シュワルツェネッガーがカリフォルニア州知事に
どうやらカリフォルニア州知事選挙で、映画スターのアーノルド・シュワルツェネッガー(56)が圧倒的な勝利をおさめそうだ。カリフォルニアは、ハリウッドのある映画産業のメッカということで、やはり政治家としての能力や知性よりは、知名度がものを言った格好だ。

それにしても、彼の話を聞いていても、さっぱり政治方針が見えて来ない。いったいアメリカで何が起こっているのだろう。

かつて同じ映画界から共和党の候補として、カリフォルニア州知事から大統領にまで登り詰めたロナルド・レーガンとは雲泥の差があるようにしか見えない。カリフォルニアの選挙民がオーストリアから移住した野心家のスターを州知事の座に据えようとした気持ちにはいったい何があるのだろう。最近同州では、財政赤字が進み、停電なども多く、デービス知事(民主党)の手腕に対する不満が募っていたと言われる。それでもその知事をリコールした挙げ句、選ぶ相手がオーストラリア生まれの映画スターとは意味が分からない。

規制の政党に対する嫌悪のようなものが働いているだろうか。それともずばりアメリカ人の脱イデオロギーの顕れだろうか。それとも選挙が、メディアの影響によって、人気投票化していることの反映だろうか。

私から見れば、選挙がまるで脱イデオロギーのショーのように見えて仕方がない。脱政党化した人々(無党派層)が、選挙の趨勢を決めてしまうのはアメリカも日本も一緒のような気がする。民主党支持者の連中は、まさかシュワルツェネッガーが当選はずはないとタカをくくっていた節がある。ところが選挙戦の後半になって、マスコミの世論調査の結果、シュワルツェネッガー優位との報道が流れると、民主主義の危機を感じた人々は、過去のシュワルツェネッガーのセクハラ問題やヒトラー賛美の発言をもって来て、ネガティブ・キャンペーンをはじめた。それに対して、シュワルツェネッガー候補側は、名門ケネディ家出身の妻が、先頭に立って、本人の「セクハラ問題やヒトラー讃美疑惑」を打ち消した。結果的に今回の当選では、これが功を奏した形となった。元々ケネディ家は民主党のはずだが、今回は、中道的(脱政党的)な政策を掲げるシュワルツェネッガーを押した。

それにしても、いったいシュワルツェネッガーという人物は何ものなのか。彼は第二次大戦が終結して間もない1947年、オーストリアの片田舎で生まれた。特に裕福な家庭ではない。父は平凡な警察官だった。少年時代にボディービルを始め、鍛えた肉体で、次々と賞を取っていった。自信を持ったアーノルドは、小さな鞄と20ドル入りの財布を持ってアメリカに渡る。その後は、文字通り自らのボディビルで鍛えた肉体を武器に、70年に、国際ボディービル連盟主催の「ミスターオリンピア」で優勝。以後七年その地位を他者に譲ったことはない。また彼は、努力をして英語を学んだ。でも彼の発音は今だにドイツ語なまりが抜けきっていない。大学では経営学を学ぶ。映画界に進出。だがなかなか芽はでなかった。数年後、「コナン・ザ・グレート」(82)で注目を浴び、低予算映画「ターミネーター」(94)の大ヒットで人気を不動のものとした。この頃から、政界への進出を考えていたとも言われる。こうしてみるとアメリカン・ドリームを手にした努力の人という印象が、シュワルツェネッガーにはある。

まあさしずめ、日本であれば、アントニオ・猪木か北野武が、東京都知事になるようなものであろうか。どんどんと選挙が脱イデオロギーのショーと化して行く中でメディア社会もここに極まったという感じがする。アメリカの民主主義はいったいどうなってしまうのか・・・。


2003.10.8 Hsato

義経伝説HP