BOOK 5+
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<G企画用テキスト>
小説・エッセイ・うんちくなどの活字体系ひっくるめて、面白かったなあ、
と思った本を5本集めてインプレ+ おまけ。
B1:地球の長い午後/ブライアン・W・オールディス.
地球上を覆い尽くした巨大樹木。
その中をわがもの顔で跳梁する異常進化を遂げた食肉植物達。
この地獄のような世界で細々と生き延びる存在に成り果て、絶滅への運命を完全に享受した人間達。
そンな世界で、滅びの運命に抗い必死に生き抜こうとする異端児にスポットを当てた物語。
とにもかくにも世界観がすっごく秀逸な作品。
・20億年かけて地球上の全ての陸地をその幹で侵食し尽くし、なおも成長を続けるボダイジュ。
・そのボダイジュの幹に巧妙に擬装して獲物をまっているオニクライ。
・ガラスのように透明化した葉で反射させた大陽光線を武器にして身を守るヒツクリ。
・地球から月までを細い細い幹のケーブルで結ぶツナワタリ。
こうあっさり書いちゃうとアレなんだけど、実際には文章における表現力がどこまで脳内ヴィジュアル
を具現化できるかという部分の核心にすっごく迫りまくるぐらいのリアリティがあります。
そんな圧倒的植物優位の環境の中を生き抜く数々の奇妙な知的生物達。
・人間大程もある その体と知能により、生き残った昆虫類の中でも最大の勢力を誇るようになったトラバチ。
・他の生物の頭に寄生して宿主を支配することでその肉体的欠点を補い自らのニッチを保つアミガサダケ。
・母体となる木と尻尾でつながり、それに従属することにより自らの安全と安心を得る変種型ヒューマン。
これらの植物・生物の設定だけで既に萌え。
なんつうか、こう、想像力をすごく喚起させられるというか。
ストーリーもあってなきがごとく。
この世界の中で生き抜く為に必死になっている生物達の姿を、時にはを主人公の視点で、時には第3者の
視点で坦々と語りつつも(ただ決して説明的ではない)、それぞれが想う自分勝手な世界の心理をカオス
状に投げかける、というか・・・いやあ好きだなあ、こういうワケわかんないの。
繁殖が飽和に飽和を重ねた末にまきおこる壮大なドミノ倒し。
まさに滅びの美学のフル・オーケストラ。
最後に文中から、人の生死がいかに何気なく呆気ないものであるかを、もっとも上手くあらわした一言を。
「なるようになったのよ」
この言葉、マジで好き。
B2:幻想の未来/筒井康隆.
1億年後の地球。
かつての人類の物質文明の繁栄は跡形もなく、荒廃した岩山と砂漠だけになってしまった地球。
そンな絶望的な滅びの舞台で繰りひろげられる、あまりにも哀しく、そしてあまりにも美しい物語。
放射能の影響による遺伝子破綻が産み出したグロテスクなホモ・サピエンスの末裔達が、
過酷な環境で生き残るために、共食いや近親交配などのありとあらゆるタブーを当然のごとく、
それも自然に実行していく中でふと思う疑問。
「何故生きるのか?」という疑問。
義務とか責任とか種族とか本能とか、そういった当たり前の思想を軽々と超越して、
「それでも何故生きるの?」という疑問。
各世代がそんな疑問を考え続ける中で派生していく母性愛・自己愛・犠牲愛などのありとあらゆる愛。
ひねくれた愛・まっすぐな愛・否定するための愛・肯定するための愛。とにかくラヴまみれ。
「お願い。私を食べて。だって私、あなたを愛しているんだもの」
カニバリズムですら、もはや愛。
そんな各世代ごとの生物の思想描写をも含めた愛情表現の描写がとにかく見事です。
滅亡開始から三千万年後に出会う植物型生物と鉱物型生命体の恋の下りなんて、その最たるもの。
そして絶滅の終焉に近づいた最後の最期に綴られる、あまりにも壮大すぎるラストはまさに圧巻。
何故に筒井は天才たりえたのか。それを強烈に証明した1冊。
B3:ワンダフル・ライフ/スティーヴン・ジェイ・グールド.
副題は「バージェス頁岩と生物進化の物語」
カナダはブリティッシュ・コロンビア州の東端に位置するカナディアン・ロッキーの高地の
バージェス頁岩から発見された5億年前の化石群。
そこから推測されうる、そのあまりにも奇妙で不思議な生物達について、何の面白みもなく
ひたすら学術的な視点から語るウンチク本がコレです。
そして、この本はただのウンチク本にしてはあまりにも面白すぎるのです。
五つの眼と前方に突き出たノズルを持つオパビニアや、あまりにも複雑怪奇な形状をした
ハルキゲニアなどの各生物達もそうですが、その生物達の外観を推測するに至るまでの様々な
経緯がとにかく興味ぶかくて面白い。
今まで築き上げてきた生物学や進化論、考古学などのありとあらゆるお約束を裏切って、
何度も検討・思考・試行を重ねたす末にやっと浮かびあがってくる常軌を逸した生物達。
この流れと展開を聞いただけで、こう何かロマンを感じる方は即座にこの本を購入すべきでしょう。
まだ陸地に生物が存在しなかった時代、5億年前。
そンな中、本当に実在「したかもしれない」素晴らしき生き物達。
これぞまさにワンダフル・ライフそのもの。ビバ生物!
B4:闘うプログラマー(上)(下)/G・パスカル・ザカリー.
ゲイツの野望を実現するためにDECから引き抜かれた伝説のプログラマー「デビッド・カトラー」。
彼を中心に進められるウィンドウズNT開発の凄まじさを、実在する人物達のインタビューを基に
ドキュメンタリー形式で描くノン・フィクション・ストーリー。
「泳げない奴は沈めばいいんだ」
「現状において我々がいい品質の仕事をしているとはいいがたい」
「前に家に帰ったのは何日前だったっけ?」
どこかの現場で1回は聞いたことがあるようなおなじみのセリフが次から次へと出てきます。
いやあ熱い、熱いねコレ。もうね、コレ聞いただけでマジ熱い。
あと、大規模ソフト開発における各グループの奮闘とかが実にリアルで面白い。
バグが発生した、と聞いたときの胃がキリキリする感覚。
それを直そうとやっきになっているうちに感じる、ますます泥沼に落ち込んでいるような不安感。
1週間考え続けたあげくやっと原因がわかった時のとてつもない嬉しさ。
これはアレだ。いってみれば「あるある!」と手を叩いて喜んでしまうような気持ちよさなンだ。
なンつうか苦労話を思い出とともに語る感覚っつうか、そういうの。
苦労に苦労を重ねた末、遂に出荷に至った際にカトラーから開発メンバー全員に送られる
電子メールの内容の下りなンか、もうジーンときちゃう。
そう、なんともいえない気分になること請け合い。
ソフト・エンジニア必読の本だと思います。
B5:漂流街/馳 星周.
小説にベスト・オブ・ワースト賞というのがあるならば、受賞作は間違い無くコレ。
そのくらい救いがないお話し。
最悪の気分の時に読むが吉。マジ救いがなさすぎて逆に元気がでるくらい。
ホラ、自分より下を見つけて喜ぶとかいう、そういうゲス心を満足させるっつうか。
・・イヤ違うな。いまこうやって普通に生活できているというだけで恵まれているような気分に
させられる感覚かな? 生命よありがとう!お母さんありがとう!ライフ・イズ・リスペクトっ!
そんな風。で、そのまま腐れ死ぬ。マジそうゆーのがぴったりハマる本。
ストーリなんて説明する気にすらならない。だってないものストーリなんて。
強いていうなら”殺す殺す殺す 以上” あとはなんもなし。ヒデエヤ!
馳先生お得意描写の「アジア系裏稼業残酷物語」から、不夜城や夜光虫で見せた”ほんの少しの救い”
ってヤツを全部とっ払ったらこンなんデキターみたいな。ヒデエヤ!
でもすっごく面白いのコレが。もう一度読みはじめたら次の展開が気になって気になって
ひたすら本に貼りつくしかなくなる。
で、馳マンセーとか思ってたら、この路線が売れまくって気をよくしたのか才能が枯渇したのか
どうかはわからんですが、今じゃコレ系と同じような話を連発するしか能のないパターン野郎
になり下がってしまいましたチャンチャン♪ あ〜つまンねえのゲッハハハァン。
ちなみに映画は別ベクトルで地獄のようにクソなのでマジ見なくてもいいです。
<+α>.
*トウキョウヘッド/大塚ギチ.
新宿ジャッキー・柏ジェフリー・ブンブン丸・池袋サラ。
この名前を全員知ってる貴方は間違いなく かつて廃人だった筈。
そしてミートゥ!
新社会人の頃、渋谷センター街入口のゲーセンに会社終わったあと直行して、閉店まで
いりびたりイング狂ったようにバーチャプレイしていたあの頃。
休日は新宿スポットに遠征いって、新宿ジャッキーとか居酒屋カゲに軽々とひねられて
それでもワクワクしながら次の対戦の順番を待っていた あの時。
あの頃、あの時、あの時間。
確かにそこにはムーヴメントの波動そのものがありました。
強いだけが全ての不文律。乗り遅れちゃいけない 修行する 功を錬る 毎日毎日 対戦対戦。
勝った奴が主役、強い奴が主役、ああこのフィールは何? いわば俺達自身がメディア!?
そンな感じの錯覚が痛烈に甦ってくる1冊。
何ゆえ唯の消費行為のみにあれだけ没頭することができたのか?
今じゃそンなことはどうでもよく、あのムーヴメントの中にリアルタイムで参加できてよかったナァ
とか、チキン待野郎と連コイン馬鹿のゲームを超えたリアルバトル見物がすっげえ楽しかったナァ
とか、そンなことをたまに思うのみです。実際そンなもんだろ思い出って。
*NBAオフィシャル・カクテル・ブック/日本バーテンダー協会.
確か社会人2年目くらいの頃かなあ。
やたらと忙しくて、残業代稼ぎまくりで妙に金があって、で仕事終わるの夜11時くらいで。
で、やたらとストレス溜まってるんで、ついついその時間から飲みに行っちゃう。
でもって、キャバクラ行ったあと後アフターするのに都合いいからとか、みょうに遅い時間まで
店あいてるからとか、そういう理由でやたらと恵比須・渋谷・下北沢界隈のいろんなバーへ飲みに
行きまくり。そンなことを毎日のように繰り返していた時期がありました。
そンな頃、バーテンの見習いだったダチから薦められて買った本です。
この本を眺めてると今でも思いだすのです。
読んで覚えたシッタカブリ知識を試したくて、やたら妙なカクテルをオーダーしまくった事とか、
カクテル飲みながらそれにまつわる知識を話し合ったり論じあったりした事とかを。
例えば「マティーニのオリーブをオニオンに変えただけでギブソンになるンだぜ」とか、
「彼女を初めてホテルに誘う時のカクテルは何故ビトウィーン・イン・ザ・シーツなの?」とか。
うわあ死ぬ。
そンな感じで眺めてるとすげえ楽しかったり。するの。
*隣り合わせの灰と青春/ペニー松山.
ファミコン必勝本とかHIPPON SUPER!とか福袋があった頃のコンプティークとか、
そういうキーワード耳にするとマシンガンのごとく喋りだす腐れオタク以外は読み飛ばせ ガー!
そンでもってこの本を読む為には資格がいるというわけ。
普通の人が海や山や穴ぐらで女の子もしくは男の子とかとアギアギしちゃってるような時に、
ひたすら部屋にとじこもりまくって(もちろん電気はつけない)ワードナの迷宮にもぐりまくり、
猿のオナニーのごとく首はねられたり飛ばされたり石の中にいたり灰になったり塵になったり
してた人のみが、この本を面白いと思えるわけ。
ターゲット層の絞り込みがピンポイントすぎて、いっそのこと地球に隕石が衝突した方が255倍
マシなんじゃないかハッハーン!? みたいに感じちゃう絶望的な本。でも有資格者にはヘヴン。
ちなみにコレの続編の「風よ龍に届いているか」もすげえ面白いです。
崖から落ちた女と一緒に落ちてやることを決意する下りなンて、ファイナル・ファンタジーの
1シナリオでいかにも使われそうなぐらい感動的で・・・いやコレは誉めてるのよ実際。
*QUEEN詩集/(訳)山本安見.
眺めてるだけで幸せ。
そして幸せってたぶンこういうことなンだぜ知ってた?
In The Year Of 39 Assembled here the Volunteers In The Days
When Lands Were Few♪
ア〜〜〜〜アアア〜ア〜ア〜アアア〜ア〜♪
*テキストサイト大全/釜本雪生+くぼうちのぶゆき.
クリラバ×OUTDEXのコジャレ・トークも確かに面白かったけど、逆に今だからこそ、
カルメン×ABC×ウガニクのガチンコトークバトル
見てみたかったナァとか、
ミヤモトさんギャラでたんですか?などと大人の事情に突っ込みを
入れたくなるようなゲス魂はさておいて、スッゴクヨクデキテルトオモイマス(ロボトミー!?)
いや、実際のところ導入部の侍魂トークは「リスペクトは斬鉄剣じゃなくてFGHだったンダー」
みたいなドス黒い疑問もとけるし(ココ満面の笑顔ね)、いろいろな苦労話しも確かに面白いし、
いわゆる憧れの各サイトの100質なんて、ゲーム名鑑みて喜ぶとの同じような感覚で楽しめたし、
その他イベント系からネゲット(アジア系のアレが読めるだけで価値2倍!)に至るまで、テキスト系
を一時期でも運営していた方々のその思い入れってのが、ところどころに伝わってきて良かったです。
で、一番凄えナアと思ったのは、ホント初心者からベテランに至るまで一様に楽しめるようにしてある
章の構成立てとか文章力とかもそうなんですが、これだけの人数のインタビューなりコメントをきっちり
まとめあげた筆者のネゴシエーターとしてのその力。(この事はあとがきにも一部書いてあります)
この企画の一番のキモでもあり、アポやら人間関係やら色々な注文やらなンやらで、おそらく最も大変
だったであろうと思われるこの作業をまとめあげて、これだけの本にしたというその事実は、素晴らしく
評価されてしかるべきだと個人的には思います。
願わくばこの本がたくさん売れて、もっと多くの人が個人サイトっつうものに興味を持ってくれると
いいなあ、とか思ったり願ったり。