しだれ桜通信 7
2004年11月22日 
しだれ桜菰巻きで越年


柳の御所のしだれ桜菰を巻いて越年
(2004.11.22 佐藤撮影)

今夏、すべての葉が抜け落ち、「枯死してしまうのか?!」と、心配されてきた柳の御所跡のしだれ桜であるが、徐々に蘇生の兆しが見えて来ている。10月初旬には、枝にしなりが戻り、湿り気も確認された。奇跡が起こりつつある。瀕死の状況にあった夏から、この桜を心配してきた者にとって、この樹勢の変化は何よりも嬉しいニュースだ。

但し油断は出来ない。樹木の周辺の環境については、以前と同じで変わらない。相変わらず、水はけが悪く、水がたまり池のような状況にある。ただ、たまり水自身が、以前のように腐ったような臭いを発しなくなった。これはEM(有用微生物)液を、地元の有志がコメのとぎ汁で培養し、何度も周辺に撒いていることの成果と考えられる。まさに今、盛岡のNPO法人地球環境・共生ネットワーク(リーダー高橋比奈子さん)の献身的なボランティアと地元有志の積極的な活動が実を結びつつある。

これまで、公式には、11月22日を入れて四回目のEM散布となるが、地元有志は、これとは別に、高橋さんらから分けてもらったEM原液を米のとぎ汁で培養し、8回ほど独自で撒いてきている。

本来、桜という樹木は手の掛かる樹木である。しかし手が掛かるから余計に愛情も湧く。桜は人との共生によってこそ美しい花を結ぶ。日本一の桜の園、吉野山では、桜は蔵王権現の化身であり、桜の枝を折れば、指を折られる、とも云われる。吉野では、桜は、ご神木なのだ。吉野の人々の祈りがあって、はじめて吉野は、一目千本と形容されるような絶景の桜の園となったのである。そして今年、吉野は、熊野、高野山とともに、世界遺産に指定された。

平泉も吉野の桜との共生の精神を習って、たった一本だけではあるが、柳の御所跡に残ったこのしだれ桜を守り、蘇生させるべきである・・・。

そんな祈りをもって、午後三時、有志がしだれ桜の周囲に集まり、菰巻きが、手際よく行われた。30分ほどで菰は根元から二股に幹が分かれる付近まで巻かれた。本来、菰巻きは、松の年越しに実施されるものであるが、今回は地元の吉田千秋さんの提案を受けて、桜蘇生の願いを込めて行われたものだ。終了後は、EM液120リットルも散布され、午後四時頃の解散となった。

菰巻きをされたしだれ桜は、どこか、育ち盛りのいたずらっ子が、包帯を巻かれたようで、照れくさそうにも見えた。きっと来年かもしくは再来年、この桜は逞しく蘇生し、美しい花を結ぶに違いない。


小春日和の中での菰巻作業
(2004年柳の御所 三時 佐藤撮影)


2004.11.25 Hsato

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