MCM6256 256 Kbit Dinamic Memory

64 Kbitのダイナミックメモリが普及する頃には、すでに256 Kbitのメモリも順調に開発されていました。特に1980年代始めで変わったことといえば、この頃からダイナミックメモリにさまざまなバリエーションが生まれてきたことです。
もともとダイナミックメモリは大容量メモリ素子として開発されてきました。そのため、チップセレクト回路やデータバスバッファの都合上、1素子に記憶されるビット幅が1 bitだけの方が有利でした。つまり4 Kbitの時には4096×1 bit構成、16 Kbitの時には16384×1 bit構成、64 Kbitの時には65536×1 bit構成といった形です。256 Kbitでも、主力は大型計算機のメモリですから1 bit構成のものが中心になってはいましたが、マイクロコンピュータとかパーソナルコンピュータのメモリという応用面も無視できない程度に育ってきていました。ところが、1982年前後のパーソナルコンピュータ市場を思い出してみると、16 bitマイクロプロセッサというのも順調に出荷されて上位組み込み用途には使われていましたが、パーソナルコンピュータの形になっているのは主に8 bitマイクロプロセッサを用いたものばかりです。つまり、せいぜい64 KByteしかメモリが使われません。16 bitのパーソナルコンピュータも存在しましたが、たとえば初期のPC-9801でも標準実装のメモリ量は128 KByteです。1985年のPC-9801VMですら384 KByteです。これなら256 K×1 bit構成のメモリが使えるかと思えば、バスが16 bit幅ですから192 K×16 bit構成のメモリアレイが必要で、256 K×1 bit構成のメモリではうまくありません。つまり、パーソナルコンピュータなんかには大容量すぎて256 Kbitのダイナミックメモリをおいそれと使うことができなくなってしまいます。
そこで、256 Kbitのダイナミックメモリでは、最初から64 K×4 bit構成のチップが開発されていました。これなら、8 bitマイクロプロセッサで64 KByteしか必要がないときは2個だけ、16 bitマイクロプロセッサなら128 KByteのメモリを4個だけ使用して、手軽に利用できます。また、グラフィック表示用のビデオメモリとしても、128 KByte程度しか必要としないことが多かったために、64 K×4 bit構成の素子が長い間使われていました。逆に4 bit構成のダイナミックメモリの有効性が認識されたためか、64 Kbit素子にも16 K×4 bit構成のものが作られて、小規模なシステムで便利に使われることになりました。よくMSXなんかでもTMS9918と組み合わせてビデオメモリとして使われていましたよね、16 K×4 bit構成のメモリが。

256 Kbit DRWM
左は日立製のHM50256でアクセスタイム150 ns、1 bit構成のメモリです。右は65536×4 bit構成のチップでSHARP製のLH2464のアクセスタイム120 nsのもの。データ入出力が4本になっている都合上、2ピン増えて18ピンDIPです。

さらに、各種高速アクセスモードの試行錯誤が256 Kbitの時代から盛んになったように思います。RAS-CAS方式のタイミングだけでなく、ページモードとかニブルモードなどの高速アクセスモードを備えたメモリが一般に販売されるようになりました。一般のRAS-CASアクセスタイミングも、アクセスタイムとサイクルタイムの比とか使いやすくはなっていましたが、マイクロプロセッサをはじめとするランダムロジックは5年以上前と比べて数倍にもなっていたのに、大容量メモリのアクセス速度は倍も高速化はされていないため、システムの速度を大容量メモリのアクセス速度が決めてしまう状況が生まれ、その解決策として高速アクセスモードの模索が行われたのでしょう。

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