混沌の廃墟にて -64-

何度も何度もやること

1989-07-07 (最終更新: 1996-04-04)

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ダイナブック(*1)、という名称がかなり波乱を呼んでいるようだ。ほとんどの 意見は、「アラン・ケイ氏に失礼だ」というものがが、本当に本人が激怒してい るのか歓喜しているのかは、本人だけが知っているはずである。ともあれ、この ように、名称に非難が集中するというのも裏から見れば面白い。 FM-Towns が発表された時には「386 があーだこうだ」とか「HD がないのでうだ うだ」という意見が多くて、名前がけしからんという非難はなかったと思う。も っとも名前は全くけしからん筈がないので、当然ではあるが。

つまり、ダイナブックのスペックが HD がないからどうだとか、80C86 がいや だとか言うのはあまり聞かない。強いて言うなら搭載されている FEP が嫌だとい う程度である。私もあまり好きではない。自分が今使っているのと同じものであ れば、ありがたい。

ところで、今私が家で持っている「Uちゃん」こと PC-286U-STD は、STD とい う名の示す通り、本体(とCRT)だけの何もないマシンである。これにプリンタと モデムで本当に全てである。ポピュラーな増設RAMボード、ハードディスクという 2大必要機器がない。RAMはともかくハードディスクがようやく定価も下がってき たことだし、そろそろ買おうかと思ったのだが、もしかするとハードディスクを 保留してダイナブックになってしまうかもしれない。

ハードディスクで怖いのは、快適な環境に慣れること。もちろん、恒久的に快 適ならよいが、悲しいことに東京は地震が結構ある。ちなみにさっきもやや揺れ ていた。ハードディスクがどんなにオートリトラクト装備と言ってもアクセスの 途中で揺れるとかなり厳しいことになりそうだ。(*2)

もっとも、ハードディスクがないので、電子会議の保守作業も我慢の限界を越 えている。例えば、ダウンロードした発言からVOP関連のものを抜き出してみよ う。まず、通常はAドライブにシステム及びツール・辞書のディスクが入っている。 Bドライブが作業用で、ダウンロードしたファイルはここに入っている。さて、こ のままでエディタを起動してBドライブに今日のVOPの発言だけを抜き出すことが できる。

そこで、VOPの発言を集めたフロッピー(当然作業用ディスクに全部入れておく ことはできない)をAドライブに入れて、BドライブからAドライブに抜き出した発 言のファイルをコピーする。そして、エディタを起動しようとしても起動しない。 システムディスクはAドライブにないから。仕方がないのでAB両方のフロッピーを 取り出し、BドライブへVOPのフロッピーを入れ直して、Aには再びシステムの入っ たフロッピーを入れる。これでエディタが起動できる。

    *
FPRGTerm をコンパイルしてフォーラムに登録する時にはもっと面倒だ。まずプ ログラムを編集しているうちは、特に問題はない。コンパイルをする時点になる と、Aドライブのフロッピーをシステム・ツールのフロッピーからTurbo Cのフロ ッピーに入れ替えて、そして make をかける。無事成功したら、LHarc(*3)で圧縮 アーカイブにするのだが、この前にAドライブのフロッピーを元に戻さないと、 Turbo Cの入ったフロッピーには LHarc を入れる容量は残っていないのである。

のような、無茶苦茶うっとおしい環境で FXM も FPRGTerm も作成したのである。 誰かハードディスクか増設ラムボードを寄付しません? 完成時期が早くなるか もしれない :-)

さて、これではうっとおしい事この上ないので、予定としては増設ラムボード が値下がりするのを待って買うつもりだった。しかし、その後メモリは値上げし てしまったので、手が出なかったのである。1.6M のラムボードを買うとすれば、 どの程度が相場だろう。確かダイナブックには 1.6M メモリが入っていたと思う が…。

そうそう、何処かで IBM PC のソフトウェアの数が2〜3万本と書いたような記 憶があるが、あれは間違いで実際は5〜6万本らしい。ちなみに PC98 が 7000本の 大ソフトウェア資産だそうですが、数だけで比較しないように。IBM PC のソフト ウェアは強者揃いで実際役に立つようです。難を言えば日本語処理はちょっと弱 いだろう。(*4)

    *
ものすごく久しぶりにテレビを見たら、西和彦氏が出ていた。ちなみに、コン ピニエンスストアで弁当を買ってきたので、食べながら作文するわけにもいかず、 何気なくテレビを付けてみたのである。

おみくじの話をしていた。西氏はおみくじは必ず大吉を引くそうである。何故 かというと、大吉が出るまで何度でも引き直すからだと言っていた。思い込んだ らとことんやる、自分が思った通りになるまでやる、という事らしい。

私ならどうか。例えばおみくじをひいて大吉が出たらどうか。あまり私は大吉 は好きではない。先入観も思い込みもかなりあるが、おみくじというのは現在か ら近未来にかけての予言だと思っている。近未来まで大吉なのは確かにめでたい が、その後下り坂になるとなれば、あまり面白くない。私が好きなのは中吉だ (ちなみに、なかよしと読んでいる)。これなら、やや上へも期待できて、しか も今が悪いという程でもなさそうだから。

ところで、思った通りのおみくじが出ないとどうするか。出なければ、出ない でよしとする。実際、自分の行動は自分頼みであって、おみくじが私の一日を決 めるのではないのだ。つまり、ロマンのない話だが、おみくじのような信頼度の ないものにむきになっても仕方ないのである。思い込んだ時にとことんやるのは 私としても大切だと思うのだが、おみくじはとことん引くのは経済的にちょっと 無理っぽい。

もう一つ、私は最近特に運命論者的に冷めた見方をしがちなので、何度もおみ くじを引くというのは、有り難みが薄れるという意味であまりやりそうにない。 引くなら一度だけである。一度引いた結果に不服になる位なら最初から引かない。 ただし、これは最近の気分のことだから、そのうち心変わりするかもしれない。

思い込んだらとことん、というのがプログラミングにかなり影響していると思 う。しかし、仕事でのプログラミングは極力気を抜いた安全策をモットーとする ため、あまり思い込みは反映されない。趣味のソフトだからこそ本気で開発でき る。仕事ならどうしても納期との葛藤が発生する。趣味だと嫌になった時は投げ 出せば終わるだけのことだが、なかなか実際は思い切ることが難しい。

ちなみに、ダイナブックという商標はアスキーが登録していたのだそうである。


補足

(*1) ここでは東芝J-3100-SS001のことを指している。

(*2) 最近(1996年)はハードディスクが頑丈なのか、ThinkPADのハードディスクはエラー知らずです。某所で読んだのだが、ハードディスクの横にゴキブリが止まったのを見たネコがそれに飛び付いたためクラッシュした、という事例があるそうだ。

(*3) 現LHAの前身のアーカイバー。

(*4) 「pc98のソフトが役に立たない」などとはどこにも書いてない。念のため。勝手に誤解するのは文字通り勝手である。


    COMPUTING AT CHAOS RUINS -64-
    1989-07-07, NIFTY-Serve FPROG mes(6)-337
    FPROG SYSOP / SDI00344   フィンローダ
    (C) Phinloda 1989, 1996