白旗神社 今週の一枚 バックナンバー

No1(2002.7.29−)

2002白旗まつりのスケッチ
(台町の山口恭正氏とお孫さん)

氏子の長老氏とお孫さんの晴れ姿

7月21日(日)。まぶしい夏の日射しが西に傾く頃、恒例の白旗まつりは最高潮を迎えていた。町内を練り歩いた義経神輿、弁慶神輿が、西日を浴びながら、白旗神社の境内に向かって「ワッショ・ワッショ」と進む。その後を氏子の人々が、長い列をなして続く。お囃子を叩く、子供たちのバチにもいっそう力が入った。見れば、最後尾に白旗神社の氏子衆の粋な羽織袴に着た紳士と若いご婦人に間にちょこんと桜色の浴衣姿の少女が左右から手を引かれながら歩いている。おじいちゃんとお孫さんとお嬢さん見えた。またこの浴衣姿が、とても愛らしいので、「一枚御願いします。」というと、少女は、少し緊張した面持ちで、こちらを見たのであった。
いつの日か幼き孫の嫁ぐ日はまつりのアルバムそっと見るかも

NO2(2002.8.4−)

 

2002白旗まつりのスケッチ2
(南仲四丁目 原 四郎雄氏)

白旗まつりに古武士を見つけた

7月21日(日)。白旗まつりに賑わう藤沢界隈を歩いていると、つくづく、このまつりは、藤沢人の心意気を互いに確認し合う機会なのだなと思った。今風の言葉で言えば、白旗まつりは、藤沢人のアイデンティティそのものである。藤沢は古い歴史と伝統に根ざした町である。人々の姿形は、もちろん現代風になってはいるものの、そこに住む人々の歴史への敬愛、伝統を重んじ、それを未来へ伝えて行こうとする心根は少しも変わっていない。

そんな町のいや日本の未来を担う子供たちがかき鳴らす祭囃子が、そこかしこから聞こえてくる。日は西に傾き、神輿は亀尾の杜に向かっていた。祭りは最高潮の盛り上がりを迎えていた。その御輿の行列の中に、まるで時代絵巻から抜け出したような古武士の風貌の人物が居た。氏子の羽織袴に日除けの笠を被った横顔には、どこかしら周囲を圧倒する威厳のような空気が張りつめていた。心の中で、サムライが居る。鎌倉武者が居る、と思わず叫んでしまった。

 

白髭の古武士のごとき人付きて神輿の判官今帰り来し
例大祭は藤沢人の心意気明日に伝える儀式なりけり

NO3(2002.8.9−)

2002白旗まつりのスケッチ3

白旗まつりの日の首洗井戸の静寂

7月21日(日)。白旗まつりの主役は、もちろん白旗明神の源義経公である。今をさる813年前の文治5年(1189)6月13日。奥州から運ばれた義経公の御首は、腰越の浜での首実検の後、様々な経緯(いきさつ)があって、この藤沢の地に運ばれ、朱に染まったその御首はこの井戸の水で洗い清められたと伝えられる。こうして藤沢における義経伝説は、813年前より藤沢の人々によって連綿と語り継がれてきたのである。

例大祭のこの日は、この伝説の井戸の周囲にも注連縄が張られ、義経公の御霊は、神輿に担がれて、忙しく町の各所を回られる。私が首洗井戸に訪れると、神輿の賑わいとは、まったく違う静謐な空気が辺りを支配していた。急に注連縄が、風に揺れ、義経公の御霊が近くにいるような気がした。見れば首洗い井戸の北方の塀に凌霄花(ノウゼンカズラ)の橙色の花が見事に咲いていて、義経公の御霊に対する献花のように映った。近くに盛土をした義経公の首塚もあったというが、今は軒が並んでいて、その面影はない。

首塚はとうの昔に消へ失せて路地奥に在る井戸の寂しさ
注連縄が風に揺るゝは判官が御坐しますかと頭を垂れる
白旗のまつり太鼓が遠ざかり井戸の閑かさ際立つばかり
橙のノウゼンカズラ、井戸先の垣根に伸びて弔ひの花

NO4(2002.10.28)

藤沢市指定重要民俗文化財

湯立神楽

湯立神楽とは?!

毎年、10月28日は、湯立神楽の斉行される日に当たります。
白旗神社に伝わる湯立神楽は、江戸時代からこの地方の神社に広く行われる格調高い、神職が演じる神楽であります。

この特殊神事は、私達の日常生活に密着している、産土の神、火の神、水の神の神々に対する和めの神事で、実りの秋に感謝し、自然を崇拝する庶民の信仰的支柱となって、神と人と共に楽しみ、受け継がれてまいりました祭りであります。

この湯立て神楽の特徴は、忌竹(いみだけ)を四隅に立て、その中央に一本の長い竹を立て、山を作る、この構造が天蓋(てんがい)という、山の頂上から注連縄を張りめぐらし、秘伝とされている青、赤、緑の色紙で色々な形の注連飾りをして祭の神々をお迎えし、斎場とするのであります。この外側には湯釜を据えて焚き火によって熱湯をたぎらせ、山の下で、お神楽が舞われるのであります。(宮司近藤正談

 

白旗の社に集ふ神々の振るふ榊の福の湯を受く
秋暮れて湯立神楽の笛太鼓、亀尾の杜の紅葉振るはす

NO5(2002.12.15)


平野雅道氏撮影

師走の白旗神社

冬の白旗神社もまたいい。大鳥居の脇に立つご神木の大銀杏が冬の日射しを浴びて黄金色に輝いていた。社の前を流れる白旗川には無数の落葉たちがゆっくりと流れてゆくのを見た。役割を終えて去る人の潔さにも似て、思わず美しいと心の中で叫んだ。相州藤沢の宿に本格的な冬が訪れるのももう間近だ。


木枯らしの吹きすさびける夜は去りて白旗川を銀杏の葉ゆく

Last update 2002.12.15
H.Sato