<モテニッキ・12>


オスだった


結論からいうと、花子は軽々とオスだった。
よりにもよって花子は雄だった。

こんな…こんなバカな。

信じられない。

こんな裏切りを、いやこんな屈辱を受けたのは初めてだ。

もう…もう駄目だ…


苦悩と絶望の果てに、花子と心中しようとしたその時。
僕の体に強烈な電流が疾った。
四方を囲っている壁のようなものが、一気に取り払われたかのような感覚を僕は覚え…

そして気づいた。



ああ…

小っちゃい…

なんて… なんて小っちゃいンだ、僕は。


「ヒト」という枠を超えて、無限の可能性を追求していた筈の、この僕が、
ハッと気づけば今度は「性別」という、これまた只のカテゴリーにすぎない一概念にとらわれていたなんて…

ごめんよ、花子…

小さすぎた、僕の器は小さすぎた。
もう男とか女とかどうでもいい。そんな小さなことにとらわれたくない。

いま思えば、人はモテる・モテないとかいったゴミのような概念を気にしすぎることにより、
徐々に本当の自分を見失っていき、それによりどんどん自分の可能性を狭めていってしまうンだ。

それじゃ駄目だ。それじゃ駄目なんだよ。
それじゃ生物としての、真の革新は起こせないンだ。
生物は! 生物はもっと種としての枠を超越して分かりあうべきなんだよ!

国とか、人種とか、一夫多妻制とか、そういった些細な部分から始まって…
人間とかそうでないとか、種とか目とか科とか! オスとかメスとか! その数に至るまで!
そういった小さい概念の全てを超越して愛しあうべきなんだよ… あっ! そうか!!

遂に…! 遂に僕は理解したんだ! 
究極の愛の形がどういうものか! 何処にいけばそれが得られるのか! 遂に僕は真理を悟ったンだ!


とりあえず僕とニワトリとは大変に相性が良いことが分かった。
ならば、まずはそこから始めよう。為すべきことは既に明らかだ。
そうと決まったら、さあ、いこうじゃないか、あの約束の地へ!


うわっは。うわはは。うわははははははははははは!



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