悪魔くん




<写真解説>
魔法陣の中に現われたメフィストを、影絵風に表現してみました。


昭和41年から42年にかけて NET で放映された”悪魔くん”、水木しげる氏の原作とは違った作品世界が展開されましたが、この作品を、子どもの頃の思い出の番組のとして ”イチオシ”される方は、非常に多いようです。現在のテレビで観ると、多少、画面のあれが気になる、古いモノクロ番組ではありますが、いまだに全国 各地で放映されていることからも、その魅力が伺えますね。



発端

主人公は、友人から”悪魔くん”と呼ばれる、勇敢で頭脳明晰な少年である。
あるとき、彼の家の周囲で目のない変死体が発見される事件が相次いだ。 彼は、たまたま見掛けた不審な老人を尾行したが、老人と対面した古井戸 の中で、人間社会を脅かす怪奇な者と戦うよう諭された。 彼は、この老人”ファウスト博士”に従って悪魔メフィストを呼び出すと、 さっそく、眼魔との戦いに出かけるのであった。

作品について

これは、言わずとしれた水木しげる氏の作品ではあるが、漫画である原作 に描かれていた”千年王国”というキーワードについて、描き方に大きな 違いがある。原作では、天才児である悪魔くんが、 ”悪魔”を利用して現世に天国を作り出そうとする、悪魔くん自体の積極 的な動きがあったが、テレビ作品では、(たしか、千年王国という キーワードさえもなかったはず)ファウスト博士によって、悪魔くんが”自分の 役目を自覚させられる”と、描かれていた。これはテレビ番組と してのおもしろさを追及するのには、正しい判断だと思われるが、 このためにかえって作者の作品の特徴が薄れてしまったような気がする。
日本における映画、テレビの世界の”悪魔”観というものについて、 私はそれほど詳しくないのだが、 日本の一般の映像作品では、 ”悪魔を呼ぶ”という行為が、呼び出した者の悪を助長する 傾向が強いような気がする。その結果、主人公そ のものが、犯罪というよりは、むしろ悪魔的な行為に走るのであるが、ここに登場する悪魔は、”毒を 以て毒を制す”為に存在し、人間である主人公と、人間社会を守ろうという行為 に出る。契約に基づいた行為であるにしても、悪魔は悪魔である。 このあたりが、そもそもこの作品のおもしろさなのかもしれないが.........
そういえば、デビルマン、地獄先生ぬーべーなども、このような見方をすれば、 この作品に類似しているといえるかもしれない。
”善悪吉凶を超えた...”という、ファウスト博士のせりふが、 最初に観た頃から非常に印象的だったが、上記のようなことを考えたとき、 あらためて名言であると思い直した次第である。


トラウマ

マネキンの首が落ちると、目が1個になって巨大化し、口は大きく裂ける....
首が宙に浮びはじめると、イ ヒヒヒヒ ヒヒヒヒ という笑い声が響く.....
これが、CGではなく、実写特撮で表現されているのである(時期的に あたりまえであるが)。道を歩いていた女性が、実はマネキンであったり すれば、人は、理屈ではない恐怖心に襲われるのではないか。
放映当時、自宅のまわりには、林を抜ける暗い道などなかったので、私 自身は、この作品に、あまりリアリティは感じなかった。しかし、同世代の 知人などに聞いてみると、悪魔くんのことはわすれていても、”首人形”のことを 忘れている者は、ほとんどいない。悪魔くんの番宣に使われた写真で マネキン妖怪を目にすることがあるが、やはり、コラージュの写真ではなくて、 実際の映像で、その怖さを味わってほしい。


ソロモンの笛

ファウスト博士の話では、ソロモンの笛は、悪魔メフィストを駆使するための 切り札であったが、実際には、初代、2代目のメフィストは、ともに、 悪魔くんの人間性にひかれて、自分の意思で、彼にしたがっていた。ソロモンの 笛を取り上げてしまったメフィストが、自ら返却を申し出たり、また、悪魔くん が死んだと思って、思わず本心を口にだしてしまうシーンなど、地味な場面では あるが、暖かい作風の感じさせるエピソードである。


パロディビデオ作品

この作品に関連して、パロディビデオがある。もともとがアダルト指向のビデオ 作品であるために、詳細をコメントしないが、この作品の持つ、ある種の”いかがわしさ” をチープな画面の中で的確に描き出している傑作である。また、当時は特撮の専門家が さまざまな工夫を凝らして作り出した映像手法が、今日のビデオではどの程度容易に 作り出せるか...を肌で感じるのに、貴重な作品でもある。



放映作品リスト

放映時タイトル 現れた妖怪、怪人、怪獣など 現れた場所 放映日
妖怪ガンマ ガンマ
S41,10/6
化烏 化烏 空、無人島 10/13
ミイラの呪い ミイラ 東京、エジプト 10/20
大海魔 大海魔 10/27
ペロリゴン ペロリゴン 遊園地の裏の沼 11/3
首人形 マネキン妖怪
11/10
魔の谷 山彦妖怪
11/17
水妖怪 水妖怪 沼? 11/24
吸血鬼 ドクトル・キューラ クリニック? 12/1
シバの大魔神 大魔神 神殿 12/8
幻の館 油絵妖怪 洋館 12/15
狼人間 狼人間
12/22
ドクロンの踊り ドクロン
12/29
妖術師バラモン バラモン 空き家につくった魔法陣 S42,1/5
妖怪としぬすみ としぬすみ
1/12
モルゴン モルゴン
1/19
黒猫館 黒猫妖怪 洋館 1/26
怪奇雪女 雪女
2/2
地獄脱出作戦

2/9
未来ゾーン 未来人
2/16
化石人 化石人 日本アルプス 2/23
呪いの森の魔女 鬼婆
3/2
化けぐも 化けぐも
3/9
カマキリ仙人 カマキリ仙人
3/16
人喰いダイヤ ダイヤモンド妖怪
3/23
透明人間 死神
3/30

音楽

この作品には、さまざまな BGM があり、作品の各場面ごとに、十分な効果を 与えている。だが、視聴者にとってなじみぶかいのは、やはり、導入部で用い られる歌(?)であろう。
平山亨氏による(あるいはインタビューによる)文章によると、ここにでてくる 呪文は、”魔法大全”などをもとに、ばらばらに集めたものを、山下氏、水島早苗 氏などの即興演奏で録音していったものだとのこと。テレビの画面で、古井戸の 外から中にはいり、メフィストが姿を現わしてポーズをきめる....
この画面を、わくわくしながら見守った子供たちは、いま、みな 30 代、40 代の大人になっているだろうが、おそらく、1人として、この印象的な場面を 忘れてはいまい。

特撮

特撮の出来、不出来が如実に出る怪獣登場シーンについて、少々コメントする。 特撮については、円谷プロ作品で多く見られる、”手前に何かがあって、その 奥に怪獣がいる。手前にあるものと比較して怪獣が相対的に巨大に見える”パターン が有名である。しかし、この作品に登場するペロリゴン、大海魔といった怪獣は、 手前に何かがあって大きく見えるのではない。怪獣をとらえたカメラが、怪獣の 動きによって、自らゆれてしまうのだ。悪魔くん、メフィストともに、等身大 だからこその撮影方法でもあるが、極端にあおった撮りかた、カメラそのものが 現場で撮り続けているような臨場感は、心理的に、怪獣を大きく見せていた。 当時、私は子供であったが、このあたりの怪獣をテレビで観ると、無意識に のけぞってしまっていたのだが、今になって考えてみると、このような理屈で 説明がつきそうである。なお、このような撮影方法は、キャプテンウルトラに おける怪獣登場シーンにも用いられている。

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