川村渇真の「知性の泉」

コンサルタントの利用では能力の見極めが大切


コンサルタントで重要なのは問題解決能力

 重要な仕事を達成するのに必要な能力を、社内では持っていない場合がある。そんなとき、できるだけ時間をかけずに解決したいなら、外部のコンサルタントを利用するのが一番だ。
 しかし、コンサルタントと名乗る人が世の中には数多くて、コンサルタントとしての能力はピンからキリまである。レベルの高い人に依頼すれば、目的の課題を見事に解決してくれるだろう。逆にレベルの低い人に当たると、課題が解決しないだけでなく、遅れによって損害が大きくなる。このように、契約するコンサルタントの質によって、正反対の結果が得られてしまう。現実には、コンサルティング能力の低い人が意外に多い。
 では、コンサルタントの質を見極めるには、どうしたらよいのだろうか。その問いに答えるためには、コンサルタントに求められる能力を明らかにしなければならないので、それを先に整理しよう。
 コンサルタントが扱うのは、依頼主が解決できない問題である。その意味で、問題の解決こそがコンサルタントの本来の役割といえる。依頼主が抱えている問題は、似たように見えても同じではない。すべて個別の問題であり、それぞれに適した対応をしなければならない。だからこそ、依頼主の状況に最適な解決方法を導き出せなければ、コンサルタントといえない。また、得られた解決方法が実際に役立つことも重要なので、実現可能な解を求める能力も必要となる。
 実際の問題を解決するのは、それほど簡単ではない。たとえば、最近話題のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)なら、どんな情報を調べて顧客のグループ分けをするのか、どんな条件を満たしたら優良顧客になるのか、グループ別にどんなサービスを提供したら成功するのか、といった具体的な解決方法を求める必要がある。これらのどの項目も、一般論として求めることはできない。依頼主の業界、業態、顧客の特徴を深く分析して、最適な解を求める能力が必須だ。このように、実際に役立つ具体的な解決方法を得られるのが、本物のコンサルタントである。CRMの内容や適用方法を知っているだけでは、コンサルタントとは呼べない。

コンサルタントの能力の5段階を知る

 現実の問題を解決する能力が重要なので、それを基準にして5つの段階に分けてみた(この分け方が絶対ではなく、説明しやすいので5つに分けたもの)。コンサルタントと呼べないレベルまで含めたので、5段階になってしまった。上に位置するほど優秀で、質の高いコンサルタントといえる。

コンサルタントの能力の5段階
・万能型:たいていの問題に、かなり優秀な解決案を提示する
・専門優秀型:自分の専門分野では、かなり優秀な解決案を提示する
・普通型:自分の専門分野で、まあまあの解決案を提示する
・啓蒙型:問題解決能力は低いが、解決方法を一般論で語れる
・ニセモノ型:専門分野の作業はできるが、視野が狭くて啓蒙すら無理

 下から順番に見ていこう。ニセモノ型は、普通の作業はできるものの、コンサルタントとしての視点は持っていない。そのため、将来を見据えた啓蒙すらできない。細かな技術だけが得意な人に多く、それを基礎にコンサルタントと名乗っている。ハッキリ言ってしまうと、コンサルタントに不向きな人材である。
 啓蒙型は、業界の最新の情報を常に調べていて、これから向かうべき動向に詳しい。コンピュータ業界なら、米国の有名な専門家の話を集めれば、一般論として解決方法の説明ができる。しかし、実際の問題解決能力が低いため、コンサルタントとしての能力は低い。本当ならコンサルタントではなく、啓蒙者と呼ぶのが適している。
 コンサルティング能力が低いからといって、啓蒙者が不要なわけではない。重要といえる新しい手法や技術が登場したとき、その重要性を広めてくれる役割を担う。その意味で、新しい手法や技術を説明してもらう目的で利用すればよい。ただし、問題を実際に解決するためのコンサルタントとしては、仕事を依頼しない方が賢明だ。
 普通型になると、コンサルタントとして最低限の問題解決能力を備えている。担当する分野に関しては、そこそこの解決方法を提示でき、実際の構築まで任せられる。凄い解決方法は期待できないものの、与えられた仕事はキチンとこなす。依頼する側としては、このレベルをクリアしたコンサルタントを選ばなければならない。
 専門優秀型だと、自分の専門分野に関しては、かなり優秀な解決案を提示できる。安心して任せられ、良い成果を期待して待つだけで済む。逆に、依頼主が変な注文を付けると、その分だけ解決方法の質が低下するので、完全に任せた方がよい。ただし、専門外の問題解決までは得意でないため、そんな分野も関係する課題なら、その部分に関してだけは、コンサルタントの作業内容を依頼主が慎重に評価すべきである。
 万能型になると、非常に高いレベルの汎用的な問題解決能力を持っている。当然ながら専門分野を持ち、その解決能力は非常に高い。それ以外の分野でも、自分が持つ解決能力を適用して、最高とは言わないまでも、かなり良い解決案を提示できる。また、自分が確信を持てない解決案なら、その不安点も正直に説明する。その後、別な専門家を見付けるとか、解決案を得るためのヒントを教えてくれる。どんな問題でも安心して尋ねたり依頼できる、最高のコンサルタントである。

5段階のどこに属するかを判断する

 依頼主から見ると、万能型のコンサルタントに依頼したいだろう。しかし、その数は“極度に”少ない。自分が今まで一緒に仕事をしたり、ウェブサイトを開いているコンサルタントを広く探してみても、たった二人しか見付かっていない。それほど数が少ないのである。見付けて依頼できる可能性は、非常に低いと思った方がよいだろう。加えて、コンサルタントとは呼べない段階の自称コンサルタントもかなり多い。だからこそ、依頼主にとっては、コンサルタントの能力を見極める評価方法が必要となる。下の段階から順番に説明しよう。
 まずは、ニセモノ型を見分ける方法だ。この段階に該当する人は、細かな技術の話しかできない。ビジネス上でのメリットやデメリット、競合と差別化するためのビジネス上での工夫など、問題解決の本来の目的に話を集中し、ビジネス的かつ全体を見通した視点があるかどうか確認する。そういった視点を強く持っているなら、ニセモノ型ではない。逆に、細かな技術に話題が移りがちだと、ニセモノ型の可能性が高い。
 啓蒙型は、最新の一般論が大好きで、業界の有名人の話をやたらと引用したがる。そんな内容を整理してみせるのが得意なので、話は分かりやすい。しかし、実際に成功させるための具体的な中身に乏しく、その辺の話は避けたがる。そこで、どんな点を工夫したら問題が解決できるのが、かなり突っ込んで質問する。具体的にどうなるのかが重要なので、具体的に掘り下げるように強く意識して質問するのが大切だ。その回答に、感心するような示唆や工夫が含まれているなら、実際の問題解決能力は持っている。逆に、すぐ一般論に話が戻るようなら、啓蒙型の可能性は高い。業界の動向を知る目的で利用する程度に、限定した方がよいだろう。
 今度は、普通型か専門優秀型かを見分けなければならない。しかし、依頼主に専門知識がないだけに、かなり難しい。それだと困るので、少しは役立つだろうと考えてみたのが、次のような方法だ。まずコンサルタントの専門分野に関して、その分野では何が大切か、どんな点を工夫すれば問題解決が成功するのか、専門家以外にも分かる形で説明してもらう。ビジネス的な観点を踏まえながら、的を射た内容であれば、専門優秀型の可能性が高い。続けて、コンサルタントとしてどんな能力が大切で、その能力を高め続けるために、どんな努力をしているのかを尋ねる。これはコンサルタントとしての考え方を調べる質問で、優秀であるほど実際の問題解決の能力を高めようとしている。さらに、ニーズ分析や問題解決のコツを、依頼主の抱える難しい課題を取り上げる形で教えてもらう。役に立つ回答が得られるほど、専門優秀型に近い。どの質問でも、回答の細部を注意深く見ることで、コンサルタントとしての問題解決能力が少しずつ見えてくる。すべての回答を総合的に見て判断するしかないだろう。
 使う機会はほとんどないと思うが、万能型を見分ける方法も紹介しておこう。万能型は、高いマネジメント技術を持っているので、その点を質問してみよう。プロジェクト管理全般、リスク管理、部下のスキルアップなどで、どんな部分が重要で、どんな工夫が可能かを尋ねる。自分が困っている問題を題材に質問するとよい。また、ニーズ分析や問題解決のコツを尋ねるのも適している。複数の話題を質問してみて、ほとんどの回答が感心するような内容であれば、万能型と判断できる。
 ただし、1つだけ重要な注意点がある。専門優秀型や万能型を見分けるためには、依頼主自身も優秀でなければならない。経営者であれば優秀な経営者、営業であれば優秀な営業という具合に、ある程度まで優秀でないと、コンサルタントの回答内容の違いを見分けられず、一般論に感心してしまう。ここで優秀というのは、単に成績が良いだけでなく、論理的な思考能力が備わっていることも含まれる。つまり、優秀なコンサルタントを見付けるためには、依頼主側も能力も高めなければならない。

専門優秀型と万能型は長く付き合う価値あり

 専門優秀型か万能型のコンサルタントと判断できたら、まずは仕事を依頼してみる。見極めが失敗している可能性もあるので、最初は小さな仕事のほうが安全だろう。その結果を見て、本当に優秀かどうかを判断する。作成した内容が良いかどうかに加え、仕事が早いかどうかも見る。優秀なほど、質の高い成果を素早く達成できるからだ。
 運良く専門優秀型か万能型のコンサルタントと出会えたら、長期的に良い関係を保つことを検討すべきだ。このクラスのコンサルタントは、専門優秀型であっても幅広い視野を持っていて、専門分野以外でも役立つ助言ができる。専門分野以外でも、ときどき助言を求めるなど、広範囲に手伝ってもらうのが賢い付き合い方だ(利用しているという意識はくれぐれも持たない方がよい)。
 コンサルタントへの仕事の依頼は、プロジェクト単位のことが多い。通常は作業した時間でチャージし、その時間を単価に乗算した金額で請求する。プロジェクトが終わった後でも気軽に手伝ってもらいたいなら、無期限の契約としておく方法が良い。助言に費やした時間を、作業明細とともに毎月請求してもらい、月単位で支払う。無制限に請求額が増えても困るので、月額の上限を事前に定めておき、それを超えそうな場合には事前に相談する形にする。こうすれば、安心して利用できるし、助言に対してキチンと報酬を支払える。こういった配慮が、優秀なコンサルタントと良い関係を維持する必須条件である。
 助言を求める対象だが、基本的には何でも構わない。ただし、どんな分野が得意なのか事前に尋ねた方がよい。一般的には、マネジメント技術などは得意分野のことが多いので、中間管理職のマネジメント技術を向上させる方法など、組織にとって重要で役立つ内容を助言してもらうのが効果的だ。多くの日本企業では、マネジメント技術をキチンと教育していないので、それが解決できれば、組織全体の能力を高めるのにかなり貢献するだろう。他には、問題解決方法の社員への教育、業務の改善なども相談の対象として適している。
 もっと幅広く、依頼主の組織を全体的に見て、何が問題なのか総合的に分析してもらう手もある。ただし、これができるのは、専門優秀型の上位と万能型に限られる。それに該当するなら、率直に相談してみるとよい。予想もしなかった貴重な示唆が得られるかも知れないからだ。
 優秀なコンサルタントは、依頼された範囲以外の助言をあまりしない。依頼主側の組織に、マネジメント技術に明らかな問題があると分かった場合でさえだ。その理由は、依頼主が優秀でない場合が意外に多いので、余計なトラブルを回避するためである。こんな現状なので、依頼主が明確に助言を求めない限り、助言してもらえないと思った方がよい。もし本気で解決したいと思っているなら、正式に依頼するとともに、本気であることを真剣に伝える努力も欠かせない。
 以上のように、優秀なコンサルタントと長期的に良い関係を維持するのは、非常に大切である。重要な点を助言し続けてもらえば、依頼主の組織が良い方向で成長するだけでなく、依頼主自身や周囲の人の能力も継続的に高められるはずだ。

(2000年12月3日)


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