヴ後半とはどんな選曲になるのか、と興味津々。

 ここで最初のMC。鈴木氏曰く、いつもは2時間のところ、ツェッペリン特集の30分を加えて2時間30分演奏するため、時間通りに始めたとのこと。今日の鈴木氏のMCは、心なしか大変なごやかな雰囲気を出しています。
 今日は重い曲を中心にやるとのことで、次の曲は「埋葬蟲の唄」。テンポチェンジ後のブレイク部分で暗転する演出で、思わず観客から感嘆の声がもれます。
 続いて「無言電話」。今日は後藤氏のドラムスが特にすごいです。CDでのアレンジとは全く違っているのは当然、さらにその中に時折ハッとするような絶妙なプレイを聴かせてくれます。この曲だと、サビの部分のバスドラムの連打がそれにあたります。

 次のMCで、和嶋氏はメンチに持ち替え。「学生時代にボクの憧れのマドンナを奪った和嶋氏へ捧げる曲…」という鈴木氏の導入で「盗人讃歌」を演奏。この曲も、埋もれた名曲なだけに、感涙にむせんだ人も多かったことでしょう。
次は超代表曲「りんごの泪」。デビュー時の若々しい演奏も魅力でしたが、現在の編成で聴く演奏もまた良し。

 ここで今回のテーマ「ジョン・ボーナム追悼、レッド・ツェッペリン・コーナー」になります。「LED ZEPPELIN組曲」と題したメドレーを演奏するとのこと。和嶋氏はジミー・ペイジに敬意を表して、ギターをツアースタッフの川端氏所有というサンバーストのレス・ポールに持ち替え。もちろんストラップは長めにしてあります。後藤氏もお釜型の黒いボンゾ帽子をかぶります。鈴木氏は?と見ると、白い和服の背中を見せ、ジミー・ペイジのドラゴン・スーツのような龍の刺繍がはいっていることをアピール。
 和嶋氏の「アキレス最後の戦い」(『プレゼンス』より)の印象的なギターアルペジオのイントロから、「LED ZEPPELIN組曲」が始まります。すぐに「流浪の民」(『フィジカル・グラフィティ』より)のリフ、鈴木氏のボーカルで「幻惑されて」(『レッド・ツェッペリン』より)、「アウト・オン・ザ・タイルス」(『レッド・ツェッペリン III 』より)のリフと続きます。和嶋氏がハードロックの楽曲No.1に選んでいた「ブラック・ドッグ」(『レッド・ツェッペリン VI 』より)を鈴木氏のボーカルで演奏した後、突然「ハートブレイカー」(『レッド・ツェッペリン II 』より)のギターソロ。和嶋氏のボーカルで「聖なる館」(『フィジカル・グラフィティ』より)の次は、ライヴ・バージョンの「胸いっぱいの愛を」(『レッド・ツェッペリン II 』より)中間の展開部。和嶋氏のボーカルとテルミン(!)プレイ。さらに観客にもテルミンを触れさせるなどしていました。次もライヴ・バージョン、後藤氏の手叩きドラムソロから始まる「モビー・ディック」(『レッド・ツェッペリン II 』より)。これは驚き!後藤氏のソロ・ボーカルでジャージーな「ダウン・バイ・ザ・シーサイド」(『フィジカル・グラフィティ』より)、一転してブルージーな和嶋氏のギターが光る「貴方を愛しつづけて」(『レッド・ツェッペリン III 』より)。和嶋氏のボーカルでコミカルな「ホット・ドッグ」(『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』より)。鈴木氏のボーカルで、ビデオ『遺言状放送』でも演奏していた超有名曲、「ロックン・ロール」(『レッド・ツェッペリン VI 』より)。ギターソロに入る前に決めポーズを取った和嶋氏の顔はすごく楽しそうでした(笑)。本当はギターはダブルネックでやって欲しかった「永遠の詩」(『聖なる館』より)と、メドレー最後の「天国への階段」(『レッド・ツェッペリン VI 』より)の後半部。鈴木氏がボーカルを取り、最後の歌詞はこぶしが回っていました。
 計16曲分も詰まった、濃厚なメドレーでした! しかし『フィジカル・グラフィティ』特集と聞いていたのですが、3曲分しかやってませんね(笑)。でもいろいろ聴けてうれしかったです。
 MCで鈴木氏が言うには、「メドレーをやってみた結果レッド・ツェッペリンは難しい!ということがわかった。もう二度とやらない!」ということで、来年4月か5月のライヴでは、今度はブラック・サバス特集をやりたい、と宣言! こっちにも期待してます! 今回のような盛り沢山のメドレー形式もいいですが、1曲1曲じっくりやってほしいような気もします。

 和嶋氏はグレコ、鈴木氏はミラージュに持ち替え、1音半下げ重暗曲の準備。
 今回のツアータイトル「怨念大納言」が取られたツアーテーマ「菊人形の呪い」。聴きごたえ十分。菊人形展を見に行きたくなりました(笑)。
 つづいて「黒猫」。これも是非演奏して欲しかった1曲! 十分に堪能させていただきました。

 次のMCで、和嶋氏はバット2、鈴木氏はお札イーグルと通常チューニングの楽器に戻します。
 笑い声とドスの効いた声だけには自信があるという鈴木氏が放つ「蛮カラ一代記」。途中、和嶋氏のハーモニカソロをマイクが拾わない、というアクシデントもありましたが大事には至らず、それ以外は滞りなく完奏。
 次は新譜からの名曲「天体嗜好症」。間奏部ではリズムが裏になり表になり、まさに中にあって外にもある宇宙…。

 ここでMC。終盤のテンポの速い曲に備えてか、和嶋氏は手慣れたメンチに持ち替え。
 印象深いアルペジオで始まる「人面瘡」。この曲の後藤氏のドラミングもすばらしい。特に後半の変拍子部分。
 次はちょっと久しぶりかな?の「審判の日」。一時期は毎回演奏していたものですが。
 続いて定番曲入り決定?の「戦慄する木霊」。コーラスがハモっているな、と思ったら、後藤氏がコーラスしていました。今回初めて気がついたのですが、今までのライヴもそうでした? 御存知の方はご連絡ください。
 これもテンポの速い「もっと光を!」で締め。今回の終盤の選曲構成は新鮮です。

 もちろん観客は満足することなく、すぐさまアンコールに突入。
 鈴木氏は同じ格好で登場しましたが、和嶋氏は作務衣、後藤氏は例の黒ランニングに着替えて再登場。
 今回のツアーではアンコール1曲目は映画の主題歌を演奏しているそうで、大阪では「白い恋人たち」、名古屋では「エマニエル夫人」を演奏したとのこと。そしてここ東京では、和嶋氏がメンチでリードギター、鈴木氏がお札イーグルでベース、後藤氏がバット2でリズムギター、というドラムレス編成で「男はつらいよ」を演奏。
 後藤氏がギターを置くや否や「幸福のねじ」のイントロが始まります。場内熱狂興奮。

 2度目のアンコールには、和嶋氏がモップで床掃除をしながら登場。さらに後藤氏に至っては「ラーメン」と白く染め抜かれた真っ赤なノボリを持って登場。このノボリは鈴木氏が合羽橋でラーメン好きの後藤氏(新日本ラーメン党ってなに?)のために買ってきたとのこと。また、観客へのお土産として、「寅さんせんべい」が投げられました。
 和嶋氏がメンチ、鈴木氏がリッケンバッカーを持ち、後藤氏がドラムセットの後にノボリを立てかけて、今年最後の曲「ダイナマイト」を演奏しました。サビの連チャン部では、観客が一斉に指を出してカウント。
 演奏後は、鈴木氏と和嶋氏がステージ際のお客さんと握手、後藤氏は例のノボリを振り回してコミュニケーションを取っていました。

 全体的な感想です。
 今年に入って、東京では4度目のライヴ、さらに来年2月発売予定の新譜のレコーディングなどのため今年最後のライヴということもあってか、大変中身の濃い、充実した演奏であったと思います。選曲とその配列、特集内容もすばらしく、個人的には今年最高の出来と言えます。やっぱり人間椅子ってすごいバンドだ、と再認識しました。そういえば1音半下げの曲はたった2曲(通常は4曲くらい)しか演奏しなかったにもかかわらず、全く不満は感じませんでした。
 ともかく演奏については各パート、バンドサウンドともに文句のつけようのない出来でした。ちょっとだけ難癖をつけると、和嶋氏がややモタってたかな(特に序盤)…。
 そして演奏だけでなく、鈴木氏と和嶋氏の滑稽味のきいた独特のMCも、ライヴならではのお楽しみですね。

 また、照明が頑張っていたなーという気がしました。「埋葬蟲の唄」での暗転演出を筆頭として、各所でさまざまなライティングを行い、ステージを盛り上げていました。ただ、観客側に向けたライトは2階席からの視点を直撃する上、光量が多すぎて、このライトが点いたあとはしばらく何も見えなくなってしまうほど。これだけはなんとか改善してほしいものです。

 今回は、見ていた場所の関係上、鈴木氏も和嶋氏もあまり見えず、必然的に後藤氏に注目していたのですが、やはり素晴らしいドラマーです。テクニカルな面では9月に見たジェラルドの時の方が面白かったですが、今回のライヴでも気合いのこもった演奏と唄(!)とノボリ(!!)で十分に楽しませていただきました。「人間椅子史上最強のドラマー」と言っても決して過言ではないでしょう。後藤氏への声援も2割増くらいになったかな? やっと人間椅子のメンバーとして認められたという気がします。

 声援で思い出したのですが、最近お客さんに女子が増えたような気がします。女7:男3くらいだったような…。しかも低年齢化が進んでいるような気がしました。もう私もライヴ引退すべきかもしれないです(笑)。
 それにしても、新規の若いファンの人(男女問わず)はどこで人間椅子を知ったのでしょうか?

 これから来年4月くらいまでライヴはないですが、その間に制作される新譜に期待しつつ、1999年のツアーを待つことにしましょう。

以上
※ タマエ氏のサイト人間椅子讃歌にもタマエ氏によるライヴレポートが掲載されています。こちらの方も是非どうぞ。
【チケット】
チケット

【セットリスト】
SEQ. 曲名 使用楽器
ギター ベース
<オープニング ホルスト「惑星」より「火星」>
黄金の夜明け バット2 お札イーグル
桜の森の満開の下
<MC>
埋葬蟲の唄
無言電話
<MC> メンチ
盗人讃歌
りんごの泪
<MC> レス・ポール(川端氏所有)
LED ZEPPELIN組曲
- アキレス最後の戦い
- 流浪の民
- 幻惑されて
- アウト・オン・ザ・タイルス
- ブラック・ドッグ
- ハートブレイカー
- 聖なる館
- 胸いっぱいの愛を
- モビー・ディック
- ダウン・バイ・ザ・シーサイド
- 貴方を愛しつづけて
- ホット・ドッグ
- ロックン・ロール
- 永遠の詩
- 天国への階段
<MC> グレコ ミラージュ
菊人形の呪い
黒猫
<MC> バット2 お札イーグル
10 蛮カラ一代記
11 天体嗜好症
<MC> メンチ
12 人面瘡
13 審判の日
14 戦慄する木霊
15 もっと光を!
<アンコール1> メンチ(和嶋)
バット2(後藤)
16 男はつらいよ
17 幸福のねじ メンチ
<アンコール2> リッケンバッカー
18 ダイナマイト

情報・投稿・忠告・激励・罵倒メールは:ecag@st.rim.or.jp までよろしくお願いします。

「総合目次」にもどる |  「演奏会報告の目次」にもどる